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ハンドクリームの感想1

私は香水が好きである。が、1日につけられる回数はせいぜい朝と夜の2回まで。明日いきなり隕石とか豆腐にぶつかって死ぬかもしれない身としては、1日2種といわず、気が向くままにいろんな香りを身に着けたい。そんな生き急ぎ野郎の需要に答えてくれるのが、ハンドクリームというアイテムだ。
手が乾燥したとき、手を洗ったとき、なんか手持ち無沙汰なとき、チューブからひとしずく、数分だけのお付き合い。好きな香りを楽しめて、おまけに手も潤うなんて一石二鳥。しかも香水より安い。ありがとうな。

ディプティック ハンドクリーム フルールドゥポー

同じ香りの香水を持っているが、ムスクメインということもあり、つけていることを忘れるくらい儚い。ハンドクリームともなればほぼ無臭なのでは? と思っていたが、これが香水よりしっかり拡散・持続する。一般的なハンドクリームは香りが30分くらいで飛ぶのに対して、ディプティックは(手を洗わなければ)2時間は香りが残る印象。
肝心の香りは、洗いたてのシーツ(干す前)のようにどっしり水気のあるムスクがメインだが、ピンクペッパーが煎りたてポップコーンみたくポンポンはじけて主張してくる。白黒のシックなパッケージにふさわしく、性別を感じさせない香りが素敵。
ただし、チューブ本体がこすれるとすぐ黒ずむ謎素材なので、持ち歩くと200万キロ運転した軽トラみたいな見た目になるのが難点。(アルコールで拭けば綺麗になる)

ディプティック ラグジュアリアス ハンド バーム

ラグジュリアスと言うだけあって、ディプティックの他のハンドクリームより200円高い。この微妙な差は一体……?

●パッケージに「B」としか書いてない
●同じようなパッケージで「G」とか「S」とかだけ書かれた商品がなんかいっぱいあるので、そもそもハンドクリームであることがわからない
●店員さんも「オーローズ」や「ドソン」といった香水派生のハンドクリームは推してくるが、この「B」については特に説明してこない

という様々な不幸が重なりスルーしがちな一品だが、めちゃくちゃめちゃくちゃ本当にいい香りがする。もうハンドクリームはこれが終点でいいんじゃないでしょうか。間違いなく俺的2023年ベストハンドクリーム。
パッケージデザイン、クリームのテクスチャ、保湿機能、香り、全て満点。
値段はまあ高いけど(税込5720円)、これキャップが金属な上に、中がポンプなんだよね。マットなチューブを手に取り、ひんやりとしたキャップを外し、かっちり押せるポンプ、使う分だけチュルリと出る程よい硬さのクリーム……この質感のテーマパーク。「高いハンドクリームを使う」ときの身体的アミューズメント要素が計算し尽くされている。これがラグジュリアスの意味(多分)。

メインノートはアプリコットとトンカビーンとのこと。つけたては濃厚あまあまアプリコットだが、数分後香りが落ち着くと、2月に梅の花がほころぶときの香りに。
小学校の中庭。ひっそり佇む小さな木に、控えめな白い花がぽつぽつと咲いているのを見つけて、背伸びして顔を近づける。桃のように甘く華やかな香りに、自分だけがいち早く春の訪れを知ったような気持ちになる。
大人になると、梅の花が咲いていることに気づく余裕もないけれど、このハンドクリームは小さな春を独り占めしていた小学生の頃の自分に戻れる気がする。梅どころか桜をじっくり見る余裕もないままGW進行に突入する忙しい皆さんにオススメ。

Ko-gu ハンドクリーム イランイラン

コーグのハンドクリームは見た目が全部これ↑なので、複数種買ったときにどれが何の香りなのか一目で判断がつかない。シンプルなのはよろしいんだけど、揃えたときの美しさ・高揚感ってのもコスメには大事なのだわ。香りの頭文字を1文字だけ入れるってのはどうかな?「B」とか「C」とか

イランイランの香りは、コーグの福袋で「愛され」を選んだら出てきた。2023年は愛されたい💕と思ったわけではなく、香りの系統で福袋が(ご褒美/癒され/切替え/愛され)の4テーマに分かれており、「愛され」以外は絶対持ってるやつとかぶるからである。ノンノン! 受け身じゃダメよ。愛さなければ愛されないわ。心の中のゴツめの女性が人差し指を振りながらあま~~い香りのピンク色ペーストを手に揉み込んでくる。南国風のフルーティーミルキーなお花の中に、遠く熱帯雨林が見えるようなかすかなグリーン。

ん? イランイランって黄色いお花だよね。何で液色がピンクなんだ……
コーグのイランイラン香水も別にピンクじゃないし。

おそらくこれは、コーグの安心価格を実現するために過酷な環境で働く労働者が、何かの拍子にうっかり機械に巻き込まれ、一筋の赤い線となって骨も肉も魂もハンドクリームになってしまったという現代のセメント樽なのではないだろうか。ピンク色の愛されペーストを塗るたびに、香水販売職のお給料に思いを馳せる。いやノーズショップはこれでも高いほうだけどね。

Ko-gu ハンドクリーム モス

イランイラン以外も液色がピンクなのか気になって、もう1本購入してしまった。モスは青みがかった白でした。
香りは香水と同じで、レモンラムネのように爽やかな酸味があり、モスらしさは控えめ。しっとり濡れたグリーンがふわふわっと薄緑のヴェールをかける軽やかさ。香水と重ねやすいさっぱり感。

いずれも香りはいいが、ハンドクリームとしてのテクスチャがいただけない。水気が多すぎて、買ったばかりでもビチュブチュと飛び散ることがあってげんなり。てか水のせいで乾燥するのに水塗ってどうするねん。潤い効果は最初から期待してなかったが、しっとり感が全く維持されず、塗って10分で指がカサカサに戻る。
この点はコーグよりお安いロクシタンのほうがテクスチャ・保湿機能ともに断然優れている。まあハンドクリームの王者と比べるのは酷か。

PANPURI AW グローゲッター ハンド&ネイルクリーム

パンピューリは2022年のサロンドパルファンで開幕訪れたブースだった。タイから来た素敵な香りのパフュームオイルを試させていただいたものの、開幕ということで「一通り回ってから検討しよう」と保留している間に予算が尽きた。

その時の負い目を引きずったまま数ヶ月経ったある日、コスメキッチンに「PANPURI」の文字。ハンドクリームが出たのかッ!! 大人気らしく、既にグレープフルーツかレモングラスしか残ってなかったのでピンクのチューブが可愛いグレープフルーツを購入。また会えたね……👨‍❤‍💋‍👨💕💕
ディプティックと同じポンプ式が好印象。グレープフルーツにありがちな尖った酸味が一切なく、ロータスのお陰でまろやかリゾートな印象。
今までロータス系の香りは「神聖な瓜」って感じでそんなに好きじゃなかったけど、本場タイの力にかかればピンク! 祭! フルーツとスパ! って感じでロータスの南国ハッピーな側面が光っててよし。

BAUM アロマティック ハンドクリーム 3

パッケージの主張強いなあ…
本当は白いチューブの方を買いたかったけど、アットコに存在しなかったので仕方なくこの実家の天井みたいなやつを購入。白チューブは一見シンプルなんだけど木目のエンボスがついてて超おしゃれでいいんですよね。なんで茶色くしちゃったの……怒怒怒
BAUM製品はパッケージにカリモクの廃材を利用しているということで、どれも木のパーツが用いられているのが印象的。何度も気になっては購入に至らず……を繰り返している理由としては、価格にカリモク代が含まれていてなんか高く感じることと、手持ちの化粧品の中でパケが目立ちすぎるのでラインで揃えないと気が済まなくなる点。
頭がお花畑なので、選んだ香りはもちろん3。森にひっそりと咲く飾らないローズが、ハンドクリームらしからぬ繊細さ。しかしバウムの香りは3種全部「森」なので公式サイトの説明もほとんど間違い探しなんだよな。メニューが醤油しかないクセの強いラーメン屋みたいでちょっと面白い。

ロクシタン リボンアルル ハンドクリーム

ハンドクリームの原点ロクシタン。まだ香水にすらハマってない頃に、友達が出産祝いでプレゼントしてくれた。当時は身の回りにローズ製品(というか香りもの)が一切なかったので、殺風景な部屋に突然可憐なブーケを活けたようで、生活そのものが明るくなった。本当に。
ローズとすみれの鮮やかな酸味、炭酸のようにはじけるピンクペッパー……この香りを嗅ぐと、ハンドクリームをもらった当時のこと、生まれたばかりの赤ん坊の小さなおむつの温もりや、手を洗うときの水の温度まで思い出す。そして、ひとり親としてやっていくことの不安、家族が増えたことの楽しさ、未来への無限の可能性への期待、そんな諸々の感情も。
子供が3歳になった今、ようやく使い終わりそう。廃盤なのが残念。

というわけで、ハンドクリームの世界も奥が深いなあ~と思いました。こうして比較してみると、ロクシタンのクリームの硬さってマジで完成されてるよね。
あとジョーマローンのハンドクリームでレッドローズ出てくれないかな……ボディクレームを買え? それはそう。
なんか一気にハンドクリームが増えて机の上が卒塔婆工場みたいになっちゃったけど、可愛いからよしとします。
2023年は愛されたい…

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