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名古屋シネマテーク7月28日閉館

名古屋シネマテークさんが7月28日で閉館するというニュースが流れた。
今現在、映画『演者』が最後にスクリーンにかかった上映館だ。
ああ、という溜息と言葉に出来ないような寂しさが体に溢れた。

自主配給をしていくにあたって。
まずは恩返ししなくてはいけない映画館さんに自分で連絡をした。
今年入ってすぐの頃か、それとも去年末だったか。
電話口で僕は春までに閉館するかもしれないという言葉を耳にした。
それほど厳しい状況だということを僕は聞いた。
その時もうまく言葉にならなかった。
そしてどうしても名古屋シネマテークでの上映をしたいと伝えた。

僕よりもずっとずっと名古屋シネマテークという映画館を愛している人はたくさんいるだろう。僕なんか2本、自分の関係した映画を上映していただいただけで、舞台挨拶で伺ったのだって3回の上映だけだ。
何本も自分の作品を上映した映画監督さんや、何度も舞台挨拶をされた方、いくつもの作品でお世話になった配給の方、そして何よりも、何作品も通い詰めて映画を鑑賞されたお客様。そういう皆様とは比較にならないような関係性だと思う。
それでも少しだけでも力になれたらと思っていた。

舞台挨拶ではその想いが止まらなかった。
映画『演者』のパンフレットなんか買わないでいいから、映画館のグッズを買ってくださいなんて半ば冗談で言った。
名古屋シネマテークのオフィシャルTシャツの最後の1枚は映画『演者』のお客様が買ってくださったんだぜ。こればっかりは一生の自慢だよ。

その舞台挨拶の前。
スクリーンに映画『演者』が投影されているまさにその時。
僕は支配人の永吉さんと、日の当たるロビーで長く長く話をした。
状況が厳しいこと、コロナ前と後の変化についても話した。
もちろん作品についても、名古屋の美味しいものについても。
いつまでも話をし続けられるんじゃないかっていう程、長く話した。
前支配人の亡くなった平野さんの話もした。
懐かしそうに嬉しそうに永吉さんは話していた。

名古屋にはいくつかのミニシアターがあって。
その平野さんはインタビューで、棲み分けがあって名古屋シネマテークらしさがあるという話をされているのがネットに残っていて。
僕はその記事を読んだ日から、名古屋シネマテークで上映出来る作品っていうのは、すっげぇかっこいいことなんだぜってずっと思ってた。
何か一つ、これっていうものがないと上映させてもらえないんだぜってずっと思ってた。
だからせめて、そんな魂を名古屋のミニシアターさんが引き継いでくれたらなぁって思う。
そして、僕はここで上映出来たことを今も誇りに思っている。

映画館の隣には図書館が併設されている。
中にはいると膨大な映画の本が収納されている。
息をのむような空間がそこにある。
そこに足を踏み入れた時、ああ、ここがスタートなのかと僕は感じた。
映画が好きで、上映会を始めて、ついに映画館になった。
あの図書館はその入り口なんだと僕は感じた。

映画『演者』の上映がどれほどお力になれたのかわからない。
朝10時という時間帯にしてはお客様が入ったなんて言ってくださったけれど、それも優しさから出た言葉だったのかもしれない。
いずれにせよ、大きな力ではなかったはずだ。
今はただ最終日まで一人でも多くのお客様があの素敵な映画館を体感してくださることを祈るしか出来ない。
あの階段も、あの廊下も、あの受付も、あのロビーも、映写室も客席も、そしてあのスクリーンも。
すべてに心がこもっていることを誰だって感じるはずだ。

ああ、でも本音を言えばね。
名古屋が行政の力で守ってもいいじゃんって思うよ。
これはほんとうに。
きらびやかな県民ホールや市民ホールやジブリパークよりもさ。
たくさんの名画や個性的な海外作品、ドキュメンタリー、自主映画なんかの映画作品が上映される街っていうのも魅力的だと思うんだけどな。
シネコンの最大級だったTOHOシネマズ名古屋ベイシティとか、ミニシアターの名演小劇場とか閉館が続いちゃっているじゃない。
でも名古屋ってやっぱり映画にとっては昔からとても重要な土地だと僕は思う。
行政が支援して、それこそ国際映画祭なんかも企画して映画の街だって言えば、ジブリパークだって同時に盛り上がるじゃない。アニメ映画祭だっていいと思うんだよなぁ。アニメ大国の日本にアニメの国際映画祭がないのって不思議だしさぁ。海外からのインバウンド需要だってすごい増えると思うよ。
大村さんも河村さんも、あの図書館に一度行ってみればいいのになぁ。
僕が名古屋に住む人だったら行政に提案するのに。

ライブでも演劇でも映画でも。
観たいと思った時に行かないと終わっていて観れないなんて言うけど。
作品じゃなくて映画館だからね。
僕はまだ行ったことがない素敵な映画館が名古屋にもあるし、日本中にある。
そういえば、あそこに映画館があったなぁとかさ。
そしたら、ぜひ一度足を運んでみて欲しいなぁ。

今池にある。
小さな小さな映画館。
映画を好きな人が集まってできた映画館。
日に焼けたサイン色紙がたくさん飾ってある。
たくさんのポスターが廊下に貼ってある。
ポップコーンなんて売っていないよ。
ジュースだって自動販売機だけさ。
一歩そこに入るだけできっと理解するはずだ。
いつか誰かが夢をみて、そこにスクリーンがあるということを。
数限りない作品が上映されてきた歴史を。

感謝。

映画『演者』

企画 監督 脚本 小野寺隆一
音楽 吉田トオル

「ほんとう」はどちらなんですか?

◆終映◆
2023年3月25日(土)~31日(金)
K'sシネマ (東京・新宿)

2023年4月15日(土)16日(日)
シアターセブン(大阪・十三)

2023年4月15日(土)18日(火)21日(金)
名古屋シネマテーク(愛知・名古屋今池)

出演
藤井菜魚子/河原幸子/広田あきほ
中野圭/織田稚成/金子透
安藤聖/樋口真衣
大多和麦/西本早輝/小野寺隆一

撮影 橋本篤志 照明 鈴木馨悟 録音 高島良太
題字 豊田利晃 絵画 宮大也
スチール 砂田耕希 制作応援 素材提供 佐久間孝
製作・宣伝・配給 うずめき

【あらすじ】
昭和20年春、終戦直前のとある村。嶋田家に嫁いだ3人の女たち。
血の繋がらない義理の三姉妹は男たちが戦時不在の家を守り続けている。

家長であるはずの長男の嫁、智恵は気を病んでいた。
三男の嫁、恵美は義姉を気遣う日々を送っている。
次男の嫁、陽子は智恵がおかしくなったふりをしているのではと疑っていた。

やがて魔物が再び女たちの前に現れる。
世界は反転して、演技は見抜かれる。

投げ銭は全て「演者」映画化計画に使用させていただきます。