おだじ

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おだじ

Twitter用のページです🥰 https://twitter.com/oodajiman_my オリジナル小説も載せます。

最近の記事

京極殿三國志(仮・3

私はーーーー あの男の云う通り、己の夢の中だけで生きて居たいのか。 葛藤も混沌も無く、過去も未来も無いーーー その日の事を思い出す度、己が凡て、否、世界凡てを信じられなくなった。 今更ではある。そしてーーーだから何だ、という開き直りさえ生じてくる。 私にだって‥‥腹が立つ事はあるのだ。 その後の展開は、関口を玩ぶかのように二転三転した。 呂布によって陶謙に譲られた徐州は攻められ、三兄弟は散り散りとなった。 いま、関羽・木場は曹操の元に捕われているらしい。 何が良かったのか堂

    • 京極殿三國志(仮・2

      とても良い香りが鼻先を擽っていた。 ーーー此処は桃源郷なのかもしれない。 だったらどんなに素敵だろう、関口は夢うつつに想う。 「‥‥うふふ」 無意識に関口は微笑んでいたようである。 「コラ、不気味に笑うなッ!」 頭をポカリと叩かれ、意識が戻った。 「‥ん、ぅう‥?」 気づけば、立派なお屋敷の庭先の縁側で関口は横になっていた。 傍らには、先刻の美麗だが奇矯な男と、まるで立方体のような強面男が鎮座している。 だがその存在より、関口は嗅覚に気を取られ、いい香りのする方へぼんやりと目

      • 京極殿三國志(仮・ 1

        度重なる災害や疫病。 人々が血の汗を流し満足する事の無い胃袋を抱える一方で、支配者側は私腹を肥やす。 賄賂は当然の如くに横行し、権力を握った宦官どもが皇帝を諫言で操る、政治の腐敗しきった時代。 民衆の命の重さなど、地位ある者の一度の食事より遥かに軽い。 そのような理不尽な世が人々の日常だった。 だが、当たり前のような日々に見えながら人身は乱れ切っていた。心の奥底では誰もが求めていた。 変化を。 革命を。 そして、『太平道』という宗教に支えられた信者で成る軍「黄巾賊」が勢い

        • そんな日

           言葉には力があるという。  しかし、言葉それ自体は、記号でしかない。いや、記号でさえ無い。  その言葉を発した者と、発せられた者とがその言葉の概念を共有していなければ、発せられた言葉は行き場を失い、消滅する。ただの音、若しくは、その言葉が文字であればただの形である。意味などない。  「君は、何もわかっちゃいないね。」  私に一瞥もくれずに、和綴の本をぱらりとめくり、男は言った。  「何がだ?…つまりはそう云う事だろう?」  私は、街の本屋でたまたま手に取った本に書いてあり

        京極殿三國志(仮・3

          部屋、間違ってないか?

          口から溢れた言葉は、「妙な夢だわ」だった。 現実逃避と指摘されても仕方がない。 陳腐な感想ではあったが、その小さな呟きには、希望すら滲んでいた。 その声に、全裸の男女二人が同時に首を傾げた。 仕事を終え、帰宅する。 玄関の鍵を回し部屋に入り、靴を脱いだ時だった。 中から、話し声が聴こえる。 来客の予定も無いし、合鍵など作った事も無い.。故に、人の気配を訝しんだ。 鍵はちゃんと掛けていたし、建物自体がオートロックだから、泥棒という選択肢は確率が低いだろう。 漏れ聴こえる音は穏

          部屋、間違ってないか?

          その音の名は

          ひとりきり、屋敷の自室にこもって音楽を聴いている。 このCDは一体何度リピートされただろうかと、綱吉は豪奢な壁時計に目を遣る。だが、壊れている侭にしていたため、時を刻む役目を果たさなくなったのは半月も前だった事を思い出す。 何時間も壁にもたれた背中はそろそろ軋みを訴えていて、仕方ないなと腰を上げる。 分厚いカーテンを開けると、空は夜明け前みたいな色をしていた。若しくは雨上がりの夕方みたいな。 朝なんだか夕べなんだか、綱吉は頭がぐっちゃになる。 「とりあえず、消すか」 ぼそっと

          その音の名は

          眠れないとき・三

           黒子はただ混乱する。赤司を追って来たらしい男の唐突な出現。そして、自分が何の覚悟も、深い考えすらも無く、赤司に会ってしまった事の二つに。  赴くままに自転車でここに来てしまったというのは事実だが、それにストッパーをかける事だって出来た。赤司と偶然に出くわすという可能性だって、皆無じゃないと考慮する事だって出来た。  こういう具合に、色んな物事それ自体を、言葉として租借することに精一杯になってしまう事に於いて、結果、人の気持ちをおろそかにしてしまうのだ、と黒子は落ち込む。

          眠れないとき・三

          眠れないとき・ニ

           黒子は自転車に乗っていた。風の気持ちよい日だった。  五月の風は自分には優しい気がする。黒子は頬を撫でる風に神経を研ぎ澄ます。  誰かに頬に触れられるよりも、こうした何気ない感覚が好きだった。曖昧で、確証など要らない自分だけのもの。人に説明する必要の無い大事な何か。世界に在って、祝福されていると実感できる言葉には出来ない想い。  仲間ありきではあるが、バスケはそれにちょっとだけ似ている。  赤司に自分の心を晒す真似をした事を後悔したが、どうせロクに憶えてやしないだろ

          眠れないとき・ニ

          眠れないとき・一

           みぞおちに、どかりと大きな鉄球をぶつけられた感覚がする。いつもそうだ。僕が勝手に追い詰められ、答える言葉も見つけられなくて、頭の中がちかちかしてきて、最後には重たいものを撃ち込まれ、心が死ぬ。  言いたい事は山ほどあった気がするし、よぎった気配もある。けれど、実際は全く無かったのかもしれない。相手の言葉が違う言語に思われて、うまく脳の中枢回路に組み込む事が出来なかっただけなのかもしれない。  僕は時々、ことばというものが何なのか判らなくなる。  他人はそれぞれの辞書を

          眠れないとき・一

          『道に在る塊』

             中途半端に積った雪が寒々とした風景を更に凍えさせている。  こんもりと積った雪道であったなら其処には何がしかの暖かみが感じられたかもしれない。  真っ白な分厚い絨毯、などと夢見がちな事を想うわけではない。質量がどうのという事柄でも無く、寧ろ真綿に包まれている様な、と更に子供染みた意味でそう感じたのかもしれない。  そんな曖昧な思考をぼそぼそと告げると、呆れた表情を隠そうともせずに彼女は云う。  「まぁ、なんとなくは分かるけど、雪は毎年見飽きているでしょ?」

          『道に在る塊』

          『ノイズ』

           ザッ、ザザッ。ザザザッ。  頭の奥で音が鳴る。断続的なノイズ。  とうとう蝕まれてしまったのだろうかと、敬子は道路にへたりと座り込む。  通勤時が過ぎた時刻の住宅街だった。新聞の折込みに入ってくるような、精巧な模型めいた、個性を許さない家が立ち並んでいた。  道には塵ひとつ無い。誰かの吐瀉物も、煙草の吸殻やらも落ちていない。穢れた物、無駄な物は全て排斥された様な不躾な清潔さがあった。その概念さえ喪失していた。  そんな道路で、彼女はじっと座り込む。  スカートが

          『ノイズ』

          実家の猫は、いつもピーコ

           見る度に憔悴していく。  身体からは死の匂いがしている。目や鼻には汚れた体液が纏わりつき、拭おうとしてやってもそれを嫌がる。水しか摂取しないでここまで生きている。痩せ細り、抱いた身体は骨ばっていて、哀しくなるくらい軽い。その可愛らしい声を聴く事はきっと二度と無いのだろう。  柔らかいタオルで包んで膝の上で抱く。腹さえ触れなければ苦しくは無いようだ。眼は徐々に虚ろとなり、半ば閉じてはしまっているが、安堵しているのが判る。狭い視界でもこちらをじっと見ている様子なのが切なかっ

          実家の猫は、いつもピーコ

          レイニーデイ

           その日は雨粒が大きかった。巨人が泣いたらこれくらいの大きさの涙かもしれない。それは、道脇の排水溝に、誰にも拭われる事なく吸い込まれてゆく。  空の彼方には大気圏があって、その番をしているのが巨人なのだ。時折、さみしくなって泣く。本当は自分も皆と地上に立っていたいから、彼は泣く。  番をする意味すらわからないのに、彼はその為に生み出された。だから、大きな粒の雨が降る日は、彼のさみしい日だ。そうじゃない雨降りの日は、巨人ではない誰かが、泣くのを堪えられない日だ。その誰かは、

          レイニーデイ

           ぼくが欲しいと思うものは、昔を振り返ってもそんなに沢山は無かった様に思う。しかも大抵のものは時間が経てば要らない気がしてきたし、興味さえ失ってしまった。  さほど贅沢なものを欲したわけでは無かったけれど、手に入らなくて仕方の無いものばかりだったのかもしれない。その線引きみたいな事が、勿論ぼくに出来る筈も無かったのだけれど。  消費されるだけの物なら許されたり、代価を支払えば権利みたいなものが生まれる対象は、手に入れた途端に色褪せる。  およそ、欲という感情はその程度の

          『ツノ≠ファルス』

          日常に疲弊し、内と外では何かが腐ってゆく。 身体も精神もじわじわと、そしてじくじくと腐蝕してゆく。 錯覚とかでは無くて、実感として私はそれを感じている。 今年三百歳になるカブトムシが、私の部屋には住み着いている。 彼は立派なツノを持ち、甲冑みたいな背中のつやは少しも衰えてはいない。いつもピンと前を見据えていて、堂々と部屋の中を歩く。 「どれだけ長生きをする気なの。」 カブトムシを膝の上に乗せて問うた。 「さあね。僕が決める事では無いのだろうさ。」 「ずっと輝

          『ツノ≠ファルス』

          『砂、そして泡』

           浜辺に屈んで手のひらに乗せたものが、さらさらと零れていくのは綺麗な砂だけとは限らない。また、星の砂のような、時を経た珊瑚の欠片だけとも限らない。けれども、海水浴客たちが放置していった塵のみというだけでもない。  ハルが砂浜にしゃがんだのは、微かな声が足元から聞こえたからだった。  『見つけて、ここにいるよ。見つけて』  それらは手のひらに乗せた途端、指の間から滑り落ちた。そして幾つかは風がさらっていってしまった。それは、小さな亀の子供たちだった。  亀?その生き物は

          『砂、そして泡』