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死ぬなら熊に食べられたい


2018年の冬。アフリカへの渡航資金を調達するために、年末年始は実家に帰らず長野のスキー場の旅館でバイトをしていた。


クリスマスの日、私は東京から来た男の子と同じ入職日だった。ロードバイクで日本一周をしたという話を聞き、私はすぐに親しくなれると確信した。


ご飯の時間もNBAの話や、アフリカに行くという話、将来の夢までも語った。

とにかく気が利いて、知識の量も豊富で、人の話を聞くのも上手で素敵な人だったのを覚えている。


そんな彼が、ある日、「きっとあなたならこの本を気に入る。あなたの話を聞いていてそう思った」と手渡したのが星野道夫著の”長い旅の途上”という本だった。



私はそれをアフリカに持って行くことにした。

決して穏やかではないアラスカの自然、でもその中に美しさを見出せるような、野性的で、詩的でかつロマンチックな、冒険心を掻き立てるような本だった。


その時から、旅に出かけるときは必ずその本と一緒に出掛けるようにした。

知らない場所で、まだ行ったこともないアラスカの大自然を、本に書かれてある物語を端から端まで余すことなく想像するのが好きだった。


ある時にはアラスカの自然の美しさに涙することもあったほどだ。



それをきっかけに、星野道夫という人間に惹かれ彼の本をいくつか手に入れた。(星野道夫のプロフィールリンクはこちら

著者は、主にアラスカ(極北)で活動した写真家であり詩人だ。


テレビ番組にもいくつか出演し、たくさんの写真集や本も出版している。


しかし、1996年、テレビ番組取材同行中にロシア・カムチャツカ半島クリル湖にてヒグマに食べられ急逝。


それを始めて知った時、残酷な、、、と思った反面「なんて幸せな最期だったのだろうか」と思った。


あれだけ、アラスカを自然を愛した彼にとって、それは望んでいた形だったのではないか。


そして私も、

死ぬなら熊に食べられたい

(熊じゃなくとも他の動物や自然によって、、)

と思うようになったのだ。




春になると、人間が望むように薄いピンクの桜が一面に咲き誇る。

しかし、その公園に咲く桜は人の手によって植えられたものだ。


人間は、人間の望む穏やかで美しい自然を感じるために、週末はキャンプや登山に出掛ける。


しかし、自然が私たちに見せているのはほんの一部の穏やかな姿だという事を星野道夫は教えてくれた。


それでも尚、私は自然を愛している。

二つの顔を持つ自然を。


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