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映画館は安全です

満月の夜

必要な買い出しに行こうと歩いていたら満月が低い位置にあった。
低い位置にある満月は色温度が高くて黄味がかっていた。
生々しくてドキドキした。
次の満月の頃にはもう都内上映が終わっているのか。
とても信じられない。

今、確認したらケイズシネマの4月のスケジュールが出ていた。
時間などはまだだけれど当初の言われた通り延長は難しいだろう。
77分という尺ならもしかしてとも思いたいけれど。
たった一週間だと必ず見逃してしまう方がいる。
用事が入ったり席が埋まって来れなくなる方がいる。
この一週間、大成功に収めないと次はない。
少しでも興味を持ってくださった全ての皆様に観ていただくにはそれしかない。
わかってはいるけれど身震いする。

マスク解禁の日

間もなくマスク解禁の日がやってくる。
シネコンでもマスク着用案内が流れなくなるらしい。
まだ花粉の季節だし、あっという間にマスクがなくなるわけじゃないだろう。
それでもそういう日が来るなんて中々想像も出来ない日々だった。

演劇やライブハウスではクラスターが起きたけれど映画館では結局、クラスターは起きなかった。
決められた換気のルールがあり、基本的に上映中は話すことがなく、同じ方向をみている映画館はある時点からむしろ安全だと言われるようになった。
それでも高齢の方や既往症がある方などは敬遠していたわけだけれど。
コロナ禍の数少ない娯楽の中で比較的安全と言われ、座席も一つ置きだったことも、動員記録を創った一因なのかもしれない。
外出の制限がある中で映画館に救いを求めた人もいたのかな。
マスク解禁後に上映なのだなぁ。

Mr.やぶれかぶれを知っている方はわかると思うけれど。
コロナ禍という状況の中での興行についてずっと悩んできた。
マスク解禁後に自分の映画が公開されるということがなんとも感慨深い。
フェイスマスクをして舞台の受付をやった日々。
その終息直後に公開されるだなんて。
願わくば足が遠のいた皆様が映画館に戻ってくれるといいのだけれど。

スマッシュヒット

シネコンや都内のミニシアターは回復傾向にあるはずだ。
まぁ、実はシネコンや都内も厳しいのかもしれないけれど。
それでも都内を少し離れると更に影響は大きい。
今、何が求められているのかと言えばヒット作だ。
シネコンで上映されるような商業映画のヒット作ではなくて。
ミニシアターで上映されて、全国規模で話題になる映画。
もちろんいくつかはそういう映画があるはずだけれど。
コロナ前まで戻せた作品はまだないのではないだろうか。
結局、映画は作品なのだと思う。

ミニシアターでそういう話題の作品はかなり少ないはずだ。
ほとんどのミニシアターファンが観ている作品まではあるだろう。
でもその一歩先。
ミニシアターに限らず、新しい何かに敏感な層。
そういうところまで届くのは簡単なことじゃない。
商業映画のようなお金をかけた大規模なプロモーションというのとは違うのだから。

小さい映画

たった一週間しか上映が決まっていない映画のくせに。
僕はそのスマッシュヒットにならないかなぁと考えている。
と言っても僕だけの力で計画的に出来るものでもない。
色々な偶然が必要だし、何よりも作品で心が動いた人がどれだけいるかにかかっているわけだ。
延長も出来ないからこの一週間でしか結果も出せないのに。
そんな映画なのに、やっぱりスマッシュヒットになれたらと考えている。

それこそ全国のミニシアターに呼ばれて地方の映画館が満員になった!みたいなことが起きたら。
そしたら、僕のこの数年の物語的には完璧なのだけれどな。
すべてが伏線になって、すごい結末を迎えるんだけどな。
見せかけのスマッシュヒットや上映館増加じゃなくてね。

そしたら僕はどこかの地方の映画館に突然行って言うのだ。
「映画館は安全です」って。
換気されてます。
基本的にみんな話しません。
同じ方向を見ています。
天井が高いから空気が多いです。
もちろん爆弾も落ちてきません。

みんな来てくれるかな

そんなことを思い出しながら。
心の中ではいつも小さく言っている。
「ああ、みんな来てくれるかなー。」って。
いや、もう心の中だけじゃなくて。
先週だったか、ぼそっと電車の中で声に出して言ってた。
もう無意識に出ちゃっているのはやばいなぁって思った。

あの人やこの人の顔が思い浮かぶ。
お客様や昔の仲間たち。
劇団解散で寂しい思いをさせてしまった人たち。
映画館で出会った人たち。
叱咤してくれた人たち。
みんな来てくれるかなぁ。

大変な3年間を僕たちは共有したけれど。
みんなに教えてあげるんだ。
映画館は安全です。
とってもとっても安全です。
そして心が動く場所です。

だからどうかどうか。
会いに来てください。
出来れば笑顔で再会したいです。

やれやれだ。スマッシュヒットを夢見ながら。
やっぱり不安も抱えちゃってさ。

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