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ほこり一本

そろそろ全体的に通常運転が始まるはずだ。
冬休みが終われば更に電車は混み始める。
御屠蘇気分も抜け始めて冬の普通の日がやってくる。

能登のこと、ガザのこと、ウクライナのこと。
同時進行でたくさんのことが起きている。
ニュースやSNSを開けば当たり前のように分断している。

あのね。ものすごく甘ったれなことを言う。
あまりにも子供じみていることを書く。
なんというか、どうしょうもなく悲しいことがたくさんある。
ニュースになることだけじゃなくてニュースにならないことも。
ものすごくプライベートなことでもたくさんある。
世界中の心にチクチクと針が毎日のように刺さっている。
そういうことのすべてを解決する方法がある。

隣にいる人を笑わせることだ。

家族でもいいし、友達でもいいし、他人だっていい。
隣にいる人が笑顔になることをする。
実はそれだけですべてが解決する。
隣の人が笑顔になって、その隣の人を笑顔にしたならば。
最終的に世界中の人が笑顔になる。
そんな簡単なことで、世界中が救われる。
そうだな。出来れば笑顔になって「ありがとう」があればもっといい。
「ありがとう」が繋がっていけば世界は平和になる。

悪気なんかないのだろうけれどさ。
自分が思うことがあって、そのために何かを攻撃する。
そういうこともある。
ふざけんなってことだし、抗うことしか出来ないこともある。
僕の本質的な部分を覗くとそういう怒りのようなものがいつもグツグツとどこかに煮えたぎっていて、同時にふぅふぅと息をふきかけて冷ましているような感じがするよ。
だから攻撃的なことを否定なんか出来ない。
それでもSNSが発達してからずっとその攻撃的なことを隠さないような状況が続いているように感じていて。
それが分断を加速させているのだとしたらどうすればいいのだろう。
面と向かってたらこんな言い合いしないんだろうなぁってことまで言い合ってるような感覚がある。
まぁ、そういうツールなのだと言えば、そうなのだけれど。

輪島塗り。
漆の工房ってさ、何度も何度も器に漆を塗り重ねていくわけだけれど。
ほこりの一本でも入ったらもうオシマイだっていうのをいつか何かのドキュメンタリーで見たよ。
漆を刷毛で塗って乾かす、それを繰り返す。その中で埃一本も許されないんだよ。着ている服や髪の毛についた埃も工房に入らないように細心の注意をして職人は集中している。
その工房が地震で潰れて、火事で焼けてさ、壺に入った何十年物の漆なんかもあるだろうにほこりにまみれている。
何百年も続いてきた文化、歴史、職人から職人に伝わってきた伝統。
そんな職人さんにどうやったら笑顔になってもらえるのかな。

対立は必要だと思う。
人間はそれほど正しくなんか生きられない。
だからあらゆる面でチェックする視点は必要なはず。
そういう意味では分断していることが悪いとは言い切れない。
でも同時に思うのはさ、輪島塗りの職人さんたちは正しい所作を続けることが出来ているから、今も残っているんだろうなぁってこと。
もくもくと漆を塗り続けることが出来るのだな、人間は。

わからないよ。
わかんないんだけどさ。
対立だって、分断だって、完全に否定はできないけどさ。
隣の人を笑顔にするってことだけはしようと思うよ。
それが繋がっていくんだと信じるべきだと思うよ。
子供のようなことを書いていると思われるかもしれないけれど。

心は痛む。
チクチクと。
だから。


映画『演者』
企画 監督 脚本 小野寺隆一
音楽 吉田トオル
題字 豊田利晃

「嘘ばかりの世界」だ
  「ほんとう」はどこにある

【次回上映館】
未定

出演
藤井菜魚子 河原幸子 広田あきほ
中野圭 織田稚成 金子透
安藤聖 樋口真衣
大多和麦 西本早輝 小野寺隆一

撮影 橋本篤志 照明 鈴木馨悟
録音 高島良太 絵画 宮大也
スチール 砂田耕希
制作応援 素材提供 佐久間孝
製作・宣伝・配給 うずめき

【あらすじ】
昭和20年春、終戦直前のとある村。嶋田家に嫁いだ3人の女たち。
血の繋がらない義理の三姉妹は男たちが戦時不在の家を守り続けている。

家長であるはずの長男の嫁、智恵は気を病んでいた。
三男の嫁、恵美は義姉を気遣う日々を送っている。
次男の嫁、陽子は智恵がおかしくなったふりをしているのではと疑っていた。

やがて魔物が再び女たちの前に現れる。
世界は反転して、演技は見抜かれる。

◆終映◆
・2023年11月18日(土)~24日(金)
ユーロスペース(東京・渋谷)
・2023年4月15日(土)16日(日)※限定2日間
シアターセブン(大阪・十三)
・2023年4月15日(土)18日(火)21日(金)※限定3日間
名古屋シネマテーク(愛知・名古屋今池)
・2023年3月25日(土)~31日(金) ※限定1週間
K'sシネマ (東京・新宿)

投げ銭は全て「演者」映画化計画に使用させていただきます。