見出し画像

劇場公開を迎えて

電気海月のインシデントプロデューサーの近藤です。長文です。

ある程度節目にはちゃんとブログを書くようにしたいですね。その時しか感じられないことがけっこうあると思うので。

さてさて、5月10日よりついにハッカー映画『電気海月のインシデント』が劇場上映スタートしました。

関係者試写会も一つの節目ではあったんですがそこからもさらに本編は編集していて本当に今回ようやく完成となりました。(完全版完成が5/1とかです。直前!笑)

映倫による映画チェックも5/7だったり、最終版のデータの確認も直前だったりで、いざ本当に映画館で最後まで上映されるまでは予断を許さない状況ではありました。

何か一つトラブルが起きると最悪劇場上映が飛ぶ可能性がある、という。

それはそれは気が気じゃないというか、一体いつになったら解放されるのか、という気分でした(笑)

いろいろな人の協力のおかげで何とか完成させることが出来た、これは何回も言っていますが本当にリアルなところです。

これを書いているのは5/11(土)の28:00くらいで、劇場上映が二日間終わった後です。

上映が始まった後の今の気持ちを何個か書き残しておこうと思います。

初日舞台挨拶は超満員でびっくりした

はい、5/10(金)の夜の部の舞台挨拶付き上映、なんと超満員でした。

スクリーンは140席。そこそこ大きいスクリーンです。

当日券が売り切れ入場出来ずに泣く泣くお断りさせていただいたお客さんもいました。

劇場側と舞台挨拶の日はどのスクリーンにするかを支配人と僕で打ち合わせをして、割と攻めの気持ちでこのスクリーンにしてもらいました。

もちろん満席にしたいとは思っていました。
しかし来場者数の相場として舞台挨拶系のイベントの時に6割くらい入ればまぁまぁイイ方という風にも聞いていて、最低そこは突破しとけばカッコはつくかな、とも思っていました。

満席に出来ればニュース性もあるしイイな、という感じです。

約1週間前くらいからチケット発売が開始となり、いろいろ告知をしながらチケットの売れ行きを見ていました。

ソッコーで満席になったらイイな〜とか思ってました。(クラファンの時の勢いのように笑)

まぁしかしそんな甘いものでも無く、数日前で予約は約半数くらいだったかと思います。

ちょっと伸び悩んでるな〜、と思いながら、これは満席は無理かな...
まぁ7割くらい埋まればイイかな?とかちょっと弱腰になってたのも正直なところです。
しかし支配人の方と打ち合わせをまたしている時に
「満席、行きましょう!」
と言われ、7割じゃダメか...と思いました(笑)

まぁいけるだけいこう、と思いながらいろいろな人にラストスパートで声をかけつつ、関係者のみんなにも協力をお願いしていきました。

舞台挨拶当日、残席を見てみたらかなり空席が減っていてビックリしました。
そして夜の部の上映が始まる頃には支配人の方から
「もうほぼ席がないんですが予備席も出しますか?」
と言われさらに席をプラスし、
さらには劇場で当日券が売り切れで困っているというお客さんも出始めたので関係者用に確保しておいた席(僕とかが座るとこ)も一般に解放して、それでも入れない方が出るまでになりました。

当日劇場内で鑑賞予定だったキャストや関係者の人も、それならたくさんの人に見てもらいたいということで席を譲ってもらったりしてほとんどのキャストは控え室待機になりました(笑)

僕も控え室で待機したり、映写室の窓から満員の劇場をのぞいたりしていました。

そして本編終了後は劇場に入って前に立って舞台挨拶をさせていただいたんですが、140席満席の劇場の迫力はなかなかのものがありました。

バンド「Xanadu」の解散LIVEでは500人くらいのお客さんの前にギターを持って立っていたわけですが、また自分の作品を持ってたくさんの人間の前に立てるのは感慨深いものがあります。

そして当たり前ですが、客席には僕の知らない人がかなりの数いるわけです。

この作品はもう関係者だけのものじゃないんだ、と思いました。

この超満員には配給会社の方や支配人も驚いてくれて、電クラにさらに期待してくれたようです。

配給や劇場というのは作品がヒットすることを信じてリスクを取ってくれているわけです。(この辺はビジネスのシステムのお話になりますが)

電気海月のインシデントを信じて関わってくれた配給や劇場の方にも少し恩返しが出来そうです。

様々なコメントがもらえて実感が湧く

今までは関係者の方しか見てなくて、もう正直作品が面白いかどうかとかが分からなくってるんですよね(笑)

関係者だと客観的に見れないので。

ようやく作品初見のお客さんの声が聞こえる、という感じです。(試写会はそれに近かった)

いろいろな方に感想コメントをもらったりしていると本当に楽しんでもらえた感じが伝わってきて(確証は無いけど)ここでようやくこの1年が報われたような気がしました。

面白かったです、とか
完成度が高かった、とか
役者の演技がイイ、とか
いろいろ言ってもらいながら
「やっぱそうだよね?だよね?」
と自分を納得させている感じでした(笑)

一般のお客さんから褒めてもらえると、ようやく自信になってきます。

そしてたくさんの人の時間を無駄にしなくて良かった...と安心したりもします(笑)

この二日間でいろいろな人の声を聞けて、とても心が楽になりました。
見た人が面白くなさそうだったら気まずくてしょうがないし、消えてぇ〜って思っちゃうと思います(笑)

見にきてくれた人の2時間〜、関わってくれた人のこの1年、これが報われるかどうかは作品の出来次第です。

たぶんみんなに損はさせないものになったんじゃないかと。

すでに2回見にきてくれた人や、SNSで様々な感想を書いてくれる人や、ストーリーを深掘りして楽しんでくれている人や、伝えたかったことがしっかり伝わっている人などが居て、心に届いてる気がしています。

完成版を劇場で初鑑賞、改めて凄い作品だと実感

すごく手前味噌な感想ではありますが電クラはすごい作品だと思いました。

二日目の夜の部でようやく完成版の本編を大きな劇場で見ることが出来ました。

ある程度親元を離れた子供を見るような感覚で本編を通して楽しむことがようやく出来たわけですが、冷静に見ていくとやっぱり萱野監督を始めとする電クラ制作陣は凄いなと思い自分でもちょっと引いたくらいです(笑)

今作は脚本撮影編集は全て萱野くんです。
もちろん全て僕も口出ししたりはしていますがほぼお任せなわけですが、よくこんなん作れるなと改めて思いました。

脚本もこんな複雑なのよく作り上げてきたなと思うし、セリフ一つ一つをとってもセンスの塊だし、説明的なセリフやカットが全然無いのに全体として破綻せずに全て筋が通るように設計されているし、どうやったらこんなにピースをはめることが出来るんだろうと人ごとのように関心しました(笑)

劇場で見てみるとカメラワークも計算しつくされている(ように見える)気がします。(真相は僕には分からない...)

萱野くんは絵コンテを書かない!ので現場で全てアドリブで、または脳内での完成図に沿ってカット割やカメラワークを決めています。

適当にそれっぽい映像をずっと撮ってるのかと思いきや全てを揃えると完成しているのでもはやマジックなんじゃないかと。

そしてもちろん僕ももう見るのは何回目だ、っていうくらい見てはいるんですけどようやく分かるセリフの意味とかもあってなんて手が凝ってるんだ!と今日も驚かされていました。

このセリフはここのシーンに掛かっているのか、とか今ちょっと映ったカットでその間のストーリーが説明が付くようになってるのか、とか映ってないけどこの間にこういうことがあったからこのシーンが実現しているのか、とか。

萱野くんは
「映画は引き算の美学だ」
と言っていました。

蛇足になったりテンポが悪くなったりチープになったりしないように、破綻しないギリギリまでいろいろなものを引き算して電クラは作られていることが良く分かります。

正直ストーリーや演出はかなり難し目な部分はありますが、たぶんそこを全て分かりやすくするとこの映画の良さが死にかねないんだと思います。

納得、という感じですね。

なので本編以外の部分でもっと電クラのことが分かるように脚本を公開していたりオンラインサロンをやっていたりします。

Blu-rayにはコメンタリーでたくさん解説を追加しようと思っています。

電クラに対する解像度が上がれば上がるほど楽しめること間違いないです。

また音・音楽やCGやハッキング関連のシーンなどもかなりレベルが高く、制作陣がめちゃくちゃ本気でこの作品にコミットしてくれたんだなと分かります。

すご、って思いながら見ました(笑)

そして最後に役者たちも本当に素晴らしいです。

オーディションを300人以上やって選んだ方や、それでもまだ見つからずに引っ張ってきた役の方々もいました。

見た人によく言われるのが
「2を作って欲しい」
「スピンオフをいろいろなキャラで作って欲しい」
らへんです。

冬吾とライチの過去の話、とか想像するだけでもワクワクしますね。

かなり脇役でもキャラが濃い役揃いでどの人物でもスピンオフが撮れそうです(笑)
全てのキャラが愛すべきキャラです。

演技の上手い下手、というか"味"だと思います。(もちろんみんな上手かった)

これは萱野くんの指導による部分もかなり大きいんですが、キャストの自然だけどしっかり味もありチープでは無いフックのある演技によって電気海月のインシデントの世界観が成り立っているのを実感しました。

同じ脚本でも役者や演技が違ったら全く別の作品になってしまうのは間違いありません。
何度見ても、本編が終わったら冬吾とライチの世界観から現実に戻るのが寂しく感じてしまいます。

派手な感動シーンとかドラマティックな展開とかは一切無いのにいつの間にかその世界に入り込んでいる、そんな不思議な作品です。

もう一回見たいという声が多いのは、ストーリーをもっとしっかり理解したいというのはもちろんあると思いますが作品のキャラクターにまた会いたい、その空気の中に居たい、と思う人が多いからなんじゃないかなと思います。

他の作品を撮ったことが無いので分かりませんが、電クラはキャストはマジで当たりです。
この辺はキャスティングの腕前もかなりありますが、それプラス運良くハマった、という部分もあるような気がしています。

作品として自分が気に入るものが出来たので本当に作って良かったなと思っています。

途中でリアルにプロジェクトが頓挫してバラしになるかも、という時があったんですが、その時にやる!って言って良かったなと思います。

あの時リスクを怖がってプロジェクトを止めていたら電クラは世に生まれなかったので。

過去の俺グッジョブ!、って思いました(笑)


劇場上映開始しての気持ちはこんな感じです。

ついに作品が自分の手元から離れていく感覚があります。

親元を離れて巣立っていく。
サポートは全力でしていくけど、外の世界でたくましく生きてくれ、そしてたくさんの人に愛されるんだよ、と。

電気海月のインシデントは製作委員会のものでも、監督のものでも、役者のものでも、スタッフのものでもなく見た全ての人のものになっていきます。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?