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やっぱり「運命の人」だったけど、もうないんだなと思った話

人生を振り返って
結構キーになった「運命の人」みたいな、
濃い時間を過ごした相手が、
長い独身にはありがちだ。

私も多分に漏れず「運命の人」がいて、
一緒にいると何をしていても本当に楽しくて、
何も考えないでずっといられたし、
笑いも疑問も怒りもキャッチボールしてた。
ただ一緒にいるだけなのに、
いろんな人から「お似合いだ」と言われた。

友達からいつしかそれ以上の仲になった。
お互い恋人がいたり、いなかったりで、
追いかけられたり、追いかけたり、
すれ違った末に、最後は私がフラれて、
ほどなく、彼が結婚したことを人づてに聞いた。

あれから10年弱。
先日、ずいぶん久しぶりに「同窓会」という形で再会した。

遅れてやってきた彼は、髪が薄くなってて、
元々見た目は三枚目タイプだったけど、
歳をとったんだなと思った。
でも不思議なほどに嫌悪感がなかった。
「どうやって話してたっけ」と探りながら態度をとっていた。

過去の話になるが、
彼は結婚後、何度か連絡をよこしてきたのだけど、
私はその度に「そんなコロッと笑えるような過去じゃない、現在進行形で傷ついている」と撥ね退けた。

あの頃は、私だけ辛くて、彼は新婚でハッピーに暮らして、私のことなんか忘れていくのが本当に心底面白くなくて、そんなブラックなことを考える自分に自己嫌悪で、彼の顔も声も話題も、1ミリも触れたくなかった。

他の男と恋愛もしたし、仕事も辞めて、家も引っ越して、いろんな変化の中で少しずつ私も前に進んできた。

みんなの前でどう振る舞ってたっけ?
昔はあまりに仲が良すぎて、兄妹みたいになってたけど、
久しぶりに会ったらどうすればいいんだろう。
既婚者の異性という壁ができてしまって、どうすればいいんだろう。

そんなことを考えながら、みんなに訝しまれないように話した。
よりにもよって端っこの席で向かい合わせだった。
彼も私も若い頃は元気で明るいタイプだったから、
10年経ってどんな振る舞いをするのが正解なのかわからなかった。

最後は酔っ払って眠かったのか、彼は全然喋らなかった。
私はもう目を向けられなかった。
なんとなく自分が「やっぱりこの人だったんだな」って思いそうだったから。

思ったところで、その先にあるのは
不倫か、離婚待ちか、忘却か、上書きか、
辛いものしかないから。

家に帰ってから、
彼とのメールを読み返してしまった。

便利な時代のせいで、
もう何年も前のメールがつい昨日のことみたいに出てくる。
でもそこで感動したのは自分の言葉だった。

まっすぐに、潔く、テメェの道はテメェで決めて、貫く強さを持ってください。
誰かを傷つけていることに、もっと敏感になってください。
最低すぎる負の跡を、相手の心の奥深いところに残したんです。自分がしたことはそれほどのことです。せめて、その愚かさを知った分だけ、これからは決してそれを人に味わわせないようにすればいいと思います。
人はこうやって、誰かを傷つけたり泣いたりしながら徳を積むんだと思います。おかげさまで人として大きくなりました。
もう絶対許さないけど、真っ当な生き方を教えてあげた私に一生感謝してればいいです。

素晴らしいじゃないか、過去の私。
20代そこそこでこんな素晴らしいことを言えたなんて。
そう。自分なりのプライドを持って、自分を守ってたんだ。

ここで相手の心変わりを思うなど、
自分で決めたことを、貫く強さはどこへゆく。

私は、私の、美学を持つのだ。
たとえ本当に、彼が「運命の人」だったとしても。

彼に言われた中でも堪えたのが
「お前は強いな。俺がいなくてもきっと生きていける。あっち(現妻)は、なんていうか、死んじゃいそうで(笑)」

そう言われて、「じゃあ死にましょうか、私!」って怒って言ったのを鮮烈に覚えている。そういうところが強いんだよな、と今なら笑えるけど。

昨日は同窓会の思い出話がいっぱいで、いろんなことを思い出しちゃったけど、終わりはさておき、あの頃は本当に楽しかった。

恋も仕事も、毎日一生懸命で、毎日笑って泣いて、頭がフル回転だった。

でもそれは今もそうだ。
だからきっと、また10年後に今を振り返ったら、笑えるんだと思う。

彼とはすれ違ったけど、やっぱり彼は最低だけど、
ちっともかっこよくないし、もう彼との未来もないけど、
それでも不思議としっくりきてしまう彼の存在は
やっぱり「運命の人」なんだと思う。

「運命の人」と一緒にならない物語を、
これから作っていけばいい。
もしくは、違う「運命の人」が現れるかもしれない。

人生にはなんども分かれ道があるし、
人は欠点だらけのものだから。

もしも昨日、彼が「俺、間違えたな」って思ってたら、
いい気味だなって笑える。
私が独身なのが、まるで私は正解を貫いてるみたいに感じるでしょう。

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