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「でーと」

オシャレなカフェで一息。そんな一幕。今の時代おしゃれなカフェでの一息は携帯、「スマートフォン」を触る時間。スマートフォン=休憩というようなものだ。
午前中のデートを終え、午後に差し掛かる前に一度休憩を挟む。セルフサービスを振り翳したオシャレという名のカフェへ。
いつからオシャレというのはセルフに名前が変わったのだろう。オシャレが会見しているところを見たことがない。

オシャレという紙が顔に貼ってある人がスーツを着て壇上にいる。たかれるフラッシュ。ぱしゃぱしゃ。

「この度、わたくしオシャレはセルフに改名したしました」

一斉にまたぱしゃぱしゃ。これが水の効果音だったらびしょ濡れだ。

「なぜ、セルフにしたんですか?」
「わかりません」
「わからないのにセルフにしたんですか?」
「はい」
「それはなぜ?」
「時代の流れですかね」

時の流れに身をまかせたようだ。そんな歌あったなぁ。そんなことより今、目の前の彼女がフルーツティーを飲みながらスマートフォンをいじっている。このフルーツティーを取ったら彼女は気づくだろうか。そら気づくか。今飲んでるんだもんな。でも、試してみた。
そろりそろりと彼女が飲むフルーツティーを彼女から遠ざける。ストローがフルーツティーから離れる。彼女は、空気を吸い続けていた。スマートフォンを見ながら。彼女の景色は常にスマートフォンらしい。

そんなバカな。

そんなバカなな光景が広がっていた。まだ、彼女は空気を飲んでいる。嘘だろ。
ゆっくりと戻してみた。ストローがフルーツティーにささる。ジューと音がした。

あ、時が止まっていたのか。

いや、それはない。まさかこんな実験でカジュアルな物理が体験できるとは思ってもいなかった。

「あ、ごめんね。なんだった?」

と彼女からの言葉。え、喋ってない。

「あ、大丈夫」
「あ、そう」とまたスマートフォンにめをうつす。
あーこわい。そろそろ怖いかもしれない。

「そろそろ行こうか」と声をかけ、店を出た。スマートフォンって怖い。

「あのさ」と彼女が言う。

「何?」
「もうスマートフォン買ったら」
「なんで?嫌だよ」
「え、公衆電話引きずっている人の方が嫌だよ」


そう、私は公衆電話引きずり系男子だったのだ。まぁこっちの方が嫌だわな。

「でもおしゃれだと思っているもん」

【おしゃれ】このワードって何でも良くしてくれる気がする。言葉のマヨネーズみたいなもんだね。

おしゃれなカフェの前で公衆電話引きずり系男子のカップルは休憩後のデートの続きへ向かった。これが今風のデートだ。

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