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satui

 ずっと追いかけていたサボテン、ぼくのすきなサボテン、あの柔らかくて、きっと刺し殺す気なんて一切なさげなあのとげ、クレヨンで塗ったような緑、底の砂利、気まぐれに咲かせる花。乾燥した大地に生えるから虫なんて寄りついてもすぐ干からびてちりになって、みじめになってぼろ雑巾みたいにほら、さっさと死ぬだろうってずっと思っていたんだよね、

 外からじゃ大事なものなんて見えない、南口、マクドナルドパチンコ屋、それらすべてを右目の穴から取り込んでいく、ラベルを貼って分類をして、ぼくは部屋を一生片付けられないのにきみはこともなげにそれをおこなっていく、その中にぼくが残した、ゲロ、シーグラス、げんこつ、お酒、気持ち、優しい、体液精液は残っているの、きいてみたい、聞いたらどんな顔をするんだろうって気になってた、どうしようもない暗渠、こぼれる、というのは錯覚でぼくは「ふざけるな」くらいしか漏らせなかった

 棚をいくら叩いても埃しか出ない、笑えてくる、夜の闇にきみを浮かべて関係ないアーティストの曲聞いて悦に入ってるあいだ、きみは別の方向を向いていた。農業を始めてずっと平和な暮らしをしたい、病気と闘わなくてはならないけど、それでも殺したいやつを自分のこの潮に従って殺すよりいい、前科者になるよりいいの、そうなんだよ

 心がないふりをしているバケツ、いやブリキに心なんて宿らないんだけどね。いつだったかそれはきちんと暖かかった、ぼくはそこに嘔吐した、異国の鷲鼻の男が閉じかけたドアから出ていく、嫌な顔をしていたのにきみはぼくをきちんと高層ビルの十二階あたりから落としてくれた、死因はなんだろうね。


 この信号は、番組は受信するものがないから流れつかない、どこにも、でも毎日「死んでいいやつがきちんと死んで、このぼくもいつか死ぬように」ってお祈りしてるの。笑えよ。ベランダのサボテンはどっかいった、捨てたんだよ、大事に保存していたのにあの脂肪が、ぐふ、ホラー映画が見たい、あのとき死んだぼくをきちんと殺してほしかった、無限の愛なんて存在しない、連続性が途切れることを願っている、困ったことにこんなことをつぶやきながらぼくは泣いているらしかった。

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