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社会人的・自主ゼミのすゝめ

学生時代の友人と3人で、ゲーム理論に関する自主ゼミを開催することになった。これまで個人で発信を続けてきた日曜経済学者noteとして、今後は共同運営マガジンによるコラボレーションも活用し、知的探求の発信を強化していく。自主ゼミを通じて学んだ内容もさることながら、自主ゼミ運営自体の記録・発信にも重きを置きたいと考えており、本共同運営マガジン「社会人的・自主ゼミのすゝめ」ではまさに後者に焦点を当てた。本マガジンで発信するコンテンツは、

  • 全く異なる業界で働く社会人3人が、

  • 互いに忙しい仕事や家庭の合間を縫って、

  • 全員が全くの門外漢であるゲーム理論を学ぶための、

  • 自主ゼミ運営に奮闘する記録

である。なぜ我々がこの取り組みを始めたのか、自主ゼミをどのように運営し、どこでつまずき、何を考え、どんなアウトプットを出すのか。この知的冒険を通じて発信したい「学び続ける楽しさと工夫」が我々と読者の皆様との交流の輪を広げ、何らかの役に立ち、また刺激に繋がれば幸いである。


開催の経緯

3人は学生時代からの友人で、日頃から連絡を取り合い数ヵ月に一度は飲みに行く間柄である。私「日曜経済学者」が昨年一念発起しミクロ経済学を学び始め本noteをスタートし、連載中の価格理論の執筆も後半に差し掛かった昨年末、次の題材にゲーム理論や組織の経済学を学ぼうとしていたところ、別のメンバーもちょうどゲーム理論への関心が高まっており、それなら合流して学んだ方が面白いのではないか、ということで年始からとんとん拍子で自主ゼミ開催の運びとなった。

各自それぞれが異なる業界で競争的な環境に身を置きつつ、資格やコンペなどで必要なスキルの磨き込みも行っているメンバーである。そんな我々が敢えて自主ゼミを運営するモチベーションはどこにあるのか。

私なりの解釈だが、一言で言えば「好奇心の薪をくべ続ける」ことの重要性を3人が感じているためではないだろうか。逆説的だが、敢えて実践を度外視した抽象思考に触れることで、根源的な知的好奇心・探求心が刺激され、消耗的な実践的日常を走り続ける原動力になる、と考える。一方でこの手の取り組みは「重要度は高いが緊急度は低い」類の投資であり、3人でコストとリスクを分散しリターンを共有する戦略は、一定理にかなっているのではないだろうか。また、私個人としては経営/投資の現場と理論の往復を通じた「学知の発見」という野心的テーマも大きなモチベーションである。

この点は、各自が自分の言葉で語るのが非常に面白いと思う次第である。

運営メンバー

saw

今回の自主ゼミの発起人。平日はITスタートアップのエンジニア、週末は山にいる。自主ゼミ運営を通して、Notion等を活用したPM力は流石の一言。

ゲーミングインコ

日曜経済学者

米系投資銀行を経て投資ファンドに勤務しながら「組織/経営と投資の学知の探求」をテーマにnoteを執筆中。ゲーム理論の学びを通じ、組織や経営の観点からも探求を試みたい。

題材

自主ゼミは輪講形式とし、題材として岡田章「ゲーム理論 (第3版)」を選定した。学部上級・大学院初級を対象とした教科書であり、初学者にはいささかハードルが高いものの、各自の興味関心分野への発展的議論の土台として、取り扱うテーマの網羅性と情報量の観点から申し分ない優れた書籍と判断し、本書の選定に至った。その他、神取Levittなどのミクロ経済学の副読本も各自で購入している。

ゲーム理論という題材は非常に応用範囲の広い分野であり、習熟してくるにつれメンバーそれぞれの異業種知見がアウトプットに多角的な視点や深みを与えてくれるような相乗効果も期待できる、魅力的なテーマと言えよう。

効果的な運営のポイント

以下では、効果的な自主ゼミを運営するにあたって押さえておくべきポイントを、我々が実施したキックオフでの論点ベースで列挙する。我々自身がこれから運営していくため、随時見直してブラッシュアップする予定であり、コメントでご質問やアドバイスなど頂ければ幸いである。

①自主ゼミの目的は何か?

最初に議論したのは「そもそも3人が自主ゼミに参加する目的は何か?」であった。各者各様にブレストし、学ぶ意義などに関する抽象的な目的と、具体的/定量的な目標や結果に大別してまとめていった。チーム全体の大目的と主要アウトプットは以下の通りとなった。

  • ゲーム理論の学習を通して、知的好奇心を満たす深い学びをする

  • noteの共同運営マガジンを発行し、自主ゼミのアウトプットや運営記録を発信する

これらに続き、各自が下位レイヤーとして思い描く「学会で意味のある質問をすること」「LinkedInに書けるくらいの知識をつけること」「その場しのぎではない知識の習得を目指すこと」などのゴールを列挙していった。

②どのように情報管理していくか?

情報共有・管理コストの低減は、自主ゼミの成功に直結する「運営の持続可能性」を高める上でクリティカルな課題と認識している。我々は汎用的なプロジェクトマネジメントツールとしてNotionを選択した。

Notionとはメモやタスク管理、ドキュメント管理、データベースなどのプロジェクトを管理する上で便利なツールを1つにまとめた「オールインワンワークスペース」と呼ばれるアプリである。Notion上に⓪チームで定めた開催ルールを表示させ、①発表担当や期日をタスクとしてメンバーに割り振り、②アウトプットもNotion上のドキュメントベースで事前に回覧して当日はそれに基づきプレゼンし、更に③ドキュメント上に議事録をとりアウトプットを完成させ、①´ 次回のタスク割り振りを行う、…というサイクルを想定している。ファイルのやり取りが発生する場合もNotion上にリンクを貼り、Google Formの共有フォルダと連携させるため、基本的にはNotionをベースに一元管理するという発想で、情報を取りまとめている。

チームにNotionを活用したプロジェクトマネジメントに長けたメンバーがいるため、自主ゼミ運営を題材にしたNotion解説noteの執筆も面白いかもしれない。

Notionを活用した管理イメージ

③どのくらいの頻度で開催するか?

業種や働き方、家庭の状況もバラバラな社会人にとり、開催頻度の擦り合わせは非常に難しい。平日夜か週末か、月に何度かを決める必要がある。初期的にはメンバーの都合に合わせて平日夜と週末の月2回をベースに、次月の会のみ日程を擦り合わせ、以後は開催の都度次々月以降の日程を擦り合わせる方針としている。

④どこで開催するか?

頻度により自ずと開催形式も決まり、我々の場合はほぼオンライン一択となった。Notion上にGoogle Meetをセットし固定の部屋に入室できるようにした。キックオフはリアルで行ったが、開催地の確保や移動時間の制約が大きく、リアル開催メインの線は薄くなったというのがコンセンサスだった。一方、四半期に一回程度はリアルに集まり議論することとした。

⑤当日はどのように進めるか?

ゼミのクオリティを上げる原則として「毎回各自が必ず1回はプレゼンをする」というルールを設けた。これにより当日は30分×3名+Wrap-upと運営確認を合わせて1回の所要時間を100-120分程度とした。同様に議事録作成者も持ち回りで担当し、1回で各自が発表と議事録作成を担当する座組とした。

テーマによっては発表者を絞ったり、時間に傾斜をつけたりと工夫の余地がある論点かとは思うが、現時点では各自毎回発表を重視している。

⑥成果物は何か?

大きくは、定例アウトプットはNotionドキュメントース、蓄積されたアウトプットの対外公表はnoteベースで行うこととした。

例えば「2章 戦略形ゲーム」では、2.1~2.7の7節を各自に割り振り、2章の1つのドキュメントに共同でアウトプットを記載する。一つの章が全て書きあがるなど一区切りついた段階で、note用にサマライズし公開する。

noteもNotionもLaTexやプログラミング言語用フォーマットなどが充実しており、比較的互換性高く移植できると踏んでいるが、細かな様式に差異があるように見受けられるため、noteとNotionの連携を高めて頂きたい、というのがnote/Notion運営者への要望である。

⑦どのように発表を分担するか?

メンバー全員がゲーム理論の門外漢であるため、割り振りは難しい問題であった。外形的に分類しつつ、一旦はボリューム的に公平に分担するのがフェアとの発想の下、次のようなステップで割り振りを決めていった。

  • 大きく「基礎的な内容」と「応用的な内容」に大別すべく、章の2分を試みた。2-8章がより基礎的な非協力ゲーム理論を取り扱っていることを突き止め、まずは8章まで感想することを目標に定めた

  • まずは1ヵ月(=ゼミ2回)で1章を終わらせる、という前提で、節ベースで割り振った。分量の均一性と毎回全員発表のルールをベースに、例えば2章(2.1~2.7節)であれば前半に2.1/2.2担当、2.3担当、2.4担当で3人を割り振り、後半で2.5担当、2.6担当、2.7担当で3人を割り振った

  • 本書は大きく基礎理論の説明に始まり、最後の節で応用例に移るという構成のため、基礎/応用担当の偏りが起きないよう次の章に移る際の順番に配慮した

走りながら改善していく

持続的かつクオリティの高いゼミ運営には、走りながらより良い運営に向けた不断の議論が不可欠と考える。上記の運営方針は自主ゼミ開催前の議論内容に基づくが、次第に考え方が変わる可能性もあり、今後は運営を通じて学んだ点や改善点も含めて発信していきたい。

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