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道徳プラン〈いじめが教えてくれたこと〉

●はじめに
 今日は,小学校で先生をしている坪郷正徳さんの思い出話を紹介します。このお話は,〈いじめ〉についての体験談です。坪郷さんは,この〈いじめ〉の経験を「思い出したくない思い出」だと言っています。きっと,それを文章にすることは,とても勇気のいることだったでしょう。それでも,それを書いてまで伝えたいことがあったのだと思います。
 これを読んだみなさんは,どんなことを思うのでしょう。 最後に,考えたことや感想などを教えてくれるとうれしいです。



●思い出したくない思い出

 僕が中学生だったときのお話です。僕は,中学1年生のときに,クラスの多くの人から〈いじめ〉られていました。男の子からも女 の子からもです。
 男子からは,突然背中を叩かれたり,蹴られたりします。また,男子からも女子からも〈きしょい〉〈きもい〉という言葉をいっぱい言われました。
 毎日毎日,学校にいくのが怖かったです。 「今日は殴られないだろか?」「ひどいことを言われないだろうか?」そんな不安を抱える朝が一番つらかったのを覚えています。
 

 彼は,小学校の時には,いじめられたりはしなかったのだそうです。しかし,原因もよく分からず,中学1年生から突然,いじめられる対象になってしまったのだと言います。

問題1
 いじめられるようになってしまった坪郷さんは,このような,とても つらい日々の中で,どうしたでしょう?

ア 先生に相談した
イ 家の人に相談した
ウ 別のクラスの友だちに相談した
エ 誰にも言わずに我慢した
オ そのほか(         )







 僕はそれから,結局誰にも相談することができずに,ずっと我慢して過ごしました。そんなにつらかったのに,なぜでしょう。
(問題1の答えは,エ)

 自分に問いかけてみても,なぜだかはっきりとはわかりません。でも、本当につらいことというのは,人に知られたくないと思うものなのかもしれません。
 それに,いじめられている時には,自分に自信がもてないものです。いじめられている自分が悪い,いじめられているのははずかしいことなのだと思いこんでしまっていたようにも思います。

 中心になっていじめてくるのは,ほんの数人でした。でもそれよりも,クラスのみんながそれを見て笑ったり,楽しそうにみていることの方がつらかったことを覚えています。クラスのみんなに〈認められていない〉と感じることは,たたかれたり悪口を言われたりすることと同じように,つらくて悲しいことでした。

●みじめな気持ち

 確かに,中学校のときの思い出は,僕にとって,いまでも胸が苦しくなる,思い出したくない思い出です。
 でも,もっと思い出したくない思い出があります。

問題2
 このいじめられた思い出よりも,もっと思い出したくない思い出とは何だったのでしょう?

ア 先生にも,いじめられていたこと
イ 自分の親にも,いじめられていたこと
ウ 高校生になっても,いじめられたこと
エ 小学生の時は,逆に,いじめていたこと
オ そのほか(            )









 それは,小学校のとき,自分がクラスの女の子にいじめをしていたことです。自分がいじめをしたこともあったし,人がいじめをしているのを楽しそうにみていたこともありました。
 そうです。僕は小学校のとき〈いじめる〉側の人間だったのです。何人かの男の子で,1人の女の子を叩いたり,悪口を言ったりしたことも,はっきりと覚えています。その時の相手の子の気持ち…。いじめているときは全くわかりませんでした。
(問題2の答えは,エ)

 〈いじめる〉側の人からすると,〈いじめる理由〉があるのかもしれません。その理由は,「見た目が人と違う」とか「みんなと違うクセがある」とか,何か悪い印象だったり,いろいろでしょう。
 そういう理由があることで,一番大切な〈人の心〉がみえなくなってしまうことがあるのです。僕は,女の子をいじめているとき,女の子がどんな気持ちをしているのか,ちっとも考えていませんでした。考えることができなかったのです。
 でも,中学校で自分が逆の立場になったとき,初めていじめ られる人の気持ちを想像できるようになりました。

「ああ,おれは,こんなにひどいことをあの子にしていたのか…」

と考えると,その時の自分の行動や記憶をなくしてしまいたいくらい,つらくてみじめな気持ちになります。でも,どうすることもできないのです。

 中学校でいじめられていた坪郷さんは,小学校の時は,いじめる側の人間だったのです。でも,自分がいじめられるまで,いじめていた子の気持ちはわからなかったのだと言います。


問題3
 さて,中学校1年生から,突然いじめられるようになった坪郷さんでしたが,このいじめは,いつまで続いたでしょう?

ア 中学1年の終わりまで
イ 中学2年の終わりまで
ウ 中学3年の終わりまで
エ 高校生になっても
オ そのほか(      )





●かっこいい人

 話を中学生のころに戻します。僕の中学1年生の1年間は,本当にまっくらなものでした。そのころ,僕がいじめられていたのは,他のクラスの人たちもみんな知っていました。だから僕は,2年生になってクラス替えがあっても,「きっといじめは続くだろうなぁ」と思っていました。

 しかし,2年生になると,そのいじめは,ぱったりとなくなったのです。 (問題3の答えは,ア)

 クラス替えをしてすぐの頃は,やっぱりぎこちない空気を感じていました。なんといっても自分はいじめられていたのですから,自信がもてませんでした。クラスのみんなが自分のことをどんなふうに思っているのかが怖くてしかたがありませんでした。

 それに,〈いじめられている子と仲良くする〉ということはとても 難しいことのように思えました。

「そんなことをしたら,自分までいじめられたり仲間はずれにされるかもしれない」。

 誰だってそんなふうに考えると思っていたからです。

 僕が中学2年生のとき,みんなの中に入れたのには,理由がありました。

 さて,中学2年生になったとき,坪郷さんがクラスのみんなの中に入っていけたのには,あるきっかけがありました。それはクラスの数人が坪郷さんにかけてくれた言葉でした。坪郷さんはその言葉をきっかけに,失っていた自信を取り戻していくことができたのだと言います。

問題4
 坪郷さんをいじめから救ってくれた人たちの言葉とは,どんなものだったでしょう?

ア 普通のあいさつ(「おはよう」とか「よろしく」など)
イ 自分を認めてくれた言葉(「おまえ,ホントはいいやつだな」など)
ウ いじめ否定の言葉(「おれは,こんなくだらないことはしないよ」など)
エ 気持ちをわかってくれた言葉( 「おれも,いじめられたことあるよ」など)
オ そのほか(          )


※坪郷さんを救ってくれた「かっこいい人」の言葉とは?
※このあと,感動のお話でしめくくられています。
※すぐに印刷して使用できる「授業プラン」は,お話の最後にダウンロードできます。

出典:『生きる知恵が身に付く道徳プラン集』(仮説社)


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