反抗期

反抗期ってやつの正体はなんなのか。
僕は『親が一人の人間だと気づくこと』だと思っている。
生まれてすぐは訳の分からん世界、親こそ人生のすべてであり、絶対的なものだ。分けわからんこの世のすべてを親から学ぶ。
しかし、学校に通いだす頃からか。
友人や他の大人、先生といったと他人に次々に遭遇するRPGが始まる。そこで次第に受けだした影響がやがて自我と呼ばれる自己認識を形成しだす頃には、なんなら、親以外と過ごす時間の方がとっくに多くなっていたりするだろう。

そのあたりで薄っす~ら感じ始める。
ん??ママ変なこと言ってんな。
パパ、めちゃくちゃ間違ってんな。

もちろん個人差はあるが、それが僕は10歳だった。

早いな。生意気だな。と思うかもしれないが、振り返れば、5歳の息子に毎朝、漢字の視写を命じ、九九の暗唱、漫画やゲームの禁止令。読書感想文という年貢を献上させる征夷教育大将軍、「キョウコ」に育てられた当然の結果だったのかもしれない。ちなみに家訓は「考えて言葉にしなさい」だった。
もう社訓だ。前株の匂いがしてくる。

その教えに、親に懐疑的な目線をハイブリットした航平くん。
放った言葉は必然的にこうなってしまう。

「クソババア」

うん。読書感想文の成果が遺憾なく発揮されている。
「おもてなし」の対義語「クソババア」
もし滝川クリステルさんが「く、そ、ば、ば、あ。クソババア」と本意気で言ってくれるなら、2億円はかき集めようと思っている。

しかし、僕が振り付きで「く、そ、ば、ば、あ。クソババア」と言ったシーンはIOC総会のプレゼン中ではなくて、5年2組の授業参観だったから、クラスメイトの伊藤君のママの版画みたいに驚いた顔と「親にそんなこと言っちゃいけません!」ってどっかの大人の声と、それでも黙ってニコニコしていた母の顔は今でも脳裏にこびりついている。
もちろん、あのアンダーソンとは全く別の伊藤さんだし、母には申し訳ないことをしたな。。と思いだす度、胸が痛む。
しかし、あの状況で動揺の一切を表情には出さず、良いママを演じきったキョウコには天晴。あそこであの顔をしていたら、100%僕が悪くみえる。
怒りを押し殺して、笑顔を崩さなかったわけだ。
本当に世渡りがうまい。さすが征夷大将軍。天下統一を成し遂げるわけだ。

隆盛を極めた分、没落も早かった僕の反抗期は小学校卒業前には息を潜めることとなった。「人は違う!多様性を受け入れよう」という新たな社訓を掲げ、社内ベンチャーとして独立させてもらった結果だ。

また母の呼ぶ声が聞こえる。「トイレを早く出ろ」とのことだ。
にやりと笑って、僕を全てを水に流す。

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