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ブックレビュー「レンズ光学の泉 -結像の新たな地平を拓く-」(2)

(レビュアー:光学技術者bot 、職業:会社員、専門分野:光学技術)

 『レンズ光学の泉』のモニターに応募して当選しレビューを書くことになった光学技術者bot(Xアカウント:@kougaku_gijutsu)と申します。私はハンドル名の通り光学技術者として働く会社員で、結像光学系を主としたレンズの光学設計と試作、評価を生業としています。十数年前に今の仕事に就いた際に幾何光学と収差論の基礎は学びましたが、波動光学は熱心に学んでこなかったため苦手です。本書を読みたいと考えた動機は、結像と収差について自身の好奇心を満たし、得られた知識によって光学設計ソフトが出力した結果の妥当性の判断の精度を上げ、光学設計の見通しをよくして業務の効率化を図りたいと考えたためでした。
 本書はレンズによる結像についての理解を深めること、実際の光学設計において役立つ知識を提供することを目的として書かれています。結像について数式を用いて非常に丁寧な説明をしていますが、決して初学者向けではありません。正弦条件から展開される第1章は幾何光学と収差論について、点像分布から始まる第2章は波動光学について基礎的な知識を身に付けてから読むことをおすすめします。内容には半導体露光装置や検査装置の光学系に関わるものが含まれ、特に第3章は半導体露光装置で問題となる現象について説明した章です。結像の限界を目指す半導体露光装置や顕微鏡の光学系に関わる方、興味がある方は読んで得るものが多いのではないかと思います。他に特徴的なのは、これまで私が目を通してきた書籍には書かれていなかったトピックがいくつも記載されていることです。第1章の1.2 正弦条件と瞳結像の収差、1.4 シャインプルーフの条件と3次元無収差条件は、私がこれまでの光学設計を経験した中で疑問に思っていた事柄で、本書で説明を読めたことは僥倖でした。
 通読するのに時間がかかり、特に第2章と第3章は私の知識では数式を一つずつ追いながら理解することはできませんでした。同じ著者の『レンズ光学入門』を読んでからもう一度挑戦するつもりです。本書の前書きにも書かれていましたが、母国語で学んでこそ理解が深まると私も考えています。母国語で書かれたレンズ光学に関する本が1冊書棚に増えたことを幸せに思っています。

(以上はモニターによるレビューです。レビュワー名は敬称略です)

 『レンズ光学の泉』は以下のリンク先よりご購入や試し読みができます。よかったらご覧くださいね。


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