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 こんにちは。
突然ですが…親友はいますか?
どんな友だちを親友って呼ぶんだろ。

親友の定義ってなに?なんて難しいことを考えずに、親友ときいてまず頭に浮かんだ友だちの顔。
その人が、きっとあなたの親友でしょう。

相手が心底まいっているとき、隣で共にまいってしまい、しあわせでいるときは共に大はしゃぎ。
理屈とかじゃなく、それが親友なんだろうな…と思わせてくれる絵本をご紹介します。

 この絵本を息子たちと読んだ日、当時7,8歳だった長男が「ぼくにはまだ親友がいない。いつかできるかなぁ…」とつぶやいたことを憶えています。
フランスを代表する漫画家・ジャン・ジャック・サンぺが描くせつなくもしあわせな物語。
訳者は詩人の谷川俊太郎さん。

 さて、内容です。
「小さなマルセラン・カイユ、他のたくさんの子供たちと同じように、とても幸せ。 と言いたいところだけれど、」という最初のページ。
顔を赤くして歩く小さな少年がひとり。

マルセランは原因不明の赤面症。興奮したり、緊張しなくても、ほとんどいつも顔が赤い。
大都市の医者も彼を治すことができない。

「どうしてぼくは赤くなるのか?」という疑問を持ちながらも「彼はとても不幸せってわけではなかった」。

 子ども時代は、自然に友だちの輪から離れて、ひとりでいることが多くなったが、彼はそれなりにひとりで過ごすことに慣れていったから。
でも…だんだん、その疑問は大きくふくらんでいき「ずっと彼を眠らせなかった」。

 ある日、マルセランはアパートの階段でくしゃみがとまらない少年に出会う。
彼は引っ越してきたばかりのルネ・ラトというバイオリニストを目指している少年だった。
才能豊かで優しいルネ。

 話をきけば、ずっと原因不明のくしゃみに悩まされてきたという。
有名な演奏家が集まる音楽会でバイオリン奏者として招待されたが、くしゃみのせいで台無しになった。ルネの弾くバイオリンは最高なのに、彼はくしゃみのせいで飛躍できない。
 やがてルネは川岸をひとりで散歩するのが一番好きという少年に変わっていく。
もちろん名医といわれるドクターも彼を治すことができなかった。

 そんなとき、偶然出会ったのがマルセランだった。
彼らはお互いをおぎないながら、相手の素晴らしいところを次々とみつけていく。
気づけば、いつも学校の中でお互いの姿を探すようになった。

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 ジャン・ジャック・サンぺの筆が素晴らしい。
独特の筆致で大判絵本の見開きいっぱいに、いきいきと彼らの日常を描く。
登場人物を自由に吹き出しの中で語らせる。

 全体の場の空気がページの外にはみ出していくくらいの力強さで・・・
マルセランとルネを取り囲む世間のありようも、彼らの内面のしあわせやせつなさも。

 おとな都合の「急な引っ越し」が、唐突に彼らを引き離す。
ルネがマルセランの父親に手渡した新住所の手紙を、父親は山のような書類の中で見失ってしまう。

 隔られたまま大人になった彼らが、やがて大都会の中で偶然再会する。
そして・・・。

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 版元のリブロポートは1998年閉鎖。
現在、新刊は手に入らない状況になっています。
あまねく人に読んで欲しいと思う本が廃版になったまま…というのはあまりにかなしい。
こちらも復刊をのぞみます。


 誰しもコンプレックスを持っている。
そして、ちょっと肩肘張って生きている。
「マルセランとルネ」がカラダの力をフッと抜いてくれます。
彼らの愛らしさと健気な強さが。

 家庭の読み聞かせでも、おひとりさま読書でも。
後悔させない一冊です。

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