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ポケモンLEGENDSアルセウスで真のワイルドエリアを駆け抜ける(あごぶろぐ)

今年の1月28日にポケモンシリーズ最前線である「ポケモンLEGENDSアルセウス」が発売したが自分は何もチェックしていなかった。なぜなら最近は海外のリーカーとかが好き勝手をやったりするせいで発売前に調べようものならネタバレとかが束になって襲ってきて、一度でも視界を掠めてしまうとやるせない気持ちになるからだ。そういうインターネットのろくでもなさを自分は長いサヴァイブで完全に理解しているので一ヶ月前から情報から身をまもり、御三家がどうなるかとか……ゲームシステム……公式サイトすらも見なかった。新鮮な驚きを残すためだ。

発売前はセンサーが敏感になり、六文字以内の横文字はすべてポケモンの名前に見えてくる。オミクロンも新しい伝説のポケモンかと疑っていた期間があったほどだ。それぐらい慎重な姿勢で待ち構えているというのがわかるだろう。警戒するのはニュースサイトだけではない。
ツイッターのトレンドが頼んでもいないのにネタバレをかましてきそうだから先手を打ってトレンド地域をバングラデシュに変えておくという周到さまで見せた。そうして雌伏の時を過ごし、ようやく発売したという知らせが届いたので町までバギーを走らせ買ってきたというわけだ。

LEGENDSの舞台は遥か昔、まだヒスイ地方と呼ばれていた頃のシンオウだ。そこで伝説のポケモンであるアルセウスを巡ったストーリーが展開されるという。思えばダイヤモンド・パール発売から15年という長い月日が経過した今となっても我々はアルセウスのことをよくわかっていない。おおよその日本人はアルセウスが美輪明宏の声帯で喋ること、そして空中に浮いているとすごい重力波でメテオスマッシュを決めてくるという二つの事実しか知らないだろう。往々にしてあの時代の伝説ポケモンはゲームデータこそ用意されているもののゲーム内で捕まえる方法はなく、なんか知らない間に映画館とかポケセンとかで配布されていたので掘り下げが少ない。ポケモンの歴史を知る自分もアルセウスと言えばソウルシルバーの遺跡で電子ドラッグみたいなムービーを見せてきた後に赤ちゃんのディアルガ/パルキア/ギラティナのうち一匹をくれることくらいしか知らない。そういうヴェールに包まれたポケモンのルーツに迫るのに遥か過去なりしヒスイ地方はうってつけの舞台だ。

LEGENDSの話を本格的にする前にまず言っておくことがあるが、自分が撮ってきたスクリーンショットに映っているポケモンとか、場所とか、システムが世界のだれかのネタバレなる……そういう配慮をするのが完全に面倒くさく、配慮をする記事としない記事に分けるかとか小さなことにこだわっているとせっかくヒスイ地方で呼び覚まされた野生が長い眠りについてしまい、記事もしょぼくれた感じになると思うので最初からネタバレありで綴っていく。クリア済みで内なる野生を呼び起こされた者か、ネタバレ耐性を生まれつき備えているやつだけついてこい。もちろんLEGENDSは完全なソロゲーであり買ったやつのためだけの北海道一人旅なので焦ってクリアする必要は全くない。時代とかツイッタートレンドのスピードに惑わされるな。

ここからめちゃくちゃに矢印を配置するので、そのウェーブが終わったらネタバレ解禁だ。


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・ポケモン……どういうゲームなのか

「ポケモンとかそんな昔のコンテンツはしらないんですけども?」そういうポケモンといま流行りのヨーカイザーの区別がついてないやつもいるだろうから軽く触れておくが、ポケモンはコンピューターゲームであり、コマンドRPGだ。しかし実際にポケモンがジャンル的にRPGだと言うとやっているやつは一様に首をひねり釈然としない顔をする。ポケモンは……ゲームジャンルで分類するとしてもポケモンとしか言えない、ふしぎなコンテンツだ。世界的ビッグコンテンツであるかどうかは関係ない。実際に自分はGBが下火だと言われ始めていた頃のピカチュウVerからやっているが、あの頃からポケモンはポケモンだった。

ゲームを始めるとプレイヤーは地方のへき地から冒険を始める。小さな村の外に出たことのない砂利ガキが、ポケモンというふしぎな生き物が人間と共存したりたまに争っている世界へと足を踏み出していく。当初はすべてのポケモンを見つけるというポケモン図鑑完成のために旅に出ることになるが、もはやこれは舞台装置でしかなく実際はどうでもいい。シリーズを経るごとに博士から図鑑への反応は淡泊になっているように感じる。そろそろ博士に図鑑完成したと話しても「ポケモン……ずかん……?」と首を傾げられてもおかしくない段階まできているように最近は感じている。そんな細かい目的なんぞはどうでもよく、とにかくプレイヤーがポケモンと共に旅に出て様々なことを体験していくゲームだ。ポケモンを捕まえ、育て、戦わせ、たまに悪の組織と戦う。地方に伝わる歴史の謎を追い、その影にひそむ伝説のポケモンを求める。そのすべてにワクワクし血沸き肉躍るエッセンスが詰まっている。

では常に同じ世界観、同じ始まり、同じ展開だから王道で面白いということなのか? その理解ではまだ浅い。ポケモンコロシアムを知っているか? コロシアムはポケモンスタジアムを踏襲した対戦用のゲームだったがシナリモードがあり、そっちはかなり強烈だった。ムービーが始まるとマッドマックスの基地みたいな場所から唐突に始まり、バイザーを着けた悪そうな褐色の男が主人公だ。こいつは悪の組織の一員だったが嫌気が差したのか重要なアイテムを盗み出し、基地を爆破し、追われる身となっていく。ホバー・バギーに乗り込んで爆発する敵の基地をバックに荒野を駆け抜けていくこの爽快なムービーは歴代ポケモンOPの中でも屈指の完成度だ。ロマンと冒険のすべてが詰まっている。相棒がブラッキーとエーフィなのも洒落ていて恰好がいい。

コロシアムはこの通り西部劇っぽかったりスチパンっぽかったりと従来のポケモンの牧歌的な雰囲気からはかけ離れ、薄暗い地下都市とかも出てきて独特の空気感を放っていた。システム面も斬新だ。シナリオが展開されるオーレ地方ではダブルバトル以外やってないし、野生のポケモンも生息していない。つまりすべてがトレーナーとのダブルバトルで、だからこそエーフィとブラッキーが相棒なのだ。ぜんぜんコロシアムのことを知らないやつが見ると「これは……ポケモンなの……?」と不安が隠せなくなり、膝がガクガクと震えだし、尻もちを付くこと間違いないだろう。だが実際当時遊んだ自分からするとこれは間違いなくポケモンであり、ポケモンの面白さをふんだんに活かした作品だった。ポケモンは常に同じことをするから面白いのではない。ポケモンが内包している普遍的な面白さが世代を超えて老若男女を問わず魅了するのだ。


LEGENDSに関してもおおよそ同じことが言える。今回は完全なコマンドRPGではなくアクション要素が追加され、プレイヤーは広大なフィールドに身を投じていくことになるが、ポケモンが存在し……共に生き……大筋を外れない限りは最高のゲームであることが約束されている。自分はすでにクリアしているがこうしてPVを見るといまも身が引き締まる思いだ。

自分はポケモンという歴史とともに育った。とうぜん色々な出来事があったし、その全てを楽しんできたわけではない。USUMではさほど違わないアローラと変てこなストーリーにガッカリきたし、ダイパリメイクははっきり言ってこしぬけの出来だった。それらのタイトルを楽しんだやつもいるだろうが、自分はそういう忖度とかけ離れた次元で戦っているから気を払うことはなにもない。歴史の生き証人というのは無能なイエスマンとイコールではなく、コンテンツのあらゆる艱難辛苦を共に過ごしたということでもある。その自分が身震いするほどの最高の舞台がLEGENDSでは広がっている。25周年をむかえ、今ポケモンは芳醇の時を迎えようとしているのだ。

・いま思い返すとワイルドエリアはそんなにワイルドじゃなかった

実はポケモンはいきなりLEGENDSになったわけではなく、ヒトカゲがリザードンにワープ進化することがないように進化の兆しはこれまで散りばめられてきた。それが何年か前に発売されたソード・シールド……剣盾だ。剣盾の舞台であるガラル地方は剣のような細長い大陸となっており、その中央をまたがるように「ワイルドエリア」というフィールドが広がっていた。他のフィールドでは普段どおりのポケモンシリーズが展開されることになるが、一度でもこのワイルドエリアに足を踏み入れるとグチャグチャの天候と、膨大な種類のポケモンが出迎えてくる。さらにカメラ操作で……プレイヤーの視界をぐるぐると回しフィールドを見渡すことができる。これはふだんポケモンをやってないやつからするとできなかったの? となる部分だが、そうだ。できなかった。ワイルドエリアはそういう革命的なマップとしてガラルに足を踏み入れたトレーナーたちに新たな驚きを与えたという寸法だ。

我々がふだん通っている「何番道路」みたいなのはしょせん街道なので危険が少ない。ハイキング気分でいけるし、ポケモントレーナーたちが棒立ちでプレイヤーを待っていても問題ないくらいのぬるま湯ということだ。しかしワイルドエリアはそういうわけにはいかない。草むらに近づけばシンボルエンカウントのポケモンたちが跋扈し、天候が砂嵐とか霧だとまったく前が見えない。何歩か進むとジグッザグマに衝突して戦闘が始まる……そういう恐ろしい場所としてプレイヤーの前に立ちはだかった。自分も初めて足を踏み入れた時は生唾を飲み込み、デカいイワークの判定とかがまったくわからずにぶつかって戦慄したものだ。明らかにイワークが存在していない虚空もイワークという判定だった。だが、今思うとワイルドエリアに対して脅威を感じたのは最初のときだけだった。

ワイルドエリアにはレベルの高いポケモンがたまに存在し、こちら側のレベルが低いとボールを投げることすらできない。それ自体は脅威だったが、ボールを投げられないのでは戦闘をする必要もなく……用事がなければ避けるだけなので存在感がない。やがて捕まえられるようになる頃には旅のメンバーもタウリンやステロイドでバキバキになり、前はゲットという交渉の場にすら立てなかった相手でもたやすくひねることができる。そうなると図鑑埋めという作業の一部になり果ててしまい、それが終わるとさらに空気になる。やがて橋を渡った向こうで立ちふさがってくるカビゴンも地面から生えてくるデカいオブジェクトという認識になり、邪魔だなあと思いながらスティックを左に倒して避けていくだけになる。

こちらが相手に関与しない以上は相手もこちらに関与することがなく、あれだけ膨大にいるポケモンたちもスクランブル交差点ですれちがう赤の他人のようにどうでもよく……やがてプレイヤーは当初抱いていた自然への畏敬の念とかを忘れ、一つのだだっ広いフィールドとしてワイルドエリアを認識するだけになる。さらにインターネットをつなぐと無表情のロードバイクマンがどこからともなく現れ始め、消費期限のあやしいカレーの具材をどんどん渡してくる謎の場所になる始末だ。ミニマップがあほで現在地がわからなかったり、ファストトラベルがついてなかったりと余計なところばかりがワイルドで本来求めていた野生からは遥か彼方に遠ざかってしまった形だ。自分はそれでもファーストインプレッション時の輝きとか、遠くでなんかのオブジェクトがバグって膨張してると思ったらホエルオーだったときの衝撃のおかげでワイルドエリアを成功だと思っていた。

・ついにポケモンたちが牙を剥く

ゲーフリはワイルドエリアという実験を経てどういうものを繰り出してくるのか? 自分は期待と不安がないまぜになった状態でLEGENDSを迎えたが、ゲームが始まってすぐに奥行きのあるフィールドとありのままに生きているポケモンたちの姿を見て、真のゲーム特有のシナプスがはじけるような期待感で胸がいっぱいになった。なるべく高いところに登り、駆け回り、勢い余って高所から足を踏み外し落ちたりもした。ポケモンシリーズでは小さな段差をピョンと飛び越えられるが、今回はそういうレベルではない。ザゴ……という音とともにプレイヤーはダメージを受け、画面の枠に墨を塗りたくったようなダメージ表現が表れた。これは間違いなく骨折している。これまでのポケモンにはなかった新しさだ。半分くらいくたばりかけながらワクワクしている自分におどろきムックルが逃げていった。だがそれはしょせんチュートリアル時点の平和なりし出来事。本題はここからだ。

ヒスイ地方は遥か昔、まだ人とポケモンが共存できていなかった時代を舞台としている。つまりポケモンは完全なる野生の獣であり、LEGENDSを始めたトレーナーたちは次第にその脅威を目の当たりすることになる。思えば我々はこれまでポケモンに危害を与えられることはなく、常にその頼もしい強さを冒険に役立ててきた。そもそもポケモンの戦闘力というものがあいまいであり、ワタルが人間にはかいこうせんをぶつけたりしているのを見てだいたいのやつの感覚はマヒしてしまった。そういうことが長年続いてきた結果としてポケモンはかわいいペットみたいな位置づけになり、ナメられる存在となっていた。

心当たりはあるだろう。リボンを頭につけてメロメロ☆ムンナを躍らせたり、猫じゃらしで遊んだり……そういうあれこれが我々の警戒を解き、ポケモンをよき隣人と思わせていた。図鑑に書いてあるとおりならばキテルグマはトレーナーをサバ折りにして何人も殺してきた危険な生き物だが、実際にプレイヤーがサバ折りされて死ぬことはない。であれば所詮それはあくまで生態を語るだけのフレーバーテキストのまま図鑑に綴じられているだけだ。しかし、それも今日まで……LEGENDSではその脅威がリアルとなって襲い掛かってくる。

ラベん博士がPVで「ポケモンは怖い生き物なのです」と迫真の表情で語っていたとき、スマホの向こうでだいたいのやつが鼻をほじりながら聞いていたのは間違いない。あるいは相棒のポケモンにカレーやポロックを食わせていた。だからラベン博士の言葉を大げさだと一笑に付していたわけだ。だが実際に広がるヒスイの大地ではポケモンがどう猛に襲い掛かってきて、草むらで屈んで息をひそめていない限りはすぐに見つけて延々と追ってきたり、ホーミング性能のある弾とか火炎放射を吹きつけてきてとんでもない。これまではポケモンVSポケモンという構図がつねに展開され、ポケモンと人が戦ってるのはポケスペだけだった。LEGENDSでは未開拓の北海道でポケモンのむき出しの野生と対面させられる。乳飲み子は泣き叫び、震える手でボールを取り落として母親の胎内に還りたくなるだろう。

ワイルドエリアがさほどワイルドじゃなかった理由は解像度が低かったからだ。これはグラフィックの話じゃない。ワイルドエリアにもシンボルエンカウントでポケモンは存在し、こちらににじり寄ってきた。だがぶつかったらポケモンバトルに発展するだけで何一つ問題がないので脅威にはならなかっただけだ。LEGENDSではちがう。ポケモンはただのシンボルではなく実際にそこに息づいており、縄張りを荒らす不届き者を力で排除しようと行動する。フィールドに生きるポケモンという部分の解像度が上がったことで、脅威が目に見える形になったわけだ。これまでの「めのまえがまっくらになった」とはわけが違う。シンプルな暴力で意識を刈り取られるという死の気配、そして持ち物を落としてしまうというシステム面でのマイナスが混ざり合い、プレイヤーに本物の恐怖を抱かせるのだ。

ワイルドエリアはしょせん県営のキャンプ場だった。そこでテントを設置してのんきにカレーを食っているのはしょせん金を出してサービスを受けて自然を知った気になる、甘っちょろい文明人の遊びだ。ヒスイ地方で同じことをしようものならテントはリングマに引き裂かれ、怒り狂ったマスキッパが両目を赤く光らせ乱入してきてカレーセットはぐちゃぐちゃになる。猫じゃらしもボールも効かない。猫じゃらしもボールもぐちゃぐちゃになる。楽しいキャンプ気分だったやつは失禁を免れないだろう。そういう世界が辺り一面に広がっているという事実を魂レベルで理解し、自分は震えた。しかしこれこそがポケモンが25年間描写してこなかった真実の一側面でもある。そういうことに気づいたプレイヤーたちは命からがら逃げ、下着を洗った後に真の戦士の面構えになり、気持ちを新たにヒスイ地方へと向き合うことになるのだ。

・プレイヤーの野生が呼び起こされた結果どうなるのか?

シマボシが最初に言ったように時空の向こうからやってきた怪しい存在であるプレイヤーはコトブキムラの役に立つ以外で生きる術はない。外に出たら社会保障制度の適用外になってのたれ死ぬ運命が待ち受けている。つまり否が応でもポケモンという野生に立ち向かっていかねばならない。「テントを張ってカレー作ってたいよ・・・」そんな泣き言はどのポケモンにも聞き入れられくれない。それどころかポケモンたちは徒党を組んでプレイヤーを囲んでくる。ガラルで得たスポーツマンシップはクソの役にも立たず、原生生物に包囲され叩かれたり毒ガスを浴びるうちにやがてプレイヤーの内で眠っていた野生が目を覚まし始める。原始的な怒りのエネルギーだ。死にたくない。こいつらをぶちのめし、ヒスイという土地を切り拓いていく……そういうやるべきことを肉体が理解した後は、プレイヤーの猛反撃が始まる。暴力には暴力を返し、やつら全員をわからせる時が来たのだ。

今作では戦えるポケモンがいなくなっても目の前が真っ暗にならない。何故なら七人目、最後の侍であるプレイヤー自身がいるからだ。監督でありながら代打……その事実をあらわすようにプレイヤーは様々なアイテムを駆使してポケモンと対等以上にやり合うことができる。茂みに潜んでやつらが油断するのを待ち、時にはおびき寄せ、己の有利な状況で戦うことができる。ゲームバランス的にもプレイヤー自身が身一つでポケモンを捕獲していくという立ち回りはかなり強力になっている。

自分はこの塩梅にすなおに感心した。実際にポケモンにポケモンをぶつけて戦わせると思ったよりも手ひどいダメージを受けたり、プレイヤーが直接捕まえるよりも逆に手こずったりするからだ。図鑑のタスクの仕様もありポケモンバトルばかりで解決していると逆に効率が悪い。自分はこれらのデータから本能を解放してお前自身が戦え、というゲーフリの命の叫びを感じ取った。

何より後ろで指示を出しているだけのソシャゲの司令官みたいな立ち位置を捨てポケモンと肩を並べて対等以上に戦えるというのは気分がいい。思えばプレイヤー自身が攻撃的なスタンスでポケモンにぶつかるという機会はこれまでなかった。あったとしてもあまり一方的だと弱いものイジメみたいになってしまい胸くそが悪くなってしまう。LEGENDSに関しては相手が完全にこちらを殺す気で来ているのでどのような手段を以て捕まえても、後ろからボールを当てまくっても気分が悪くなることはない。そういう右にも左にも落ちないバランスが大自然の中で生み出されているのだ。ポケモンと人が共存していない過去の大地だからこそ、ポケモン愛護団体が見当違いなけちをつける余地のないリアルの空気が流れている。


・ポケモンの完成形にグッと近づいた

さんざんプレイヤーVSポケモンの戦いについて触れたがポケモンVSポケモンのバトルも当然良い。バトルが始まった後にプレイヤーは棒立ちではなく動くことができる。別に動いて得をする仕様は何一つないが、バトルの臨場感を肌でバチバチ感じることができる。自分は意味なく戦っているポケモンたちが威嚇しあい、間合いを取ったりする中で後ろに回り込んだりしたくなる。フィールド上でぶつかればどこでもバトルの舞台になるのもいい。剣盾のトレーナー戦でなんか謎の白い背景になるのにはウンザリした。そういう足を引っ張って現実に引き戻してくるマイナスがなく、完ぺきな没入感がバトルを支えている。オヤブンポケモンのめちゃくちゃデカいやつに攻撃したことはあるか? デカすぎてHPバーが画面内に見えないとき、自分はどこにあるのかとキョロキョリしながら上のほうに視点を向けた。HPバーはそこにあった。そういう些細な感動がゲームプレイの輝かしい思い出になっていく。

従来のポケモンシリーズでは成し得なかった境地に踏み込んでいる反面、アクション要素などが追加されたことで手に馴染まないトレーナーたちも大勢いることだろう。広いフィールドを探索することが苦手だったり、既存タイトルに比べてバトルシステムがざっくりと改変されているところも気になるやつは気になるはずだ。今回ゲーフリはLEGENDSで挑戦的なことをやってのけた。だが次からはどうなる? また完全コマンドRPGに戻るのか? それとも今回のアルセウスをブラッシュUPしていき、いずれゼルダBoWみたいなオープンワールドとかに変化していくのか? 今はなにもわからない。一つ言えるのはとりあえずDLCを出してほしいということだ。いま自分の胸を満たしているのはLEGENDSで目覚めた闘争本能と、一つのコンテンツを自らの手で終わらせにいく過程に生じるあの寂寥感だ。そうは言いつつもこの手で図鑑を完成させるが、本音を言えばもっと未知なるものを見ていたい。

思えばポケモンは25年という長い年月の中で初代から大きく変化することなくこれまでの歴史を紡いできた。そこに自分は不満を抱いていなかったと言えばウソになる。コマンドRPGとして考えればBW・BW2あたりでポケモンは完成している。だが、あくまで完成というのはあの時代にあのシステムでの話だ。ポケモンというコンテンツが大蛇のごとくうねりながら今の時代でも成長を続けていく以上、今の時代のゲームとしてアップデートしていく必要がある。剣盾はたしかに良いゲームだったが、これまでのポケモンの域をはみ出ることはなかった。ワイルドエリアは思ってたやつじゃなかったし、マックスレイドはソシャゲの悪いところを煮詰めたみたいな出来だった。Y・Y通信に至っては何年も前のポケモンよりさらに悪化していて意味がわからない。それらを踏まえるとポケモンの完成形にはまだあと130年くらいはかかる……そういう計算が自分の中では出ていた。

ある日自分は草むらに隠れ、荒ぶるサイドンが落ち着くまでホットワインを飲みながら待っていた。すると空が白み始める頃になってようやくやつは腰を下ろした。自分はそれをたしかめると紙コップを置き、息をのみながらヘびーボールを取り出した。その時にLEGENDSが自分の考えるポケモンの完成形にいちばん近いと……認識した。汗ばむ手が、ボールの重みが全身にそう伝えていた。

もちろんLEGENDSにも問題はある。まずクラフト機能があって膨大な種類のアイテムがあるのにも関わらずポーチの拡張が渋い。金がなくて拡張を断っているのにシュウゾウは嫌味を言ってくるからぶんなぐりたくなる。広いフィールドはポケモンがいるだけで魅力的だが、逆に言えばBoWなどに比べると探索の魅力が薄い。散らばったジガルデの細胞だのディグダだのを探せみたいなのが自分は嫌いだ。その他にもいろいろと言いたいことは山ほどある。だが、剣盾のワイルドエリアから急速に進化し、ゲーフリがやりたかったことが見えてきた。見えてきたし、ちゃんと形になっている。

上述したようにポケモンという生物の解像度が上がり、プレイヤーとポケモンの距離がぐっと近づいた。そこがこのゲームでもっとも重要だ。ポケモンが脅威となり立ちふさがるということは、ポケモンを退けて、制御したときの喜びも大きくなる。そしてこれまでポケモンバトルというフィルターを通して行われたことがプレイヤーの目に見える形となり、プレイヤー自身が強く関与することが可能となった。

するとどうなるか? ポケモンをより近い目線で観察することによりその生態に説得力が生まれ、ポケモンという存在をよりリアルに感じられる。この変化こそがポケモンを完成形に押し上げるための最後のピースだった……自分はそういうことをサイドンのケツを見ながら思った。ちなみにサイドンはかんぜんに背中を向けて油断していたがヘビーボールの落ち方をまったく計算にいれずに投げたので最後は殴り合いになった。

今日のところは記事を終わりにし、ヘビーボールを投げるために筋トレへと移行する。クールダウンしたら、次はウォー^グルに乗って果てしなく広がる真のワイルドエリアの風を感じに行くだろう。時空の裂け目から自分は元の世界に還れるのか? それはわからない。そもそも裂け目からポリゴンとかが出てきて生態系がむちゃくちゃになるのは間違いないので未来に還ってたらすでに滅びている可能性もある。

自分は現状まだアルセウスに会っていないしアポイントメントもとっていない。やつが何を目的にしているのか、直接会って聞いてみるしかないだろう。冷静に考えるといくら美輪明宏の声帯で喋ろうともアルセウスがろくでもないやつなのはこれまでの歴史と行動が証明している。つまりこのLEGENDSで最後の獣性を解き放って殴り合う相手はアルセウスのやつに決定しているということだ。そうなればもう言葉はいらない……あとは目覚めた野生を拳に乗せて確かめてくることにしよう。

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ドーモ! ドネートは常時受け付けています。 ドネートはときにおやつやお茶代に使われます。