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〈ゲーム感想〉【グノーシア】AIに心を揺さぶられて…


絶対に傑作だ

(ネタバレあり)
参加者同士の会話による推理が特徴のパーティゲーム『人狼ゲーム』をベースにした、一人で遊べるSF人狼アドベンチャーゲーム、それが『グノーシア』。舞台は架空の宇宙空間。異星体グノースに侵食された「グノーシア」が宇宙船の乗員たちの中に紛れ込み、空間転移の隙に乗じて乗員たちを一人一人消していく。それを食い止めるため乗員たちは話し合いによって誰が「グノーシア」かを推理し、速やかにコールドスリープさせる必要があった。このように人狼ゲームの特徴をうまくSFの世界観に落とし込んだ作品である。その物語の完成度の高さや、毎度毎度配役がランダムで変化することによって繰り返し遊べるのはもちろん、登場するキャラクター一人一人も魅力で今なお根強い人気を誇っている。2019年PSVitaで発売後、翌年NintendoSwitchに移植。そしてその2年後にはついにPC版も発売されて、PS5、Xboxとその広がりは粘菌如くもはやとどまるところを知らない勢いである。PC版の発売前後にはキャラクターグッズの販売や各種イベントが催されてファンたちからも大好評。後からそのイベントの開催を知ったおぽのは、その場に居合わすことができず非常に悔しい思いをしたという。しかし――

………
……

分かりました?

いつものように感想を書いていきたいと思います。

この作品の感想を書くのは4周半ぐらい遅れている気もしますが、何度エンディングに到達しても、ふとした時にまた遊んでしまうのがこの『グノーシア』です。



世界観 − 疑うな。

『人狼ゲーム』とは、参加者が村人陣営と人狼陣営にわかれて議論を繰り返しながら自分たちの陣営の勝利条件を満たす遊びです。人狼は村人たちを壊滅させること、村人は壊滅するよりも早く参加者の中に隠れた人狼を見つけ出すことが目的です。

細かいルールはありますが、基本は上記。(世の中的には大きく広まっているので説明は不要だったかもしれませんね。)

さて、そんな人狼をベースにしているという『グノーシア』の話に戻りましょう。

一人で遊べる人狼と書いた通り、この作品はテキストベースで進行しながら、AI相手に推理をしたり嘘をついたり誰かと協力したり裏切ったりしながら自分の目的の達成を目指すアドベンチャーゲームです。

AIが相手?何だ楽勝じゃん。

いやそれが、楽じゃないんですよ。

敵側だと少数が多数を倒すんだから常に劣勢だよなぁ。

人間同士でやる人狼ゲームと同じように、仮に自分一人が答えにたどり着いてても、決して自分が勝てるわけでは無いんです。

議論の余地なく自分がコールドスリープさせられてゲームから排除されたり、グノーシアに襲われて消滅したりしまうこともしばしば。

勝つためには陰に隠れながらAIと生き延びるか、自分を疑うAIを説得する必要があります。

(説得、と言っても定型文のコマンドを選択していくだけなのでゲームの操作としては簡単です。)


ゲーム性 − 畏れるな。

『グノーシア』にはRPG要素が盛り込まれており、プレイヤー自身のパラメータが成長することで徐々にAIとの議論が思い通りになったり、襲撃への予防線が増えていったりします。

そのパラメータは6つ。

「カリスマ」「直感」「ロジック」
「かわいげ」「演技力」「ステルス」

…どこがRPG…??説明しましょう。

なんとステータスの振り直しもできるぞ!

攻撃的な役割をするのが、上の三つ。
「カリスマ」はなんかこいつの話は説得力あるな…とAIが感化され自分の主張を支持してくれます。
「直感」は嘘をついている人を見破ることができます。が、話が下手だと誰も信じてくれません。
「ロジック」は論理的な判断を下すスキルが使えるようになり、AIが有無を言わさず味方になります。

下三つが防御的なステータスです。
「かわいげ」は疑われてもなんとなくAIが庇ってくれやすくなります。愛嬌は大事。
「演技力」は自分の嘘が見抜かれにくくなります。が、バレる人にはバレます。
「ステルス」は発言しても、敵陣営から脅威とみなされにくくなり襲撃される確率が減ります。

なるほどじゃあ勝つためには、攻撃的なステータスを上げればいいんだ!

とはいかないのが『グノーシア』。

あいつは嘘ツキだから凍らせようぜ!ってべらべらべらべら会話コマンドを使っていると、味方のはずのキャラからピシャリと一言、

「うるさい」

っていわれて、ものすごく疑われます。

ご、ごめんなさい…。

普段はやさしいキャラから嗜められるとより凹みます。

どうやら発言によるAIからの注目度というか脅威度のようなものが隠れて存在しているようで、AI相手と言えども、ある程度空気を読んだ議論を展開する必要があるのです。人の話はちゃんと聞こう。

しかも、AIのキャラクターたちは一部を除いて、結構個人の好き嫌いで切り捨てようとしてきます。キャラと自分の親密度みたいなものもあるそうで、当然、仲が良くないと「なんとなくイヤ」と雑な理由(のようなもの)でプレイヤーが最初の追放者になることも。

Sha-Ming was ejected.

画面内にいるキャラクターはAIだというに心の機微、のようなものが感じられる。こういうところもロールプレイの要素に一役買っています。

勝つためにはまずは自分が生き残ることを最優先する必要があります。そのためには嫌われてそうなら一生懸命ゴマをすり、襲ったり凍らせる価値のない小物になりきるのが生存戦略。


キャラクター − そして知れ。

そんなキャラクターたち。特徴的な線と鮮やかな色で描かれたキャラクターたちと、何度も何度も繰り返される惨劇の中、この物語の結末に向かって共に進んでいきます。

一人ひとりの性格がわかるようになってくると、議論もだいぶやりやすくなります。

誰々は抱き込みやすいとか、こいつはさっさと排除したほうが吉とか、初日はとりあえず〇〇で、とか。

個人的な話をすると、ククルシカにはだいぶ苦しめられました。

一切言葉を発せないのにブラックジョークを好みブラックな立ち振る舞いをする。

「あいつ!絶対あいつなんだよ!!」

と周りをどんなに説得しようとしても、逆に疑われる始末。

各キャラクターにはプレイヤーと同じようにステータスが割り振られており、物語が進むことによってその値がどんどん増えていきます。

件のククルシカは、そう。「かわいげ」が最初から高くて、周りがなかなかこちらの味方をしてくれません。

このように「ステータス」がそれぞれのキャラクターを表現する「性格」となり、その「性格」を掴むことでだんだんと自分の思ったように遊びやすくなっていきます。

「かわいげ」がなく尖った発言ばかりしてるせいで序盤からいなくなってしまうラキオも、中盤辺りまで生き残っていると、持ち前の高い「ロジック」でプレイヤーですら気づけない敵味方をはっきりさせてくれます。

これ、本気で褒めてる表現なんだぜ。

あまりにもロジカル過ぎて「するってぇとぉ…あれ?ラキオ自身が敵ってことになるけど合ってる…?」という盤面もあるのがなんとも趣深い。

他にも最初の頃は特に何もしてないのにこっちを嫌ってくるレムナンとか、演技力高すぎるせいで白くても警戒してしまうSQとか、そもそもこの人に目をつけられたら終わりだ…という夕里子様とか。

ちなみにおぽのは反撃された時の効果音恐怖症です。
\フォンッ/

舌戦はAIと行っているはずなのに、一癖も二癖もあるキャラのお陰で常に薄氷の上の心持ちです。

議論パートに加えて、イベントパートも盛り沢山。

誰かに話を聞く度にシリアスな世界観が展開されますが、基本的にコメディ世界なので次々に起こるスチャラカイベントは『グノーシア』を語るうえで外せません。

トンチキ騒動は大体この人が原因。

キャラクターたち一人ひとりを「知る」ことがこのゲームの攻略法であり、物語のキーワードです。


難しそう…と思っても大丈夫。上で述べた通り、ステータスを上昇させれば思いのままです。レベルを上げてた結果、んな無茶苦茶な…と思われかねないパワープレイも遂行できてしまいます。

パッション強めでオッケー。

おぽのは人狼の経験がほぼほぼないので程よい難易度に感じてましたが、経験者からすると「“人狼として”は簡単」とのこと。

むしろ推理を楽しむだけではなく、舞台の雰囲気すら楽しみながら、キャラを好きになって、好き勝手なロールプレイをしたほうがよっぽど楽しい作品だと語られます。

「この状況から言うと間違いなく自分が敵だけど、それを指摘できるやつらはすでにこの場から消したから、とりあえずここまで同盟組んでたあいつを敵に仕立て上げて勝利といこう。」

そんなゲス思考も許されるのが『グノーシア』です。(ツメが甘くて逆転負けもよくあります。)

お前のこと信じてたのに…!といった感情の起伏が度々起こるこの没入感、なかなか味わえません。

よし、土下座の用意でもするかな。

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