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イラストレーター、手芸作家向け「仕事とお金の授業」#9 お店に商品を卸す

本日の授業内容

こんにちは金曜お昼になりました。手芸作家兼若手イラストレーターの展示をメインとしたギャラリーを運営している大図まことです。イラストレーターと手芸作家に向けた「仕事とお金の授業」9回目となる本日はお店に商品を卸すことについてです。

最近はイラストレーターも手芸作家も自分で作った作品や雑貨をネットで販売することは一般的になりました。これを読んでいる作家の中にはsuzuriやminne、baseなどのシステムを使い商品を販売している方が既に多くいると思います。

今日はネットで商品を販売することでは無く、イラストレーターや手芸作家がリアルな店舗で商品を販売することについて話して行きたいと思います。


商品をお店に置いてもらうための営業方法

私が刺しゅう作家として活動を始めた当初、刺しゅうをした作品では無く刺しゅうの図案を販売していたことは以前のnoteで書きました。作品を売りたくなかったというわけでは決して無く、実は代官山や中目黒にあるおしゃれな雑貨屋さんに置いてもらえたら嬉しいなと作品を持って飛び込み営業をしたことがありました。惨敗でした。

そのとき唯一話を聞いてもらえた代官山のお店が今どうなっているんだろうと調べたらなんと近所のウグイスビルに営業所があってびっくりしました!スピってる!!


イラストレーターや手芸作家が作る商品はPLAZAやハンズ、ロフトなどのバラエティショップに並ぶ量産品の雑貨アイテムとは別でハンドメイド雑貨の部類に入ります。実はそういうハンドメイド雑貨を常時置いてもらえるお店はかなり限られます。※イベントやレンタルボックスなどは除きます

上記のバラエティショップやセレクトショップ、ミュージアムショップに商品を並べたいと思ったら以前のnoteにも書いた展示会に出るのが一番の近道です。何十軒、何百件と営業メールをしたり、足を運ぶ時間を考えたら20万円くらいの出展費用で数日間展示会に出展する方が効率が良いなと今は思います。もちろんその際はどの展示会に出るかもしっかり見定めて下さい。

取引条件の相場について

なんとかがんばって営業し、いざ取引がはじまるという前に知っておかなければいけないのが取引条件とその相場です。販売する商品の値付けにも影響してくるのでとても重要です。

私ははじめて商品をお店に置いてもらう事になったときに戸惑ったことがあります。それはハンドメイド雑貨はよっぽど魅力的な商品以外はお店に買い取ってはもらえないと言うことです。ではどういった取引が行われているのかと言うと大きく分けて委託取引買取取引の2つに分類されます。

読んで字のごとく買取取引はお店側が商品を買い取って店頭に並べます。一方委託取引は一定期間お店に商品を委託して並べてもらい残ったら返却されてきます。

もちろん作る側にしたら買取が良いと思いますが、契約のハードルが高いので委託取引で商品ラインナップを広くお店に並べてもらうという方法も考えようによっては良いと思います。買取の場合お店の都合で一定期間売れないとセールになりブランドイメージを毀損してしまう可能性もあります。デパートの催事などはほとんどが委託取引(消化仕入れ)です。ちなみに現在私は買取以外の条件でのお取引は全てお断りしています。

雑貨の取引条件の相場

次にお店に商品を卸す際の一般的な取引条件の相場を書きます。

委託取引条件の相場
上代(売値)の7掛け(30%がお店の利益)
8掛けだったら良い条件だな~と私は思います。6掛けだとう~んと思います。

買取取引条件の相場
上代(売値)の5掛け(50%がお店の利益)
商品が魅力的は場合は6掛けでも7掛けでも通ります。取引数量、取引金額によっても上下します。基本的に買取の場合は下代合計○万円以上から卸しますと設定することが多いです。

注意しなくてはいけないのは雑貨以外だとまた相場が変わってくることです。玩具や書籍は7~8掛け、食料品や宝飾品でも業界によって全然変わってくるのでお店に卸すことを考えているのであれば販売価格を決める前に条件の相場を事前に調べて知っておくことが取引交渉の際に必要になってきます。

お金がいつ振り込まれるのか?

お店で売れた商品のお金がいつ振り込まれるのかもとても大事です。駆け出しのころは売上を元手に次の制作費にまわす作家も多いと思います。売上金額の支払いの流れの多くは売れた月の末日で締めて集計し翌月末に振り込まれます。そのことを月末締の翌月末払いや口頭では末末と言ったり支払いサイト30日間などと言ったりします。会社によっては末締めの翌々月払いや、今は少ないかもしれませんが手形で半年後の支払いなどもあるので必ず取引の前に確認してください。

黒字倒産という言葉をニュースなどで聞いたことがありませんか?黒字なのに倒産とはどういうことなのだろうと思う人がいると思いますがその多くはお金の出と入り(キャッシュフロー)のズレによる資金繰りの悪化によります。大きな会社は設備投資をしたりして動く金額が大きいです。業績が悪い年が続くと与信が通らずお金を銀行から借りることが出来なくなって帳簿上は黒字なのに倒産することがたまにあります。

自分には関係無いかと思ったイラストレーター、手芸作家の皆さん、私は実際これを経験しかけたことがあるので声を大にして言いたいです。キャッシュの余裕がある事が創作活動の余裕を生みます。この事に関してはまた別の機会に書きたいと思います。今思い出すだけでもゾッとします。

もしすぐに売上を振り込んでくれるお店があったらそこはとても優しいお店なのでちゃんとお礼を言って長く付き合えるようにしてください。

自分の商品をいくらで販売するのか

値付けに関しては原価の3倍以上が目安と一般的に言われています。
分かりやすく言うと原価1,000円で作った物を3倍の3,000円の値付けをして5掛けで卸した場合500円の利益という計算です。
ハンドメイド商品を自分で作る場合には作業工賃をいくらに設定するかにより一概にこの計算式が合うかというと難しいかもしれませんがいずれお店で販売もしたいと考えている人は値付けの参考にしてください。
高すぎても売れないし、安すぎても利益が少ないし値付けはとても難しいです。

持続可能な値付けをしよう

ハンドメイドに限って言えば薄利多売は死を意味します。無理して作ってはいけません。母さんが夜なべして手袋編んでたのは昭和の話です。体を壊します。

昔からよく言われていますが個人や小さな会社は安売り競争に巻き込まれないように差別化、ブランド力の強化が大事になってきます。最近はファン作りの重要性などもよく耳にしますよね。

数年前まで私は仕事として300円ショップの商品企画に多く携わっていました。ザ・薄利多売のビジネスです。何万個と作る量産品でありながらクオリティが実はそこまで悪くなくて自分で作るものと大差が無いことにショックを受けました。雑貨屋さんで自分が作っているものと似たようなものが安い値段で売られていて差別化が出来ないものだとしたらビジネスとしてはそもそもそれを作る必要があまり無いのかもしれません。
※ハンドメイドを趣味で楽しむ話とは分けて考えてください。

低単価の商品は企業と組んでデザイン費やロイヤリティを対価としてもらうビジネスにしていき、個人で作って販売するものは無理せず持続可能な価格で売れる物を開発する必要があると考えます。

まとめ

リアルな店舗で自分が作った商品が販売されることは不特定多数の人の目に付くので売上げ以上のメリットがあります。街中のお店に自分が作ったものが置かれているのはとても嬉しいですよね。ネット販売と並行して是非チャレンジしてみてください。

次回は具体的に自分で作った商品をベースに解説していく予定です。ではまた来週お会いしましょう!

本日の課題

今自分がやっている創作活動をベースにして薄利多売では無く大量生産品と差別化出来る商品が作れないか考えてみよう。

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〒111-0042東京都台東区寿3-14-13-1F
TEL:03-6802-8219
12:00~19:00
※展示最終日はギャラリー、ショップ共に17:00閉店となります。

▼イベント詳細などはこちらのHPでご確認ください。


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