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詩って、イイ から読んでみてよ。知らんけど。

 こんにちは。
今日もお越しくださいましてありがとうございます。


 かれこれ20年くらい前の話になりますが…。
ブックトークや読み聞かせ活動を小学校で始めて5年ほど経った頃。
隣町の小学校から「国語の授業の一貫で、詩集のブックトークをしてほしい」との依頼を受け、会のメンバーと多数の詩集を読み込み、6年生の授業に臨んだことがありました。

 その時に、メンバー全員が「これは入れたい!」と言ったのが「詩なんか知らないけど」(糸井重里/詩 大日本図書)でした。


「愛されたい」

金がないまま 愛されたい。
ぶおとこなまま 愛されたい。
勉強できないまま 愛されたい。
キャッチャーフライをあげたまま 愛されたい。
嫌われたまま 愛されたい。
ムリだろうか。 ムリだろうか。


 こちらの詩を冒頭に読んだ記憶があります。
6年生の大半はクスっと笑っていましたが、ちょっと泣きそうな顔をしている子もいて。

糸井重里さんは言わずと知れた日本を代表するコピーライター。
もう、言葉の錬金術師…とも言えるお方です。

なのに、最初のページには〈まえがきのかわりに〉と題して、こんな記述が。

「ぼくは どういうものが詩なんだか わかりません。どうやって 詩をつくればいいのかも わかりません。 謙遜しているのでもなく 遠慮しているのでもなく 詩のことのなにかを 知ってはいないのです。(中略。言葉をいしころにみたてた考察がしばらくつづきます)

だれにもわかってもらえなくても じぶんだけが いいなぁと感じたいしころも あります。
それはそれで じぶんだけが だいじにしてやれば それでいいじゃありませんか。
ひとりだけが いいねと言ってくれた いしころは ふたりが いいねと思った いしころです。
そんなふうに いしころを並べるように ぼくは ことばを並べて 詩をつくってきました。たぶん。」


詩はむずかしいなぁ…詩なんてわからないよ~と思っている子どもたちの心にしずかに寄り添ってくれる言葉です。

ちょっと怖そうな犬に近づくときみたいに、手をつないで詩との距離を少しずつ縮めてくれる言葉です。そして、そんな詩が続きます。

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「しんぱいなうんどうかい(Field Day)」

ころんだら どうしよう(ころばないよ)
びりになったら どうしよう(だいじょうぶだよ)
いっとうになったら どうしよう(ならないよ) 

ころばなくて びりじゃなくて
いっとうじゃなくて
ああ ころばなくって びりじゃなくて
いっとうじゃなくて
どうすればいいのさ うんどうかい

ころんだら どうしよう(いたいだろうね)
びりになったら どうしよう(はずかしいよね)
いっとうになったら どうしよう(てれちゃうな)

ころんじゃって びりになって
いっとうになって
ああ ころんじゃって びりになって
いっとうになって
そんなことないよな うんどうかい

ころばなくて びりじゃなくて
いっとうじゃなくて
ああ ころんじゃって びりになって
いっとうになって
どうすればいいのさ うんどうかい
どうすればいいのさ うんどうかい

※こちらの作は矢野顕子さんが曲をつけてCDになっております。


 この詩を最初に読んだときも、なんだか切なくておかしくてニヤーっと笑ってしまいました。

 みんなが観ている運動会という場所で一等にはなりたいけど目立つのはイヤだし、だからといってビリになるのもイヤだ。そんなふうにあれこれ考えながら走ったら、もしかしたら、転んだりするかもしれない。そしたら悪目立ちしちまうぞ!どうすればいいんだ⁈どういう心持ちでいればいいんだ?と、天を仰いでいた幼い頃の自分が思い出されました。

人生の中で自意識Maxの世代ですからねー(笑)。
この詩も、6年生の胸にずんと響いたみたいでした。

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「さんざんなめにあっても!」

みんなから バカにされて
けとばされて 笑われて
ツバをかけられて 石をぶつけられて

さんざんなめに あっても!
さんざんなめに あっても!
へいき じょうぶだから

はらがへりゃ めしをくうし
夜になれば ねむくなる
空が晴れていれば くしゃみふたつもする

さんざんなめに あっても!
さんざんなめに あっても!
へいき いきてるから
(後略)


…なんていう詩もはいっています。
応援歌だよね。 子どもだけじゃなくて、おとなにとっても。
※この作品は忌野清志郎さんの作曲で歌になっております。

それから、わたしたち親が、当時みんなで読み合わせをしていて泣いちゃった詩もあって…。

「ひとつ やくそく」

おやより さきに しんでは いかん
おやより さきに しんでは いかん

なにを いうかと おもうだろうが
そんなこと しるかと おもうだろうが

おやより さきに しんでは いかん
おやより さきに しんでは いかん

いくつも いったら まもれないけど
どうせだったら ひとつだけ

おやより さきに しんでは いかん
おやより さきに しんでは いかん

ほかには なんにも いらないけれど
それだけ ひとつ やくそくだ

おやより さきに しんでは いかん

 今から20年以上も前に刊行された詩集ですが、この時代だからこそ、再読してみたくなりました。

 若者が、年上の人や親や先輩の長い話を聞くのが苦手なのは、きっと、いつの時代にも共通することかもしれません。

でも、一冊の詩集を黙って手渡してあげることなら出来ます。

「コレさぁ、なんか、いいみたいよ~。知らんけど」って…。

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