「英雄色を好む」は今は昔/時事ニュース

「英雄色を好む」――。傑出した偉人は女性遍歴も奔放であるという言い回しだが、とかくコンプライアンスが重視される現代社会では、そんな振る舞いも御法度になりつつある。
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薬局業界最大手のウェルシアホールディングスが、前社長の突然の辞任を発表したのは4月17日。ウェルシアは全国に2500店以上の店舗を展開し、グループの売り上げは1兆円を超える。そのトップの辞任ともなれば、一体何があったのだろうと身構えるのだが、ウェルシアが発表した辞任の理由は、「私生活において不適切な行為があり、当社の信用を傷つけると判断した」とどこか腑に落ちないものだった。
内実を見れば、辞任に先立って、週刊詩が前社長の不倫疑惑をスクープ。前社長が取引先の関係者の女性と逢瀬を重ねる姿を写真付きで報じたため、ウェルシア側が火消しに躍起になったというのが実情だ。
洋の東西を問わず、古くから傑出した人物は1人の女性にとどまらず、女性遍歴は奔放だった。日本で言えば、豊臣秀吉など戦国時代の大名が大勢の側室を持ったことは有名だ。もっともこれは、多くの跡取りを残すため、単なる好色ではなく、乱世を生き抜くために必要な行為でもあったのだろう。現代でも太平洋戦争開戦時の連合艦隊司令長官の山本五十六や、医師の野口英世などは、偉大な功績の他にも、女性を巡る豪快な武勇伝が残されている。ちょっと前までは、自民党の大物議員のY氏や、政権交代の立役者のO氏など、大物政治家の下半身ネタや隠し子疑惑が週刊誌で取り沙汰されていた。
ウェルシアの前社長に話を戻せば、不倫相手は30歳ほど年下の中国人女性。取引先の関係者ということもあり、前社長が業務に絡んで何らかの便宜を図ったと見る向きもあるが、今のところそういった話は伝わってこない。企業イメージを守るためとはいえ、プライベートな男女関係が原因で、辞任しなければならない風潮。一昔前の企業人や政治家からみたら驚きの世相かもしれない。
「今の時代に『英雄色を好む』は通用しませんよ」。ウェルシアホールディングスの今回の判断について、探偵が、ある大手企業で法務を担当する旧知の弁護士に尋ねると、そう一蹴された。この知人によれば、今の時代、セクハラは一発アウト。大人の男女の同意の下であっても、社内不倫が発覚したら、人事上の処遇つまりは、左遷で対応するのが一般的なのだという。企業のトップでなく、平社員でも「色を好む」は敬遠される傾向にあるのだという。話を聞くうちに、「偉人だから色を好むか」「色を好むから偉人なのか」と混乱しつつ、「このままでは上場企業の社長は半分くらい辞任してしまうのではないか」などと、なんとなくさみしい気持ちになった探偵だった。

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