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【同人誌の表紙】RGBの表紙の色を印刷で再現したい

初めまして、Origa Design と申します。
同人誌の表紙デザインをしています。

今回は表紙の制作時によくある「RGBのイラストや写真の色を印刷で再現したい」というお話についてです。

全部読むのが面倒なひと用のショートカット記事はこちら↓


はじめに


デジタル機器と印刷は物理的に別物です。
3色の光を用いたRGBと4色のインクを用いたCMYKは表現できる色が異なります。
説明すると長くなるので、とりあえずまったく別物なんだなあと思ってください。

web上で画像を渡して「この色と同じにしてください」と言っても、ひとによって見えているものが違います。

MacとWindowsとiPhoneとAndroid
見え方が違います。機器が違うからです。

グーグルドライブで見るか各種ソフトで開くか
見え方が違います。ソフトが違うからです。

カラープロファイルのない画像をソフトで開いた
見え方が違います。プロファイルが違うからです。

ナイトモードにしたパソコンやスマホ
見え方が違います。やや黄色っぽくなります。

ブルーライトカット眼鏡

見え方が違います。やや黄色っぽくなります。

青白い照明とオレンジっぽい照明
見え方が違います。部屋の照明の影響を受けます。

私たちも印刷所も、クライアントの要望に応えてデジタルデータをより忠実に印刷できるよう努力しています。それでも多くの難しさがあります。
まずはその点をご理解いただきたいと思います。

次に、実際にどうするかです。

事前にできること

ブルーライトカット眼鏡や画面のフィルムはつけないように。
ナイトモードなどの設定はオフに。
適切な照明を使用しましょう。
キャリブレーションしましょう。
カラープロファイルは埋め込みましょう。

カラープロファイルは下記を参照してください。

資料請求

カラーチャートを取り寄せてどの数値がどの色で印刷されるか見てみましょう。
CMYKで表現できる色の範囲を把握しましょう。
無料で資料請求できる印刷所も多々あります。

印刷でできること

最終的には液晶でどう見えるかではなく印刷してどう見えるかです。

本機校正をしましょう。
本番と同じ機械で同じ条件で印刷することです。

例えばプリントオンは試し刷りが可能です。

同人の場合、校正という名目ではやっていない印刷所がほとんどですが、1冊だけ印刷や5冊だけ印刷が可能な印刷所はあります。それを校正として使用しましょう。

同じイラストのポスターやポストカードを先に印刷して校正として使用することもできます。
例えばおたくらぶはポストカードと表紙で同じ紙を使えるので校正代わりになります。

どう理想の色と異なるか、傾向と対策

特定の色がくすむ?
明るすぎる?
色が転ぶ?
それぞれ原因と解決策が異なります。

・つるつるした紙、ざらざらした紙

オンデマンドかオフセットかなどによっても変わるので一概には言えませんが、ざっくりした傾向としては、ツルツルした紙の方が鮮やかになりやすい/ザラザラした紙やマットな紙の方がくすみやすいです。

・紙が黄色っぽい白、青っぽい白

紙によってはクリーム色だったり青白かったりします。
紙色とインク色が重なって影響が出ます。

・PPとの相性

クリアPPの方が鮮やかになりやすい/マットPPの方がくすみやすいです。

・イラストをCMYKに変換する

Labを経由してトーンカーブを調整しましょう。

・肌色がくすむ、黄系の色がくすむ

シアンが混ざっていることが原因です。 「肌色のシアン抜き」をしましょう。

・肌の血色をよくしたい

肌色に蛍光ピンクのインクを追加しましょう。血色が良くなります。

・特定の印刷所で赤やピンクが蛍光っぽい

印刷所によっては通常のCMYK印刷でも蛍光っぽいマゼンタのインクを使用している場合があります。
肌面積の多い美少女イラストに強い印刷所は特に使用率が高いです。

・蛍光色がくすむ

印刷はシアン+マゼンタ+イエロー+ブラックの4色を混ぜて作ります。
例えば蛍光ブルーや蛍光パープルは入っていないので、そのような色は再現できません。
特色や6色印刷やカレイドなどを検討しましょう。

・特色やRGB印刷を使わずに鮮やかにしたい/くすませたい

イラストやデザインで彩度対比を使いましょう。

・茶色が変になる

カラーモードをCMYKにしてKを混ぜて作りましょう。
CMYの混色だけの茶色は色が転びやすいです。

・灰色が変になる

カラーモードをCMYKにしてKのみで作りましょう。
CMYの混色の灰色はグレージュやブルーグレーっぽくなりやすいです。

・RGBの黒と印刷の黒がちがう

RGBの黒である#000000と印刷の黒であるK100は元々ちがう色です。#000000の方が濃く見えます。

RGBで入稿した場合

・RGBで入稿して印刷所にCMYKに変換してもらったのにくすんだ

普通のCMYK印刷です。蛍光っぽい色はCMYKでは再現できません。
特色や6色印刷やカレイドなどを検討しましょう。

・RGB印刷したら色が明るすぎた

暗めの色を表現する場合は通常のCMYKの方が向いています。

原因は、
1)プリントオンやおたくらぶ、栄光印刷などがやっているのはCMYKに蛍光グリーンと蛍光ピンクを足した6色印刷です。
蛍光ピンクと蛍光グリーンによって通常より蛍光っぽくなります。

2)ブロスやサングループなどがやっているのはカレイドという通常より鮮やかなCMYKインク4色印刷です。
全体的に鮮やかになります。

・青や黄がくすむ、黒が浅い

CMYKに蛍光グリーンと蛍光ピンクを足した6色印刷の場合、青、黄、黒は通常のインクのままです。鮮やかにはなりません。

青や黄も含め全体的に鮮やかにしたい場合はカレイド印刷が向いています。

・RGB印刷したけどくすんだ

最終的にRGBで入稿しても、作業途中でCMYKにしたデータではRGBの色味は再現できません。
最初から最後までRGBで作業しましょう。

カラープロファイルを埋め込みましょう。

6色印刷の場合、蛍光ピンクと蛍光グリーン以外は通常のインクと同じです。上記の通り青や黄などは鮮やかにはなりません。

カレイドの場合、カレイドインク以上の色にはなりません。

「肌色のシアン抜き」のように不要な青みが混ざってないかチェックしましょう。
ブルーライトカット眼鏡をかけていたり画面にフィルムを貼っていたり黄色っぽい照明の部屋だと、青が見えにくいので、過剰に青を塗ってしまいくすみの原因になることがあります。

・パステルカラーがきつい色になった

蛍光ピンクや蛍光グリーン、カレイドはパステルカラーには不向きです。
CMYKの範囲で工夫するか特色を使用しましょう。

・特定の色にこだわりがある

特色インクを使用しましょう。

・金や銀を印刷したい

特色インクを使用しましょう。

・メタリックな色にしたい

特色インクを使用しましょう。

・主線がぼやける、細い線が出ない、ロゼッタパターンが見える

色ではなく線数の問題です。違う話なので今度また別所で書きます。

おわりに

ひとまず以上です。
色の世界はとても奥が深いのでこれが全てではありませんが、取り急ぎ今できることはこれくらいかなと思います。
結局はケースバイケースです。詳しいことはご依頼時に個別にご相談ください。

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