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ブラウニー。心の友よ

ドラクエシリーズで一番好きな作品はどれですか?
と聞かれたら迷わず「5です」と答える。
親子3代にわたる壮大な物語。敵のモンスターを仲間にしてしまう心優しき主人公。

物語のエピソードそのどれもが素晴らしく、
初めてこの作品と出会った頃は毎日欠かさず母と約束した「1日1時間まで」を大幅に超えてプレイした。
「やりすぎじゃない?」と言われるといつも私の答えは「まだ30分しかしてないよ」だった。

冒頭で申し上げたように、この作品は敵のモンスターが仲間になる。
戦いに敗れたモンスターが立ち上がり、画面にこんなコメントがながれる。
「スライムが仲間になりたそうにこちらを見ている。仲間にしますか?」
なんといじらしい!!邪気を抜かれたつぶらな瞳でこちらを見てる…

「はい」1択だった。

最初に仲間になるスライムのスラリンを皮切りに、続々とたくさんのモンスター達が仲間になってくれた。
もちろん全てのモンスターを仲間にして、馬車に乗り切れない子たちは泣く泣くやさしいおじいさんに預けて旅を続けた。

そんなある日、大きな木槌を持った可愛いモンスターのブラウニーが仲間になりたいと申し出てくれた。
ブラウニーはすでにブラウンというスタメン入りの仲間がおり、この子は仲間になってもおじいさんの家でお留守番組が確定していた。
私は悩んだ。
おじいさんの家にはもうたくさんのモンスターがいるが彼らは本当に幸せなのかと。ちゃんと外で遊ばせてもらっているんだろうか。
まさかとは思うがゲージに入れられて管理なんてされていないだろうか?

この一瞬の迷いを、そばで私のプレイを見守っていた姉は見逃さなかった。
「断ってみようよ」
!!!
「でも可哀想じゃない??一緒に来たいんだよこの子は!」
「でもどうせ連れていけないから預けるでしょ?断ってみたらどんな展開になるか気にならない?」

こんなやり取りの末、私は初めて仲間になるのを断ってみることにした。
一体どんな展開になるのか。

私の予想は《何度「いいえ」を選択しても同じ質問が繰り返される》だった。

当時のゲームにありがちな展開で、選択させてくれるかと思いきや断ると「よく聞こえなかった。もう一度聞くぞ!」とか言いながら「はい」を押すまで永遠に同じ質問を繰り返されるパワハラ仕様だった。
今考えれば物語の本筋に全く関係ないこの局面で強制選択が発動することなどないとわかるが、
当時まだ小学生のピュアな女子だった私はその可能性を信じた。信じて、「いいえ」を選択した──

「ブラウニーはさみしそうに 去っていった」

寂しそうに…森の奥深くへ…去って…

私は絶望の中にいた。
断ってしまった。
勇気を出して、先ほど戦った敵の仲間になりたいと申し出てくれたのに…

自分が楽になりたい一心で姉に問いかけた。
「お姉ちゃん、きっとブラウニーは森で仲間達と楽しく暮らすよね?」

「いや、どうかな。一度人間に尻尾を振ったこの子をほかのモンスターはどう思うかな。仲間の群れには戻れないだろうね」

!!!!!!

泣いた。鼻水垂らして大号泣した。

もう先ほどのブラウニーが森で寂しそうに一人で暮らしている様子しか想像できなかった。

私には、おじいさんのところでほかの心優しいモンスターたちと暮らす生活も選ばせてあげられたのに。
ごめんなさい。本当にごめんなさい。
もう2度と、もう2度と!断ったりなんかしないから!!

姉もショックを受けている様子だったが、直接断りの手を下した私の罪悪感と比べれば埃程度のものだった。
その証拠に、それからしばらくの間
姉妹の間で喧嘩がおこると奥の手として姉からこんな呪文が飛び出すようになった。

《ブラウニーは寂しそうに森へ去っていった!!》

この呪文を唱えられると、どんなにこちらが優勢の喧嘩であってもたちどころに怒りは消え、涙が溢れた。もう一種のトラウマである。

ドラクエ5は、私に生き物の命の大切さや思いやりの心、「そのあとどうなるか⁈」まで想像して行動することの大切さを学ばせてくれた。


あの時のブラウニー、げんきですか?
私はあなたの申し出を断ってしまったあの約30年前からずっと後悔しています。
謝っても許されないよね。ひどすぎるよね。
心の中でずっとあなたはスタメンです。
2度とあなたのような悲しみは生まないよ。
どうか、ご達者で。

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