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暗いへやで暗いうたをうたうのをやめろ

 蛍光灯が目に刺さったなかから、捉えがたくひどく曖昧なものが溢れ出す。
 念仏のような旋律に身を任せながら身体をよじるも、そこになんの意味もないことはわかっていたよ

 わかった振りをする人間がきらい、人間もきらい、約束をするのに種を巻かなきゃいけないのなんてめんどくさいきっとなにも思っていないそんなの、ぼくは窓の外、そんなときは窓の外から死んでいった人に想いを馳せる、彼らはこんなものをどうやって眺めるのだろうか、血も体も生殖器すらも持たない、カップ焼きそばの湯気みたいなもの、それに引っ張ってほしいといつも考えている

 やりたいことがヒルのように胸から湧き出してきて、また「遅かった」なんて後悔するくらいならぼくはここで線香に火をつけたい、磯と蒸された金属のかほり、山道、手を伸ばす白百合、カッターナイフの灼熱、髪が濡れるなんてどの口がいう。プールのけだるさをきみは知っているはずだ芝生にソーダアイスが綺麗、そんな場所も今は更地になってしまったということを人づてに聞いた。寒い季節の間はグラタンとかそういうことばっかり気になって忘れてしまって埃の中にそれらを隠していくのにさ、なんとなく懐かしくなってそれを掘り出してぎゅっと抱きしめ、布団をかけて指さしているそしてまた忘却していくの

 マントルからこの精密部品が遠ざかっていくほど、この世界は添加物だらけだということに嫌でも気づかされる。もう整理は始まっている。きみが暗いうたを狭いはこで歌っている間にね、溶け残りは押し寄せてきている
 ぼくだけのきみでいてほしいという感情のゆらぎ、きみにはずっと幸せで無垢でバカで馬鹿じゃないのかもしれないけどなににも気付かず画質だけの良い感動超大作(ゲーム)で生きてほしいと思ったよ

 この言葉に意味なんてない、どうせ朝になったら、朝になったらきみも何食わぬ顔で、どれだけの人間、特にぼくだけど、に深手を負わせて笑っているのも気づかぬまま生きていく都市へと繰り出していく、昨晩まできみはぼくの隣にいたはずなのに、でもきみのとなりにはお似合いの肉が愛らしい肉が仲の良い肉がぼくが嫌いな肉がそこまで心に籍を置いていない肉がいて、ぼくはそいつをみている、みつめている、脳裏にイカ釣り漁船が移り込む、そもそも暗い部屋にいたのだぼくは、まだ朝も来ていないならきみは隣にいる
 ぼくも暗い部屋でうたおう、暗いうたを、出口の見えないうたを肉をお湯に入れるうたを、
 夜すら来ていないゆめのなかで

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