公吏の雑駁

地方自治に関することをダラダラと書いています。   貴見お見込みのとおり。

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最近の記事

柔道整復に係る療養費の差押え

健康保険法の規定による「保険医療機関」は、「病院・診療所又は薬局」とされているので(健保63③)、柔道整復師は「保険医療機関」には該当しない。 したがって、柔道整復師が行う診療行為は、健康保険法の規定による「療養の給付」には該当せず、診療報酬も発生しない。 これに代わるものとして、被保険者に対して「療養費」が支給される。 条文に明らかなとおり、保険者の支給決定によって被保険者が療養費の受給権を獲得することになるので、療養費に係る債権債務の関係は保険者と被保険者の間で生じるこ

    • 相続登記の義務化と過料

      4月1日から相続登記の申請が義務化される。 https://houmukyoku.moj.go.jp/tokyo/page000275.html 太字が改正部分だが、一見して明らかなとおり、表題登記に関する過料規定は従来から置かれていて、そこに相続登記を追加した格好になっている。 しかしながら、現状、未登記の建物はそこら中にゴロゴロしているのが実態だ。建物を新築した場合でも、担保権設定が不要であれば登記を行う必要性が薄いし、わざわざ金と手間をかけてまで…という気持ちは分から

      • 泉房穂氏の暴言を振り返る

        前明石市長泉房穂氏の発言が批判を集めている。 氏に対する評価は両論あるようだが、自らのパワハラ発言で辞任に追い込まれた過去があることは事実。だが、その発言すら「市民を思ってのこと」「悪いのは何もしなかった職員の方」と擁護するような風潮があるように思う。 ここでは、職員の視点から、擁護派の意見「職員が何もしなかった」について検証してみることとする。 1.「7年間なんもしてない」発言以下、泉氏の発言内容は、AERA.dotのページから引用させていただいた。 上記発言は、協議

        • 議員の同行と個人情報

          田舎の市役所には、「俺様は議員様だ!偉いんだぞ!」みたいな顔をして窓口にやってくる市議というのが少なからずいる。とりわけ、支持者と一緒に来庁したりすると、いいところを見せようという意識が働くのか、無駄に居丈高になることが多いように思う。 税務担当課の場合、扱っている情報が情報なので、いかに相手がお偉い議員様であろうが開示できない情報はあるわけだが、こういう手合いは自分が特別扱いされないと腹を立てるので実に始末が悪い。 1.名張市のケース三重県名張市の木平秀樹議員(日本維新の

        柔道整復に係る療養費の差押え

          明渡義務の代執行

          収用裁決→行政代執行ってセットで語られることが多いと思うけど、混乱しがちな部分もあるので一度整理しておく。 熊本県では「人が住む家では初」の行政代執行が行われたらしい。→リンク 「人が住む」以上は占有している人間がいるわけで、収用の対象となった事業を行うためには、占有を解かなければならない。 一方で、行政代執行の対象となる義務は「他人が代わってなすことのできる行為に限る(=代替的作為義務)」とされているところ(行政代執行法第2条)、占有の移転は当人しかなすことのできない義

          明渡義務の代執行

          延滞金の減免

          富田林市の介護保険料延滞金減免要綱が、なかなか攻めてきている。 「まとめて納付で延滞金免除」って、なんか特典みたいだし、「まとめて」というのも要件としては抽象的にすぎると思う(滞納分一括、とは言ってないからね)。「事業の継続又は生活の維持が困難になると認められる場合」とは項目立てが分かれているので、経済状況は勘案されず、単に「まとめて」納付すればその分の延滞金を全額免除している、と読めてしまう。 1 延滞金の根拠以上のとおり介護保険料の延滞金については滞納処分の対象となる

          延滞金の減免

          事業収入の差押え

          給与の差押えについては前回触れたとおり。 判決文にもあるとおり、「実質的に差押えを禁止された財産自体を差し押さえることを意図して差押処分を行」うことは違法と考えられるが、差押禁止財産として規定されていない財産についてはどう考えるべきだろうか。 1 債権差押えの原則「全額を差し押さえる必要がないと認めるとき」は、第三債務者の資力が十分であると認められるとき等を指し、一般には預貯金等を想定しているとされている。 給与・年金のように差押禁止額について規定が置かれている債権以外

          事業収入の差押え

          脱法的な差押えはやめましょう

          先日以下のようなポストをしたのは、実際職場でこのような話を聞いたから。 簡単に現時点での考えをまとめておこうと思う。 1 脱法的な差押え滞納処分による差押えについて、初めて「脱法的」との指摘をした裁判例は、前橋地判平成30年1月31日である(たぶん)。 行政処分である差押えについて、「脱法的」という言葉を使用するのは、かなり強い表現であると言ってよい。が、確かに振込日に給与を全額取立てというのはやり過ぎだと思う。この判決においては、違法性認定の要件として「給与自体を差し

          脱法的な差押えはやめましょう