多忙であろう明日からの専攻医生活に向けて部屋の掃除をしていたら、2年前、研修医になるタイミングで友人や家族からもらった手紙を発見し心苦しくなってしまった。

「患者さんと向き合って病と闘ってくれるお医者さんになってくださいね」

二年間の研修医を終えた今日、私はそんな医者にはなれていないし、なろうとも思っていない。ごめんなさい。

意外と楽しい研修医生活

社会のこと、経済のこと、倫理のこと、全部考えなければ、この2年はすごく楽しかった。
病気、治療、検査、機械、全てのことが目新しくて全てが勉強だった。何もわからないというのはもちろん不安で嫌にもなったけど、調べたり、教えてもらったり、周りや先人に助けてもらうことができた。全部の経験が身になるというのは幸せなことだった。

医者ってほんとにいい仕事だ。
勉強すればそれが直接仕事に生きるし、誰かの役には立つし、食いっぱぐれない。
人を騙すことも、利潤追求も（平の勤務医なら）、しなくていい。
ほんとうにいい仕事だ、選んで正解だ。

考え始めりゃ悩むこと

しかし、私はついつい社会のこと、経済のこと、倫理のことを考えてしまう。すると急に自分の医療行為が本当に正しいのかわからなる。

高齢化社会に加担することが本当に私のするべきことなのか。
この検査治療を保険でやって国民が負担する意味あるのか。
この人への治療は誰を幸せにするのか、本人は辛いだけじゃないのか。
そもそも私が勝手に他人の幸せを決めるなんて傲慢だ。

正解はなくて、迷いは尽きない。考えないのが一番幸せだとはわかっていても考えてしまう自分の気難しさが腹立たしい。
医学が大好きでバンバン治療やってる目のキマッた先生を見ると、軽蔑する気持ちもありつつも羨ましかった。一通り同じように悩んで考えた結果バンバン楽しく治療してるんだったらもっと羨ましい。

想定範囲外のhuman being

もう一つのお悩みは、私は実はひとが好きではないんじゃないかということだ。

ひとの役に立ちたくて医者を目指したけど、高校生の時の私が言う「ひと」っていうのは友達とか家族みたいなひとしか想定していなかった。
働き出してびっくりした。失礼は承知なんだけど、ホモサピエンスって賢いからホモサピエンスって言うんじゃないの？？と半ば真剣に語源を疑った。

調べてみたら思ったより知能低い人は多いし、病気拗らせるのは認知機能落ちた高齢者や学歴低い人が多いし、地域がらもあるからバイアスはだいぶかかっているだろうけど、話が通じない人が多い。暴言暴力も多々ある。意味不明な受診もある。

せっかく処方しても理解がなくて薬を飲まなかったり、受診しなかったり、生活習慣守れなかったり、嫌な思いをしながら治療「させてもらった」り。なんで私がこんなことせにゃいかんのだと腹が立つ。院内でそういう患者さんにも好かれている先生はみな仏のような顔つきだ。明らかに悟っている。後光が見えそうだ。仏になれず腹を立てているちっさい自分が少し嫌になる。

形成外科、君にきめ　ようかな

医学部卒業後は初期臨床研修という各診療科のローテションを2年間行う。その間に専門にしたい診療科と勤務先の病院を決めなければいけないので結構慌ただしい。

私は学生の頃から産婦人科に進もうと思っていた。赤ちゃん好きだし、手技(手術とか実際に手を動かしてやる検査や治療のこと)したいし、女性の一生に寄り添えるし、と。でも実際働き出すとなんか違うと感じ始めた。胎児より生まれてきた後が好きだし、人の陰部を一生みるのもなんかな、と。働き出してから志望科が変わるのはよくあるらしい。

代替案として思いついたのが形成外科。産婦人科以外に何が好きか考えた時に、救急外来でどんな人でもいいから縫える傷作って来ないかな〜と期待している自分に気づいたから。さらに形成外科は介入する時点で患者さんにとってプラスになることが決まっているし、慢性疾患みたいな長期管理も少ないので上記のおなやみも少なくなります。元美術部で綺麗なもの作るの好きだし。私にぴったりやーんと喜んだはいいものの、その時点で2年目の10月。もう4月からの勤務先を探すには遅い。+海外に住む夢を叶えたいという訳で、各方面に相談し、研修が終わったら半年今の病院で引き続き勤務、半年海外留学、2025年4月から形成外科に進む方針になりました。おかしな経歴ですがこれができるのも医師免許の強みです。

研修医生活は悩みながらも、同期や先輩に恵まれ想像以上に楽しく過ごしました。でも病んだ人の話も聞くので、学生の皆さんにはしっかりと病院を選ぶようおすすめしておきます。

日記が途切れてすみません、忙しかったというよりは自分のマイナスな感情ばかり出てきてしまって美味しくない文章になっちゃうのが嫌だったからだと思います。

4月からの生活や留学についてもちょこちょこ書こうと思います。
つらつらとした文章を読んでいただきありがとうございました。