1分で読める超短編小説:桜 の木の下で泣く男

桜の木の下で男が泣いていた。

美しい桜の木には、不釣り合いなほど、不細工な顔をして涙を浮かべてないている。

通常、桜は美しいものなので、笑顔になるはずなのだが、なぜ泣いているのだろう。

少しのぞいてみた。

彼はたくましい体つきをしている。

それに、企業のロゴをつけたユニフォームを着ている。

スポーツを生業とする者のようだ。

脚に包帯をしているので、怪我をしているようだ。

それにより、続けられなくなって絶望していることが伺える。

彼のような者たちは、桜のようにはかない一瞬の輝きのあとに多くのものが散ってしまう。

事情を知ると、こちらまで泣きたくなるものである。

しかし、彼は諦めるつもりはなかったようだ。

数時間、桜の木の下で過ごしたのち、おもむろに立ち上がった。

ひとしきり泣いていたときは不細工な面で下を向いていたが、今は上を向き、晴れやかな顔をしている。

「まだ散れない」

とつぶやく彼の目は、先ほどまでとは違う人間のようだ。

日本人は、美学を失ったといわれることがある。

しかし、そんなことは彼には当てはまらないように感じる。

桜のように、美しく咲き、はかなく散る、潔さと

野に咲く雑草のように泥臭く咲き続けるしぶとさ

両方、持ち合わせている彼は今後も続けていけるだろう。

彼の続きを見たいが、今日はこれまでにしておこう。



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