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日本はシンガポールにはなれない

シンガポールに来て早2年。この国の歴史や経済、文化について学んできた。政府の強力なリーダーシップと政治や経済の動きの早いこと、トライ&エラーで突き進んでいくこと。

「日本もシンガポールのようになればいいのに」と思った。

でも日本とシンガポールは違いすぎて、日本はシンガポールのマネなどできないのだ。その違いとは

・国土面積
・人口
・政治体制
・歴史
・民族構成

2018年6月の米朝首脳会談のホストを務めたシンガポール。ホスト国としての成功した理由もここにある。

監視カメラを国中に設置できるのも、国土面積が小さいから。空港から街の中心部、大統領官邸、ホテルも非常に近い。道路を封鎖することも、警備を厳重にすることも、短い距離や時間で済む。

人口が少ないので、ときに大胆な所得税の減額や国民を優遇する政策をすばやく実施できる。

都市国家だから、日本と違って国、都道府県、市町村といった区別がなく、首都圏と地方の格差や条例の違いや手続きのわずらわしさがない。

独立して52年しか経っておらず、シンガポール島自体の開発が始まってから数えても200年。過去の歴史やしがらみが少ない。

中華系が大多数を占めていても、マレーシア系、インド系が対等であり、「その他」の民族も合わせて「4つで一つのシンガポール」という考えが徹底されている。

罰則が厳しく、デモの規制があったり、言論の自由がないと言われているが、そもそも民族同士の紛争が起らないようにと定められたルールであり、国民を縛りつけようとして制定されたルールではない。

一方で、国土面積が少なく資源はほとんどない。食物の多くも輸入に頼っているし、水資源も隣のマレーシアから購入している。近隣諸国を始め、周りの国々と対等かつ友好な関係を築かないと、シンガポールという国は破滅するし、そのことへの危機感を常に持っているのである。

水資源については、他国に100%依存するのはリスクが高いので、あちこちに貯水池を作り、水の再生利用施設をつくり、今では海洋水を淡水にする研究を進めている。

人口が少ないということは、国内の需要が少ないということでもあり、外貨を稼ぐことが国益に必要である。安全であること、インフラが整っていること、資源は少なくても自然(緑)は多く、蚊も駆除しているし、交通渋滞も少なく、交通費は安くすることで、海外企業を多く誘致してきた。

米朝首脳会談には、ホスト国としての成功が国益を高めることを皆が理解し、12億円もの費用を負担したし、失敗することが国にとって大きなダメージになるという国の運命がかかった一大イベントであった。

国民も両首脳を友好的に出迎え、ナショナルサービスと呼ばれる警察・消防・軍隊も陸から海から、国と両首脳の安全のために尽くした。何よりも短い期間で準備ができたというのも、日頃から危機感をもって訓練をしている賜である。

1965年に独立を果たしたときに、この小国のリーダーは自国の弱みを十分に認識し、弱いところを克服し、さらに強みに変えてきた。シンガポールの目指すところは非常にわかりやすい。外国人として暮らしていると、国民が優遇されていると感じる。日本も、外国からの観光客や留学生ではなく、国民を第一に考えた政治を行ってほしい。


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