鼻垂れのくせに

『徹底的にぐれることこそ、「正しい」生き方なのです。ただし、下手にぐれるとみんなから―人生に何らかの意味を見つけて生きたい人や、誰かの役に立ちたいと願望している人や、自分が生きてきた爪痕を地上に残したい人・・・からたたきのめされます。―中略―上手にぐれるとは、このように、周囲の単純な人々を徹底的にだましながら、それを心から楽しみながら、ぐれるということです』

若い頃、尊敬する人は誰かと聞かれると必ず父と答えていた。

一本筋が通っていて、言い訳をせず、正しい答えを持っている人で、奈良から脱サラして屋久島に移住して農業をはじめるなど、自分の考えと行動に嘘がない人だった。そういう大人にはめったに出会わなかったのでずっと尊敬していたし、今もそう。

そんな父の中で通している筋が、母にとってはわがままでしかないんじゃないか。自分の中で筋を通しながらも、周りに対してもう少し違う振る舞い方があるんじゃないか、と思ったのがちょうどこれを読んだくらいの時期で、絶対的に正しい存在だった父が一人の人間として見えてきた時期でもある。

そんな父に対して、ぐれるなら(筋を通すなら)もっと高度にグレて欲しい、あの絶対的な存在の父ならそうあって欲しい、と思ってメールでこの本を勧めたりしたりしたことがあったのを思い出した。ぜんぜん鼻垂れのくせに。

父は今も元気で屋久島で暮らしています。



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