カスタマーサクセス支援の経営者が考えていること

2024年に入り、私がカスタマーサクセスに関するnoteを書き始めた2020年前後とは大きく話が変わってきた。最近の考えていることを共有していきたい。

◾️目先のSaaSマーケットのクラッシュで、カスタマーサクセスに限らず、そもそも全職種において営業強化、コスト削減が強まった。

SaaS企業の2020年前後のVCの期待値は非常に高く、コロナ禍のタイミングで最骨頂を迎えた。ただし、2023年頃からSaaS企業への評価は冷め始めた。つまりSaaS企業への資金流入が減った。
SaaSにお金が流れなくなると、その分、必死に営業をして、コスト削減をするという必要がある。
カスタマーサクセスに限らず、どの職種においても、営業売上を伸ばして、コストを下げるという意識が強まった。
カスタマーサクセスにおいては、営業業務のKPIがセットされる、営業部門への異動、ポストセールスの強化が強まった。
また人数を絞る、ツールにより人件費を削るといった取り組みが強行された。

◾️カスタマーサクセスについては、オンボーディング×ハイタッチのプロセスで1〜2週回せた。次はアダプションやエクスパンション、テックタッチに向き合うフェーズになってきた。

カスタマーサクセスが日本に輸入されたタイミングは、まずはハイタッチで人を貼り付けてトライするところから始まった。
その取り組みの中で、人で直接どんなコミュニケーションをして、どんな段取りで製品を活用してもらうのかのハイタッチなカスタマーサクセスの道筋が言語化された。
多くの企業は人でベタ張りしてカスタマーサクセスを実現する、ということは再現性を持ってできるようになってきた。
その先の工程のエクスパンションや、タッチモデルのデジタル化を考える余裕が出来てきた。

◾️カスタマーサクセスのツールベンダーの機能開発のレベルが上がり、国内事例も増えた。

カスタマーサクセスが日本で流行り出したころ、例えばopenpageは2019年からカスタマーサクセス部門に販売を行なっていたが、正直、機能数が少なく売りにくかった。
そこから月日が立ち、機能がリッチになってきたので、カスタマーサクセスの実運用で導入がされるようになった。
情シス部門で鍛えた製品力でカスタマーサクセス領域に進出したテックタッチ、海外でシェアのあるGainsightの日本進出といった、ツール参入と相次いだ。
これによって国内でカスタマーサクセス活動にツールを使うという事例や慣習ができ始めた。

◾️カスタマーサクセスの理論体系はまとまってきており、あとは自分の事業や組織の課題にどう向き合うかの状況になってきた。

筆書である「実践カスタマーサクセス」、弊社のYouTubeチャンネル「カスタマーサクセスTV」を含めて、カスタマーサクセスの専門用語や理論はすでに全体像が学習できるようになってきた。
データを見ると、実践カスタマーサクセス、カスタマーサクセスTV合わせて数千人単位にリーチしている。
つまり、カスタマーサクセス部門のほとんどの人は、学ぼうと思えば理論体系を学べるし、実際に結構な人数がもう学んでいる状態になってきた。
あとは、一般的な理論では説明や実践がしきれない、自社の事業や組織の環境においてどうカスタマーサクセスを推進するべきなのか、という話題に変わってきた。

◾️大手企業の新規事業におけるカスタマーサクセス投資が行われるようになってきた。(これは昔から安定的にある)

昔から一定の金額はカスタマーサクセスに投資されていたが、今も安定的に大手企業がカスタマーサクセスに予算をつけ続けている。
特に大手企業の中でもIT系のサービスプロダクトに予算がついている。

◾️営業工程の課題解決営業、ソリューション営業にカスタマーサクセス的な思考の応用余地が見えてきた。

私は国内の営業部門の責任者や、登壇者と多く交流をしたが、営業部門においての大手企業、ベンチャー企業どちらにもある課題は、営業のソリューション提案力を高めたいということだ。
契約後の課題解決(ソリューション)を営業段階で養うには、カスタマーサクセスの発想が営業においても必要となる。
城野えんさんが提唱する仮説営業など、仮説を立てて問題解決の筋道を営業フェーズから行うスタイルが流行り出している。
また、バイヤーイネーブルメントと呼ばれる顧客をエンパワーメントする(顧客側にサクセス力を与える)ための情報提供という営業の考え方が米国でトレンドになっている。

◾️カスタマーサクセスとは全く呼んでいないが、openpageを使う企業が増えた。

カスタマーサクセスはやっていないが、営業活動やサービス活動、コンサルティング活動をやっている会社は無数にある。
openpageは、営業部門やコンサルティング部門におけるツール導入が飛躍的に進んだ。顧客の課題解決をするための本物の提案をしていきたいという営業部門。そして顧客との建設的な対話やプロジェクト推進を行なっていきたいコンサルティング部門が相手となる。

BPO会社の業務代行のためのコミュニケーション、デジタルマーケティング会社の顧客支援、大手ITシステム会社の大型営業、商社におけるセールスイネーブルメント、こういった案件にopenpageが入るようになった。

とすると、もはやカスタマーサクセスは概念的なもので、ビジネススキルやビジネスロジックのようなものになっていく。

◾️脱カスタマーサクセスがカスタマーサクセスを広がる

私は、脱カスタマーサクセスをしていくことが、かえってカスタマーサクセスを盛り上げるのに役立つと思っている。
openpageの取引先や関係者には、カスタマーサクセス部門から経営者になる方や、営業側の責任者になる方など変化もあった。

私個人の活動としても、日本の中枢である大手企業の経営者や営業トップと仕事をするケースが増えた。日本企業の経営を支えている職種の多くはやはり営業部門である。その人たちにopenpageを受け入れてもらわなければいけない。
結局、カスタマーサクセスをどう捉えるかは、営業で上り詰めた社長が意思決定する。
大手企業の営業経験豊富な社長の目線からカスタマーサクセスを眺めたときに、どう着地していくかは今後もレポートしていきたい。