ゲームエイト社が非ゲーム領域にも挑戦する理由
株式会社ゲームエイト代表取締役社長の西尾です。
本日(2019年7月12日付け)のGunosyのIR上にて、Clabelという新規事業の発表を行いました。「ゲーム領域以外のこともやるんだ!」という声がたくさん聞こえて来そうなので、この場で、事業の構想や会社の今後について考えていることを展開したいと思います。
インターネットの住人歴15年ながら、人生初のブログです。よろしくおねがいします。
事業売却を経て、大義なくスタートした新会社
先の新規事業を説明するには創業からの経緯を語らざるにはいられません。
ゲームエイト社は2014年に株式会社Labitというスタートアップの子会社として誕生しました。
当時Labit社で運営していた「すごい時間割」というプロダクトの自社継続が難しいと判断し、リクルートホールディングスのグループ企業に事業を買って頂き、会社には売却益はあるものの事業が空っぽ。というタイミングでした。
株主の方にリターンをお返ししたい一心で会社継続を選択するも、次の方針がなかなか決まらず、事業をやっている訳ではないのに日々少しずつお金はなくなっていき、早くなんか事業を作らないとやばい!という焦りでいっぱいでした。
そんななか、周りを見渡すと同世代の起業家たちがメディア(キュレーションが多かった)でうまく行っていたのを横目に、羨ましくなり自分もメディアをやることにしました。
いろいろ検討した結果ジャンルはゲームに決めました。理由はスマブラ64が昔からずっと好きだったし、なんか伸ばせそうだなと。(スマホの普及でメディア需要が伸びている×スマホゲーム自体の需要が伸びているというマーケットの大局考慮も一応ちゃんとありました)
Labit創業社長と事業の作り方に対する方針の違いや、事業の性質上ゲーム好きをたくさん集める必要がこともあり、拠点も分けた別会社(子会社)として設立することになりました。game◯◯でドメインを総当たり的に調べて、空いていたgame8.jpに決定。設立登記も8月だったのでそのまま社名もゲームエイトにしました。
そんなこんなで、なし崩し的にそのときの気分でいろいろ決めていったため、ゲームエイト社は特に世の中にをこうしていきたいみたいな大義がなくスタートしていきました。
アルバイト中心で組織を作り、火消しに追われた創業期
直近は中途メンバーも増えて多様化傾向にありますが、ゲームエイト社は正社員の大部分が元アルバイトという特殊な文化の会社です。
創業からしばらくずっとアルバイト中心の会社でした。その理由は2つ。
①. 創業事業モデルがコンテンツの内製であること
②. スタートアップの子会社として創業したためたため、適切にインセンティブを用意できず創業時期のコアメンバーを集めきれなかったこと
とくに②の影響は大きく、事業のスケールに対してとてもボトルネックになっていました。先行されていた競合のGamewithさんは経営者がシリアル(表現まちがってたらごめんなさい)だったり、VCの方と二人三脚でどんどんラウンドを進め大人プレイで組織拡大をしているのを横目にしていたので、とても悔しい思いをしていました。
今思えば、他にもやり方はあったかもしれませんが当時の僕の視野・視座ではこの構図を脱却することができませんでした。
そのため、本来であれば社員や創業メンバーが担わなければならないポジションのロールを無理やりアルバイトに権限を渡して行きました。もちろん、それを指導する人すらいません。
するとどうでしょう。ふつうに全くうまく行きませんw(むしろ仕事増えてる!おわた) ただ、これしか道はないと当時は思っていたので、ひたすら任せ続け、燃えたら火を消すの繰り返しでした。
僕自身が代表兼、唯一の社内エンジニアでもあったこともあり、プロダクト開発しながら火消しが大変すぎたのか、この時の細かい記憶が全然ありません。
バイトでも適切に機会やロールを提供すれば成長できる
彼らに任せ続けた結果、課題はありつつロールを全うできるようになってきました。いまでは、
- 年間数億の売上を支えるセールスのトップ
- 複数新規事業の責任者
- 各部署のMGR〜部長
- 事業をリードしていくエンジニア
などの元々はアルバイトのライターさんとして応募してくれたメンバーが、この例以外にもたくさん正社員として成長しています。
ここで得た学びとしては、適切に事業機会やロールを提供することができれば、どんなスキル・バッググラウンドの人でも成長できるということ。
ゲームの攻略アルバイトライターという募集の性質上、元々何かしらの強いスキルや実績を持っているわけではなく、むしろ強烈にゲームを愛してしまったが故に、その他の人生の選択肢を狭める結果となってしまった子たちが多く、採用含めて沢山の人と出会ってきました。
彼らの成長を見ている過程で、この会社を通じて選択肢が狭くなってしまった子たちの可能性をゲームエイトの事業を通じて成長機会を提供し、可能性を広げるということをやっていきたいという思いが強くなりました。
それからは、再現性もって彼らのような成長を生み出せるかについて、日々考えるようになりました。
成長とは、付加価値の高い仕事に集中していた時間の総量に比例するという仮説が自分のなかにあったので、たとえば付加価値の高い仕事に集中してもらう為には執筆の管理画面にどのような機能を追加すればよいかなど、社内のライターさんも1ユーザーとして定義してプロダクトの改善を常に行ってきました。
また、事業のスケールに応じて他職種で人員が必要になったときは、ライター内で適正がありそうな子から抜擢するサイクルも意識しており、今後も強化していきたいと考えています。
アルバイトから社員として積極的に抜擢&戦力化していくということに関しては、採用市場は完全にブルーオーシャンですし、経営戦略上でいう兵站の補給効率の最大化にも繋がります。
これは思いだけでなく、成長戦略に合致した筋が通っているものであり、我々の競争力の源泉になりえると確信しています。
もちろん会社なので常に事業成長とのトレードオフを求められる側面もあり、すべてのメンバーに平等にチャンスをお渡しできているわけではないので、少しでもたくさんのメンバーに機会を渡せるよう継続的にチャレンジしていきたい。
サイバーエージェントさんは新卒入社だった方が、経営の幹部だったり事業のあらゆる重要分野で活躍されており、時代の変化に強い組織になっていると理解しています。ゲームエイトでは入り口のアプローチは違えど、アルバイトからスタートしたメンバー達が中心となって時代に合わせた新しい価値を生み出していける会社にしていきたいと思っています。
こうして、特に大義があったわけではないゲームエイト社は内向きから進む方向が見えてきたのでありました。
組織の進化 〜体制の強化と中途採用〜
「鶏が先か、卵が先か」という因果性のジレンマではありますが、先述の理想とする会社に近づくためには、常に新しい事業機会やポジションを生み出し続けなければならず、それを実行するにはしっかりと導ける存在が必要です。
社会人経験がまったくないスタッフに今までのOJTスタイルでは成長の再現性や、大きくなっていく会社のガバナンス観点からも課題が残ります。また、すでに一定のポジションまで成長している彼らのラーニング角度を上げるためにも、外部からの幹部職登用の必要性を感じはじめました。
そのため、ここ1年ちょっと前から中途採用を開始し、事業牽引を通じて彼らの引き上げを行うという価値観に共感していただける5名の部長〜役員の方にJOINしていただきました。(採用がんばった)
他社にはない特殊な文化であるがゆえに幾分難易度は高いと思いますが、事業と人の側面にたって矛盾を解決していくというのがマネジメントの本質だと私は理解しているので、これを通じて幹部メンバー自身の成長と自己実現につながればと願っています。
幹部採用がある程度進捗したタイミングで、次にメンバーの中途採用にも踏み切りました。今まであったアルバイト出身プロパーわっしょい文化と矛盾してしまうかもしれませんが、実施した理由は、文化を優先するあまり、事業としてのドライバー部分に投資できない会社は市場原理的に残れないと思っているからです。
必要なトレードオフを受け入れ、適合していくために、絶妙なバランスの意思決定を行うことが経営者としての大切な仕事の一つだと認識しています。
中途で来ていただいた様々なバックグラウンドのメンバーには、アルバイト・契約社員が多い会社の特性上、社のリーダーとして、経験やスキルを存分に発揮していただき、チームに新しい風を生み出してほしい。プロパーメンバーは彼らから今までなかった知見を汲み取り互いに成長をし、自分の市場価値を高め続けてほしいと思っています。機会は必ず会社が提供するので。
この1年で急激に多様化した社内に際して、社員総会では「ダイバーシティ」をコンセプトに相互理解を深められるようなコンテンツが準備しました。この会で意図がどの程度伝わったかはわからないけどビンゴ大会めっちゃ豪華でおもしろかった。
今後も事業構造の変化や、正社員にあがる人、中途で入る人、いろんな関係性の中で、会社の文化は少しずつ勝手に変化します。元々あった会社の文化はすべてが良いものであるとは限らないので、大切にしたい残したいものを抽出して、言語化、会社のバリューに落とすというプロセスを通じてブレないものを今年度中に行動指針として作り上げる予定です。
新規事業の立ち上げ
ある程度の規模まで大きくなったベンチャーは漏れず直面するかと思います。我々の市場には先行企業がいたので2番手戦略を取るべく、あまり新しいことに挑戦してきませんでした。(したくても状況的にずっとできなかったorz)
国内ゲームのマーケットの成熟やゲーム性の変化のを見据えて次なる成長を作る必要がありました。それを見据えて今まで採用強化を行ってきましたが、組織としての厚みが以前よりは出てきたこのタイミングでいくつか新規事業の準備に取り掛かることにしました。
基本路線の考え方としては、ゲームというプロダクト・産業のライフサイクルに対して元々我々が提供していた価値の点と自社が持つケーパビリティの掛け算でいい感じに参入角度をきめて検証&goみたいな一般的なやつです。
非ゲーム領域の新規事業
ゲームエイト社は多い月には100人以上からのアルバイトの応募が来ます。選考の結果、採用まで至るのは1〜3名ほど。
常に意識していた、「メンバーに成長機会を提供し、彼らの可能性を広げる」というのは物理的に一緒に働くことになったメンバーのみだったので、当然これを採用でご縁がなかった方には適用できません。
募集しているアルバイトライターさんの要件は週5でフルに働けることを前提としているので、必然的にフリーターの方であったりすることが多いです。彼らと創業から相当な人数に向かい合って来た中で、分かって来たことがありました。
それは、彼らの将来に対してのビジョンややりたいことが不透明だったり、なかったり、仮にWantがあったとしてもそれを実現する道筋がわからないのという人が多いということ。加えて、学校選びや職選びなど、人生の大切な意思決定を行う上でリテラシーが低くそれは所属しているコミュニティに依存するということ。(ex. 某職業に就きたくてその道の専門学校に行ってみたけど、その職業に就くためのハードルが高くほとんどの人が卒業してもフリーターになってしまうという構図を知らないetc...)
これらの課題をすこしでも解消することができれば、ゲームエイト社と直接ご縁のなかったより多くの方の可能性を広げることに繋がるという仮説があり、新規事業の一つとしてClabelというライフスタイル領域のプロダクト(詳細は後述)を構想するに至りました。
人生の攻略サイトClabel
CLABEL(くらべる)は、進学、就職など人生の大切な意思決定をお助けする人生の攻略サイトです。上場企業が提出する「有価証券報告書」や厚生労働省の「国民生活基礎調査」のような公開情報であるデータを論拠に、よりたくさんの方が理解しやすい形で情報を提供していきます。
ゲームの攻略ならぬ、人生の攻略サイトをコンセプトにClabelというプロダクトをリリースしました。
ゲームの攻略サイト(攻略本も含む)は、キャラクターや武器の強さのようなデータベースや進め方などの解説を軸にゲームをプレイするユーザーのお困りごとを解決するものです。
ご利用したことがある方はわかると思いますが、次はここに挑戦しよう!など、純粋にゲームのプレイがワクワクするんですよね。Clabelは人生の攻略サイトというアプローチを通じて、広い意味で自分の人生に対しての向上心を歓喜するようなメディアにしていきたいと思っています。
就きたい職業、行きたい会社、なりたい自分、夢が見つかり、それを実現するための学校選びにワクワクする。そんな世界観をClabelでは実現したい🔥
初期の手法としては、サイト説明のとおり上場企業が提出する「有価証券報告書」や厚生労働省の「国民生活基礎調査」のような公開情報であるデータを論拠に、よりたくさんの方が理解しやすい形で情報を提供していきます。
公開されているけれど、普段人がアクセスをなかなかできない分断されているデータ群を一つの思想に基づいて、蓄積、正規化、メディア化していることがコアの価値。
カテゴリ的には、進学・人材・金融領域。世の中にあるいまのメディアは比較的目的意識がはっきりした人向けが多いので、初期フェーズは職種や会社の年収情報など誰もが一度は調べたことのあるようなカジュアルな切り口で展開していき、進路選択などの意思決定のきっかけとなるプロダクトまで昇華させていくことができれば、より多くの方の可能性を広げることに繋がると確信しています。
現状は、データ収集の精度も表現手法にも課題があり、理想とは程遠い状態ではありますが、磨き続けてより正しい精度を目指し、次のフェーズなどには、口コミやその職業につく方に直接インタビューすることを通じてさらなる信頼性向上をはかっていきます。
収益化についての構想はここでは省略しますが、メディアとしてADNWなどの一般的な手法で最低限のマネタイズをしつつ、時間がかかってでも学校のキャリア教育とかが大きく変わるようなデカいことをやりたい。やる。
なぜそれをゲームエイト社がやるのか?
上記と被る部分もありますが以下4点
1. メディア立ち上げのケーパビリティ
ゲーム攻略は通常のメディアと違い、ゲームタイトルごとのサイトの集合体です。我々は創業から少なくとも数百あまりのゲームタイトル数を取り扱ってきているので、メディアの立ち上げ回数は国内屈指であることは間違いありません。マーケットが変われば専門性などの観点で一定のハードルがありますが、立ち上げに対するノウハウはどの領域にも活かせるものであると確信しています。
2. より多くの方の可能性を広げることに繋がる
会社のミッション的な。すでに前章にて説明しているので省略。
3. ゲーム領域以外にも事業機会を
創業して5年、平均年齢当時22〜23歳だった当時のメンバーは20台後半に差し掛かってきています。ゲーム好きがきっかけで入社はしていますが、時間経過や事業に触れて自身が成長して行った結果、ゲーム以外のマーケットに対しても挑戦したいと考える方が一定数おります。この会社は、そんな彼らにも納得いってもらえる挑戦を提供する箱にしたいのでジャンルに縛られたくない。
4. 非連続成長の新たな土台に
広義での教育・人材・金融マーケットです。この領域の基幹となるメディアブランドが確立できれば今後あらゆる角度で事業を挑戦する上での足がかりになることを狙っています。ゲーム領域に加えてこの領域でも非連続な成長を作れる土台になることを目指し、今のゲームエイトクラスの事業規模が最低もう一つできるようなイメージをしています。
最後に
以上がゲームエイト社が非ゲーム領域に挑戦する理由です。ほかにも事業はいくつか仕込んでおりますが、それについてはまた良きタイミングで。
ゲームエイト社は、現在所属しているGunosy社のグループ内では利益を生み出すキャッシュカウになるというよりは、独自のバリューで企業価値を高め続ける存在を目指して、人や事業に投資していきたい。
そのための新規事業の一つが、非ゲーム領域のClabelなのです!
▼ 一緒に事業へと昇華していただけるエンジニアを募集しています。
本投稿では文脈に沿わなかったので触れられませんでしたが、
- その他の新規事業ってなにやるの?
- 創業のLabit社子会社からGunosyにExit(?)したねらい
- 幹部職採用短期間でどうやったの?
- 西尾個人のキャリア感
などなど、またどこかで書くかもしれないし書かないかもしれない。
直接聞いて頂ければお話します☕
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