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今更ながら「ストレンジャー・シングスシーズン4」を雑にレビュー。

見終えたのは8月前にはなるのだが、記事編集に時間がかかってしまった。長文書ける人すごいね。ということで、現代版スタンド・バイ・ミーとして名高いネトフリ専用ドラマ、ストレンジャー・シングス最新シーズンの雑レビューである。

あらすじ

巨大モールで起きた惨劇の後、一部の者はホーキンズから離れつつも、ひとまず訪れた平和の中で新たな日々を過ごしていた。

ホーキンズを離れることを決めた者たちは、慣れないカリフォルニアでの新しい生活を始める。ジョイスはホッパー署長を失った悲しみを背負いつつも、自宅でできるテレフォンオペレーターとしての仕事を始め、エルは今まで駆使してきた超能力を失いつつ、ウィルとともに高校に通い、ジョナサンは大麻を吸いながらナンシーとの今後の関係について悩んでいた。

ホーキンズに残った者達は、今まで起きた数々の恐ろしい事件の傷跡が残りつつも、青春を満喫する。マイクとダスティンは根暗なメンバーが集うボードゲームクラブに所属し、ルーカスはボードゲームクラブを兼部しつつ、ジョック(体育会系)が集うバスケットボールクラブに所属して脱オタクを目論む中で、マックスは兄の死を目前にしたトラウマが癒えないまま、皆と疎遠になっていく。スティーブとロビンはビデオ屋店員としてのアルバイトを始め、ナンシーは記者クラブでの活動に注力する。

それぞれ多様な生き方を送る中で、裏側の世界「アップサイドダウン」に棲む新たな脅威が密かにホーキンズを侵食しようとしていた・・・。

ざっくりとした感想

キャプチャ2

同じ世界観の中、それぞれ異なる人物の視点で物語が進んでいき、クライマックスが近づくに連れて皆の行動が一つの事象に繋がっていく・・・。そんなタイプの群像劇が大好物で、今作は展開の目まぐるしさが最高級だった。

今まで危険なシチュエーションは当然いくつもあったが、シーズン1以降は、こいつらならなんだかんだ乗り越えられるような気がするという空気感があった。だが今シーズンに至ってはマジでやばいかもと思わされ、そんな危険に直面した主人公たちの本気度が伺える演技の迫真さと、ストーリーの盛り上がり度は全シーズン中1、2を争う。

キャプチャ3

アップサイドダウンからの新たな脅威「ヴェクナ」は今までの敵と異なり、人間と同等の知能を有している。人が抱く後悔や罪悪感、トラウマといった負の感情に付け込み、裏側の世界から精神へと干渉して超常的な能力で四肢を粉砕し眼球を潰して呪い殺す。そんな危険な呪いによって苦しめられる人物の中には主役の一人であるマックスも含まれており、時間が経つにつれて精神世界が徐々にヴェクナに侵食される恐怖が描かれる。

エルム街の悪夢に登場する殺人鬼、フレディ・クルーガーが夢を通じて人を殺すことに通ずるものがあるが、そのフレディ役として有名なロバート・イングランド氏がキーパーソンとしてゲスト出演しており、1980年代ホラー映画へのオマージュなども豊富。(余談)

今までも当然ホラー要素があったが、今シーズンは直接的なゴア描写が割と多く、グロという側面ではシリーズ1かもしれない。

キャプチャ6

1~3までのサウンドディレクションも目を見張るものがあったが、今シーズンでは特に音に対するこだわりがすごい。

本作における象徴的なオブジェクトである「古時計」が発する特徴的な音、本作における敵の恐ろしさを象徴する何かが折れる音、果てには象徴的な場面で挿入される「沈黙」に至るまで、音で人はどのように感情が動かされるかを心得ている。

「効果音」「環境音」も当然のこと、使用されている「音楽」についても製作者たちのこだわりが伺える。物語の舞台となる1980年代当時のカルチャーの風を感じることが出来(まだ産まれていない)選び抜かれたここぞというシーンで流れる為、感涙必至である。後ほど語るが、とある場面でとある曲が流れた瞬間「ええやん!!!」とリアルで声が出てしまった。

キャプチャ10

同じ世界観の中、それぞれ異なる人物の視点で物語が進んでいき、クライマックスが近づくに連れて皆の行動が一つの事象に繋がっていく・・・。そんなタイプの群像劇が大好物だし、ストレンジャー・シングスは今までそれを上手く展開してきた。

・・・だが、今シーズンで初めて「とっ散らかっているなあ」と思ってしまった。

シーズン1の時点で登場人物は結構多かった印象だが、シーズン数が進んでいく過程で登場する「主人公勢と交流のあった」「生存したキャラ」は基本、次シーズンで主役級として扱われるようになるので、1シーズンに含めるべきキャラが多くなり過ぎてパンク寸前のところまで来ている。

一か所に全キャラを詰め込むわけにもいかないので、舞台を幾つかに分けて物語を進めざるを得ないわけだが、時系列がどうしてもバラバラになって若干困惑するし、幾つか分けた中でも描写不足だったりそもそも存在感空気のキャラが出てきてしまった印象。

辛うじて体勢を持ち直して綺麗に着地が出来た感はあるが、個人的にはそろそろ登場人物の間引きが必要なんじゃないかと思っている。愛着の湧いたキャラ達に死んでほしくないという思いもあるが・・・。

キャプチャ24

多くを詰め込んだ上でクリフハンガー落ちを付けたストレンジャー・シングス シーズン4。隙のない完璧な作品とは言えないが、ファンたちをある程度は満足させつつ、次シーズンに向けての期待を膨らませることに成功したことだろう。次のシーズン5で終わりを迎える上で、終止符を打つための種蒔きは十分に行われたと思うので、是非とも有終の美を飾っていただきたい。

全体としての評価:10点中8点


~~~以降視聴済み or そもそも見るつもりがない人向けレビュー~~~








舞台別での感想(ネタバレ含む)

物語の進行度によって若干の変化はあるものの、シーズン4の舞台は大まかに分けて「ネバダ州研究施設」「カリフォルニア」「ロシア」「ホーキンズ」の4つに分かれており、それぞれにキャラが配置され物語が展開していく。この舞台別での評価に差があり、一括りにして語るのはもったいない気がしたのでそれぞれで細かく評価を分けてみた。

ネバダ州研究施設編
主登場人物:エル

キャプチャ25

超能力を失って普通の女子高生となり、学校でイジメの対象となってしまうエル。夏休みに彼氏であるマイクがカリフォルニアに来たことを喜び、ウィルを連れて彼とデートをするが、いじめっ子達と遭遇してしまい恥をかかされてしまったたことで逆上、いじめっ子の一人をローラースケートで負傷させてしまう。そのことで逮捕されそうになるが、警察に護送されている途中でFBIを引き連れたオーエンズ博士に引き取られる。彼は「ホーキンズが危険な目に晒されている、能力を復活させて迫る危機に対抗しないといけない」とエルに伝えた。エルは新たな闘いに向け、ネバダ州にある研究施設で自身の能力を取り戻す為の訓練を始める・・・。

どうでもいいが、今シーズンは現代どころか過去の回想に至るまで、ひたすらエルがいじめられるシーンが多くて見ててちょっと辛かった。

力を取り戻す為には超能力と共に心のうちに閉じ込めてしまった過去の記憶を思い出す必要がある。そのためにエルは「ニーナ」と名付けられた巨大なタンクの中に入れられ、沈黙の中、過去を追体験をすることとなるが、ここで今まであまり言及がなかったエルが他の被検体とホーキンスの研究施設にいた過去の話と、シリーズ最恐の敵「ヴェクナ」の誕生エピソードをリンクさせるのは上手いと思った。

キャプチャ7

序盤、エルがかつて施設内でどのようなルーティンを送っていたかがゆーっくりと描かれる。このシーケンス以外はすごく盛り上がっているのにここだけテンポいがやけに遅いので、捨てシーケンスと決め付けそうになった自分がいるが、過去の記憶の中で唯一エルに優しく接し、彼女と共に脱走を計画する優しそうな青年の正体が終盤で一気に明かされるのには爽快感すら感じた。

この青年こそが研究所でナンバリングされた十何人もいる超能力者の子供達の始祖「001(ワン)」であり、ヴェクナそのものなんですけどね初見さん。

また、シーズン1時点で死んだかと思われたパパが復活していたのは意外だった。

エルに対する毒親っぷりが今回も炸裂。エルの意思など一切気にかけず、力を完璧に取り戻すまでになにがなんでもエルを施設に閉じ込めようとするが、ヴェクナという人類にとっての敵を相手に妥協出来ないのは当然だし、最終的にエルは力を出し切れずヴェクナに勝てなかったので、ある意味ではパパのエルに対する拘束は正しかったといえる。

なんやかんやあって研究施設が武装集団に襲われた際、優しくエルを抱き抱えて施設を脱出しようとするパパからは、娘を想う父としての姿が垣間見えた。パパのエルへの接し方は適切なものとは言えなかったかもしれないけど、愛は全くなかったわけではなかったように思える。

死に際にエルに「すべてはお前を思ってやったことだ。分かってくれ。分かったと言ってくれ」と懇願するも、エルは無言のままその死に様を見つめる。なんとも虚しい最期。
子の為、世の為と思ったつもりで教育してきたつもりでも、認めてもらえないことだってある。それが「パパ」ってものだ。

キャプチャ8

パパ役、フル・メタル・ジャケットのジョーカー役の人と同一人物だったんだね・・・。

ネバダ州研究施設編 評価:10点中8点


カリフォルニア編
主登場人物:マイク、ウィル、ジョナサン

キャプチャ15

エルが姿を消してしまったため、その身を案じつつマイク、ウィル、ジョナサンはカリフォルニアのバイヤーズ家で待機していたところ、突然FBIが訪れ、エルはオーエンズ博士と共にいること、エルを狙う敵対勢力から身柄を守るために派遣されたことを伝えられる。FBI監視の下、自由に外出することもできない一行はジョナサンが勤めるピザ屋のデリバリーを頼むことに。だが、ピザが到着する直前にバイヤーズ家は謎の武装勢力に襲われ、護衛のFBIが殺されてしまう。自身とエルの危険を察知したマイクたちはピザトラックを運転していたジョナサンの同僚、アーガイルとともにその場を急いで去るのだった・・・。

・・・ぶっちゃけ一番つまらないパートの様に思った。今まで主役として劇中でスポットライトを浴びてきたマイクとウィルが物語内で一番地味な立ち位置になってしまうのは少し悲しかった。ジョナサンに至ってはただのジャンキーでしかない。これはナンシーに愛想尽かされるゾ・・・。

ホーキンズで起こる超常現象殺人をエルの仕業であると仕立て上げた後、彼女を捕らえて軍事利用しようとしている(つもりなんだとは思う。明確な描写はない気がする)奴らより先にエルがいる研究施設の場所を突き止めなければいけない!という切羽詰まった状況なはずなのに、皆のほほんとしているので緊張感が全くない。

ちなみに、カリフォルニア編と名付けているが、大半は研究施設を見つけるためにピザトラックで移動しているだけのシーンが続くので、視覚的にもつまらないシーンがずーっと続く。カリフォルニア編改め、ピザトラック編である。

キャプチャ26

途中、死にかけたFBI護衛の一人が残したエルの行方のヒントとなる暗号を解くためにユタ州のソルトレークシティーにいるダスティンの彼女スージーに助けを求める場面があるのだが、ここでいきなりコメディ路線に振ってしまい、いやこれまでそんなムードじゃなかったでしょと言いたくなる。

ちなみにこのスージーちゃんはパソコンを駆使して電波傍受からハッキングまで何でもできる万能スーパーハッカーメアリー・スー的なキャラ。前シーズンで登場した段階から思っていたが、世界観にそぐわない気がするので個人的にはあまり好きでない。オタク的雑学と圧倒的なひらめき力で問題の解決策を見出す万能キャラはダスティンだけで十分なので、シーズン5で彼女は出さないで欲しい(届かぬ思い)

キャプチャ14

酷評が続いたが、良かったと思えるシーンは当然ある。それはウィルがマイクへの想いを打ち明けきれずに苦悩するシーン。

今シーズンで初めてウィルがマイクに対して恋心ともとれる感情を抱いているような描写が出て「はいポリコレー!」と茶化したくなったが、どんな危機的状況でも命を張って自分のことを助けてくれる親友が身近に居たならば、たとえ同性であろうが惚れてしまってもおかしくはないだろうと思ったので不思議と違和感ははなかった。(そんな状況でマイクとエルのデートに同行するの、鋼の精神過ぎる・・・)

マイクが好き。でも、彼にはエルというガールフレンドが居て、今この瞬間彼女の身を案じている。彼女との今後の関係性についても悩んでいて、とてもナーバスになっている。

ウィルはマイクを励ます中で、自分自身が抱いている気持ちを伝えるが、主語をそっくりそのまま「エル」に置き換えて、いかに自分が周囲と異なっていて不安なのか、いかにマイクの存在が自分にとって大切なもので、いかに彼のことを愛しているのかをエルの名を借りて伝えることとなった。しかし、当然マイクはその真意に気づくことはなく、親友の激励として受け止める。言い終えた後に涙をこらえるウィルの姿はなんとも切なかった。

キャプチャ17

全て熟知しているわけではないが、兄のジョナサンだけはウィルが悩みを抱えていることを悟り、彼に歩み寄るシーンも、過去シリーズに見せた深い兄弟愛を感じさせてとてもエモかった。ただのジャンキー止まりという印象で終わらなくてよかった(?)

ピザトラック編 評価:10点中4点


ロシア編
主登場人物:ジョイス、ホッパー、マレー

キャプチャ19

ロシア語が記載された小包がジョイス宛に送られる。ロシア事情に精通しているマレーの指示に従って開けたところ、人形が入っており、それを壊したところ、亡くなったかと思われたホッパーの生存を示唆する内容の手紙が入っていた。手紙には更に、ソ連の電話番号が記載されており、掛けてみたところ謎の男から「ホッパーを助けたいなら4万ドルを用意してアラスカに行け」と伝えられる。疑念を抱きつつも、ジョイスはホッパー生存の可能性に賭け、マレーと共にアラスカへ向かう。
時を同じくして、ロシアのカムチャッカ刑務所ではホッパーが脱走の計画を企てていた・・・。

ピザトラック編が一番つまらないパートだとしたら、こちらのパートは「ストーリー展開上一番いらないパート」だったなと思った。ワチャワチャやったのはいいんだけど、ストーリー全体に何か影響があったかと問われると・・・みたいな。

ただ、前シーズンで死んだかと思われてたホッパーがロシアで捕虜になっちゃってたから、単体で彼の救出劇を描かなきゃならなかったってのはプロット的にしゃーないかなあ。

キャプチャ11

ホッパーがカムチャッカ刑務所の脱出を計画する場面は刑務所の閉鎖的な環境も相まって常にシリアスで重い雰囲気で進んでいくが、アクションも多くて結構楽しめた。脱出の為に色々と手引きをしてくれているロシア人看守のエンゾもいいキャラしていて、最初は金の為だけに動いていたが、やがて手を取り合って協力するようになる展開がアツい。

キャプチャ13

ロシアに向かうジョイス・マレー側のシーンは一転して全体的にギャグ寄りになってしまった。(主にマレーのせい)カムチャッカ刑務所にいるエンゾと組んでいたはずが、後に裏切ってジョイス達の身柄をロシア人将校に渡そうとするユーリというキャラも物語の最後までふざけ倒している。ロシアに向かう飛行機の中でマレーが空手を駆使してユーリと闘った後、飛行機がロシアの大地に堕ちるという下りを目にしたあたりでシリアスな気持ちで見るのを止めた。

シーズン1で裏側の世界がまだ主人公たちの間でも認知されていなかった頃、行方不明になったウィルを除いてその存在を初めに知ったジョイス。誰も裏側の世界なんて信じてくれず、周囲から可笑しな目で見られながらも、そこに迷い込んだ息子を何が何でも助けようと必死になる強き母親。・・・そんなイメージはこのパートで完全に払拭される。

ロシアで捕らえられていたホッパーを救ったところまではいいんだけど、クライマックスに合わせてこっちの陣営にもなんとか物語に絡む形で壮大なオチをつけてあげなきゃ!と製作側が思ったのかは知らんが、物語後半、刑務所を脱出した後そのまま帰らずに「刑務所が裏側の世界の生物を研究目的で所持していて、それを殲滅させることがアメリカ本土で危険な目に合ってるエル達の助けになる!よし刑務所に戻ろう!」となる下りはマジで無理矢理すぎだし蛇足だろと思った。

キャプチャ21

「遥か彼方、ロシアの地で奮闘するホッパーたちの活躍によってヴェクナが隙を見せ、そのお陰でピンチだったエル達が逆転勝利をつかみ取ることが出来た!」・・・みたいなシーンでもあればよかったのだが、刑務所でのドンパチは意味があったわけでもなく、ただデモゴルゴンやデモドッグに襲われて意味もなく死にそうになっただけだった。

振り返ってみて「この場面いる・・・?」と思わされることの多いシーケンスだったが、ホッパーが生きているのはなんだかんだで嬉しいし、彼が何かやってるだけでかっこいいのでまあヨシということで

ロシア編 評価:10点中5点


ホーキンズ編
主登場人物:ダスティン、ルーカス、マックス、エリカ、スティーブ、ロビン、ナンシー

キャプチャ9

高校の人気チアリーダー、クリッシーが陰湿なボードゲーム部「ヘルファイア・クラブ」のリーダー、エディに惨殺されたというニュースがホーキンズ中に広まる。クラブを通じて彼を知るダスティンは「エディがそんなことをするはずない」と信じて止まず、スティーブとロビンにエディ捜索の協力を求める。
ナンシーは記者クラブの活動の一環として、記者仲間のフレッドと共にこの事件を追っていた。エディの叔父へ取材を行ったところ、彼はエディの無罪を主張し、これは伝説の殺人鬼ヴィクター・クリールの仕業であると話した。取材を行っている最中、フレッドは姿を消し、やがてクリッシーと同じような状態で惨殺されているのが発見されるのであった。
この出来事から主人公たちは裏側の世界からの新たな脅威を察して調査を進める中、マックスは鐘が鳴る古時計の幻覚を目にする・・・。

登場人物が多く、メインとなる舞台なだけあって本シーズンにおける一番見所さんが多いシーケンス。ホーキンスで起こる様々な異変を直接目の当たりにするわけだし、裏側の世界に直接関与するパートなのでずーっと面白い。 このパートのみを単体作品として見たら多分ベストの面白さなんじゃないかなと思う。何もかも書きたいけど、全エピソードおさらいみたいになっちゃうので良かったポイントだけ。

まず、ヴェクナの正体を探る部分はストレンジャー・シングス中屈指の名謎解きパートだったと思う。

キャプチャ12

エディの叔父を取材した際に出てきた伝説の殺人鬼ヴィクター・クリールという男について調査したところ、過去に彼が起こした一家殺人事件と、現在ホーキンスで起きている殺人事件の内容が似通っていることが分かり、彼が収容されている精神病棟を特定、直接取材を試みたところ、殺人はヴィクターがやったことではなく、寧ろ一家が惨殺される様子を見る事しかできずに、彼自身も殺されそうになっていたことが発覚。

事件の後、ヴィクターの息子であるヘンリーが超能力を駆使することの出来る子供であることがわかり「001(ワン)」として研究施設の第一被検体となったことが明かされ、全てが繋がり、鳥肌が立った。言葉での説明が下手なので衝撃を上手く伝えられないが、とにかくうまい脚本だと思った。こんなTRPGのシナリオを作りたい(?)

また、このパートで登場したジェイソンとエディはシリーズ屈指の名「新」キャラであった。

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ジェイソン・カーバーは物語の序盤で殺害されるクリッシーのボーイフレンドであり、バスケットボールクラブのリーダー。彼女が殺されたことを知るや否や、エディのみならず「ヘルファイア・クラブ」に所属する生徒全員に向けて殺意を向けて、他のクラブメンバーと共に武器を携えてヘルファイア狩りに繰り出す。

頭の悪いタイプのジョックではなく、クラブのリーダーとしてカリスマ性があり、学校の行事等で大衆に向けたスピーチをすることに長けていた為、ただの根暗ボドゲ好きが集うヘルファイア・クラブに危険なカルト集団としてのイメージを植え付け、復讐心から衝動で始めた非人道的なヘルファイア狩りを正当化することに成功している。心から嫌いになるタイプの悪役だが、それもジェイソン役のメイソン・ダイ氏による演技 のたまものである。


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そして、エディ・マンソン。このシーズンにおいて最も輝いたキャラ。アメリカ本国でも人気がバカ高い。ボードゲームを主な活動内容とする「ヘルファイア・クラブ」のリーダー。ボードゲームのことになると熱くなりすぎて大袈裟な言動が目立つが、基本的にはヘタレ。麻薬の売買を行うなど人として褒められない行動もあるが、根っからの悪人ではなく、物語終盤では内に秘めたる正義感が際立つ。
目の前で突如奇妙な死を遂げたクリッシーを殺害したという容疑がかけられたため、警察とヘルファイア狩りに追われるが、身を潜めていたところを事情を知るダスティン達が運よく先に見つけたので安全のために彼らと行動を共にする。

終盤、主役メンバー達による裏側の世界に直接赴いてヴェクナを倒す危険な作戦に参加することになるが、ビビりながらもしっかりと裏側世界慣れした主人公たちに付いていき、ヴェクナを直接倒しに行く先行隊が他のクリーチャーに阻まれないためにデコイになるという大役を果たす。陽動の為に選んだ方法がこれまたかっこよくて「そら人気になるわ」と納得。ある程度引き付けた後、現実世界へとそのまま撤退してもよかったのだが、ともに行動していたダスティンを先に逃がし、エディはそのまま囮になる事を続ける。途中クリーチャーたちと戦う気概を見せるも、最終的にはクリーチャー達によってズタズタに引き裂かれてしまうのだった。

キャプチャ22

・・・文章にして書くとアツくかっこよい死に様なのだが、描写がちょいと惜しく「十分に逃げる時間はあったのに、無駄に身を挺して死にに行った」ように見えてしまうのが残念。例えばダスティンが逃げるのに手間取ったりするシーンとかがあれば、時間を稼ぐ理由も生まれるし「この怪物たちを表の世界に解き放っちゃいけない!」なんて言うシーンがあればもっとかっこよく締まったと思うのだが・・・。とはいえエディがヒーローである事には変わりないので、そう言ったやり取りがあったと勝手に脳内補完している。

さらにこのパートで利用されている挿入歌は軒並み優秀。(ここまでくるともはや贔屓)

前述したヴェクナを倒す作戦のクリーチャー陽動に使われた方法、それはエディがトレーラー車の上でメタルを演奏するというものである(!?)ちょいと馬鹿げてはいるが、サイドキャラだったエディがスポットライトを浴びるシーンなのでファン人気が高い。

メタリカの「Master of Puppets」の音楽に合わせてエディの迫真の演奏と、マックスの精神世界内での逃走劇が交互に映されてとても盛り上がる場面である。超能力で殺されるクリッシーを目前にして何も出来なかったエディが、その犯人であるヴェクナを倒すために覚悟を決めて静かに「クリッシー、君に捧げる」って言っちゃうの、エディ株が上がっちゃってしょうがないね。

ヴェクナの呪いによる被害者の一人となってしまったマックスが精神世界で殺されかけるも、音楽の力により彼の支配の影響が弱まることを知ったルーカスたちが、彼女の好きな音楽を流して現実に引き戻そうとするスリリングかつ感動的な場面。

ここではケイト・ブッシュの「Running Up That Hill」がアレンジされて流れており、絶望の中から希望に向かって走り上がっていくような、そんな曲調が特徴的である。80年代の曲だが、ストレンジャー・シングスで取り上げられてシングルチャートで1位を取ったようで、ドラマの影響が感じられる。

ファンの間では特に上記二つが有名であり、確かにどちらも素晴らしい演出・音楽なんだけど、ワイがマジで感動して声を上げたあまり話題に上がらない以下の場面にも皆注目してほしい。

打倒ヴェクナ計画実行当日のシーンである。

最後の戦いに備えてそれぞれが武器を携え、キャンピングカーで「現実世界での」決戦の地に向かう一行。夕日に照らされ緊張感が走る車内。 現実世界から裏側の世界にいるヴェクナを誘き寄せるためにマックス、ルーカス、エリカが車を降りて、目的地であるクリール家の中に入っていく。
世界が引き裂かれるのを食い止めるため、散らばった主人公たちはそれぞれ異なる手段を用いて戦いに身を投じるのであった・・・。

流れる楽曲はジャーニーによる「Separate ways(Worlds Apart)」のアレンジ版。

誰も言葉を発さない中で静かにイントロが流れた後、聞こえてくる力強いスティーブ・ペリーの声に息をのんで、歌詞の一部「You, You, You」に合わせて三人が車を降りた後、曲のビートに合わせてマックスがドアを閉じる音ハメで鳥肌が立ち、アレンジによって重厚になったサウンドが終わりに向けてどんどん盛り上がって、強大な敵との死闘を予感させられたのち、つい一人で「ええやん!!!」とか叫んでしまった。

このシーンの音楽と演出まーじで完璧。それまでの緊張感と静寂から解放されて、不安を煽るような、それでいて力強いアレンジが聞こえてくる一連の流れ最高。ジャーニーは「Open Arms」と「Don't Stop Believing」の2曲だけしか知らなかったけど、出だしの声聞いただけでスティーブ・ペリーだってわかるし偉大なシンガーだってはっきりわかんだね。劇中で流れるのはショートバージョンだが、フルもSpotifyなどで上がっているため聴こう。名曲マジで。

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一番好きだったパートのレビューが一番取っ散らかってしまった。序盤も言ったが、シリーズ内におけるベストパートであると個人的には思っている。今シーズン全部の舞台で満遍なくこのクオリティが出せていればドラマとして完璧だったかもしれない。惜しいと思う部分は多々あるけど、ここまで気分を高揚させられたのは久々なので高評価。

ホーキンズ編 評価:10点中9点


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