見出し画像

芸術は、待っていてくれる

 世の中はどんどん変わっていくな、と日々思っています。
自分の想像もしていなかったことが起きたり、ひとりじゃ押し返せないほど大きな力で動かされることがあったり。
規模の大きいことで言えば、夏の異常な暑さとか、不安定な世界情勢とか。これから社会へ出ていく立場で言えば、色々なものへの課税とか、インボイス制度とか。
変わらないものなんてないんじゃないか、というくらいに、毎日何かが変わり続けている。何を頼って、何を軸にして良いのかわかりません。もちろん、変化自体は悪いことではないのだけど、なんとなく不安です。

 そして、社会だけでなく自分もまた変わり続けているなと思います。
毎日の気分もそうだし、好きな食べ物、ハマっているもの、よく遊ぶ人や人間関係。
ずっと同じでいられるということは絶対にありません。


 そんな風に、自分の意思ではどうしようもない変化が常に起きているけど、芸術だけは、作品だけは、そのままの形でいてくれる。何にも脅かされることなく、いつ帰ってきても同じ顔で迎えてくれるような気がするんです。
音楽とか、映画とか、絵とか、そういうものは、いつも必ずそこにいてくれます。遠くに輝く星のように、地上の誰にも邪魔されない場所で、長い間ずっと、ひっそりと息をし続けています。私たちは、その昔の光を受け取り続けています。


 先日、ブロードウェイミュージカル『ウエストサイドストーリー』を見に行きました。これが、ほんとうに素晴らしかった。
リメイク前の映画も、リメイク版の映画も観るくらい好きなので、もちろんストーリーは知っています。演奏をしたこともあるので、音楽も知っています。ハラハラするシーンも、感動するシーンも、どこで、どんなタイミングで、何が起きるかも知っています。

それなのに、いや、だからこそ、ほんとうにその舞台を見た時、感動と同時に安心が得られました。

見たかったものが、見れた。
ちゃんと、憧れの舞台がそのまま、形を変えることなく目の前に広がっていた。
自分が見ていない間も、誰かに守られ続けたこの作品を、この光を、ちゃんとまた自分の目で見ることができた。 
そういう感覚。


 何も安定しない、何も確実じゃない世の中だからこそ、変わらないものがあることの安心は、私たちを何倍も強くしてくれると思うのです。
芸術は、他の何にも邪魔されません。
これまでも、これからも、作品は何者にも立ち入られない場所であって欲しいと思います。

 芸術に対する自分の感じ方は日々変わってしまうかもしれないけど、作品そのものだけは、変わらずにあり続けて欲しい、待っていて欲しい。
そして、そういう、帰って来れる場所を自分のために作りたい。

だからきっと、音楽を創り、新しい映画に出会い、絵を近くに置いたりするんだと思うな。

私は、今日も楽器を弾き、絵を描きます。

この記事が参加している募集

学問への愛を語ろう

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?