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「ヴンダーカンマー」あるいは「驚異の部屋」について1

人はいつの時代も、希少性の高いものに惹かれるようだ。
かくいう私もコレクター気質というには粗末なものだが、次から次へと本やら服やらVHSやらレコードやらを収集してしまい、常に部屋にものが溢れており、ミニマリスト生活とは程遠い状態だ。

今回ご紹介するヴンダーカンマーは、そんな人間の蒐集欲を極限までに高め、煮詰めたような空間である。

ヴンダーカンマー」Wunderkammer とは、ルネサンスおよびバロック期(15〜16世紀)にヨーロッパで蒐集家や学者たちが、珍しい、希少な、驚異的なとされるさまざまな物品を展示した蒐集部屋のことである。

ヴンダーカンマーとはドイツ語で、その直訳が「驚異の部屋」であることは、読者諸君には周知の通りかと思う。

ヴンダーカンマーは現代の博物館の先駆けであり、コレクターの興味や富、社会的な地位の象徴としての役割も果たしていた。
これらの部屋は知識の源とともに、驚き、好奇心、探究心を刺激する場所だったようだ。

ヴンダーカンマーのディスプレイ法

密集した展示


ヴンダーカンマーの部屋は通常、壁に棚やケースを設け、物品を密集して展示するスタイルであった。
これにより、多くの異なる物品を一つの場所で見ることができ、観察者はさまざまな驚きに出会うことができた。

対称的な配置


展示物は対称的に配置され、バランスの取れたデザインが善しとされた。
この対称性は、美的な視覚効果を生み出し、部屋全体が秩序立って見える効果があったという。

テーマ性の設定

一部のヴンダーカンマーでは、特定のテーマに基づいて展示物がグループ化された。

たとえば、自然のもの、人工のもの、異国のものなど、テーマごとにエリアを設けることで、観察者に物品のつながりや背後にあるストーリーを伝えた。

ラベルと説明


展示物には詳細な説明やラベルが付けられ、観察者にそれぞれの物品の由来や興味深い情報を提供した。これは博物学や分類学の誕生へつながっていく。

カーテン・隠しドア

カーテンや隠しドアで覆われた部分があり、展示物が一度にすべて見られないようにされ、探検の要素を加えたものもあったという。

これらのディスプレイ方法は、好奇心を刺激し、知識と驚きを提供するために工夫されたもので、個々のコレクターやその時代の嗜好に応じて異なるアプローチが取られた。

こうした蒐集物は科学的な研究や自然界の研究の発展に重要な役割を果たし、芸術、科学、そして非日常の間に境界が曖昧になる場所として、当時の知識欲や発見の精神を反映している。

ヴンダーカンマーかく語りき

近代科学が発達するにつれ、ヴンダーカンマーは魔術的・迷信めいたもの捉えられるようになり廃れていった。

しかし、ヴンダーカンマーは万物をパノラマ的に捉え、世界をミクロとマクロの視点から一つの部屋に構築する小宇宙的存在であり、単なるコレクションとは一線を画していた。

この蒐集部屋を目にするたびに私は、人々がまだ神を信じ、海を超えた大陸には巨人がいると信じられていた時代に、極めて真摯な思いで目の前にある万物を理解しようとした人間の飽くなき知識欲に触れた気がして、愛おしくてたまらなくなる。。

この記事は続きます!

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