春頃から、洗濯機が暴動とストライキをその日の気分で行ったり来たりしはじめました。

途中で何度も止まっては、ふたを開けて、団子状に固まっている洗濯物をほぐしてまた閉める、すぐまた止まる、開けると、ほぐしたはずの団子。エラーに次ぐエラー。

運良く脱水までこぎつけると、ここからがクライマックスで大暴れします。脱水時、私は相撲を取るような体勢で洗濯機を押さえつけます。押さえつけられた関取はそれでもドッドッドッドッと前後左右に暴れ、最後はガタガタガダッ、ボゴゴッと唸って気絶するのです。

こんなの全自動じゃない！

踊る洗濯機に全体重をかけたまま、このまえ私は叫びました。ドドド音にほとんどかき消されました。誰に向けて叫んだわけでもありませんでしたが、夫が仕事部屋から顔だけ出して「もう買いなよ。」と呟きました。その日のうちに私はビックカメラへ自転車を走らせました。

翌週、新しい洗濯機が届きました。さっそく洗濯機を回しました。相撲も取らなくていいし、なにより音も静かです。

しかし思わぬ盲点がありました。洗濯が終わるとピー音が6回鳴ったのです。ひとつ前の洗濯機は、ピーピーピーピーピー。5回でした。

5ピーで慣れていた私は6ピーがしっくりきません。階段を降りていて、あと一段あるだろうと思って踏み出したらなかったような気持ち悪さです。

6つ目のピーを聞いた瞬間歩いていた私は、うちにあるはずのない階段を踏み外しそうになりました。

それから行き場を失った1ピーを消化しきれぬまま洗濯物を干しました。脱水能力は格段に上がっていました。

わが家にある家電の終了ピー音は、電子レンジとホットクックは4回、炊飯器は3回です。私の理想は3回です。理由はありませんが3回が心地いいと感じます。

日本人に馴染みのある3・4・5とか、3・3・7とかのリズムが3を収まりよく感じさせるのかもしれません。たったの3回ぽっちじゃアラームにならないなら、そこそこの速度の三三七拍子でお知らせしてくれたら私の毎日はもっと楽しくなると思います。

この話を友人にしたら「うちのホットクックはずっと喋ってるから、うるせーまじちょっと黙れって思う。」と悪い言葉で新しい情報を提供してくれました。

我が家のホットクックは旧型なのでしゃべりませんが、新型だとためになることを色々しゃべるのだそうです。おいしくなりますように、と調理中の料理に向かって唱えてくれたりもするんだそうです。鍋がしゃべるんです。

クリス・プラットの声でしゃべってくれるなら私はすぐさま最新型に買い換えます。ピーの回数なんてどうでもいいです。