見出し画像

猪、捌いてみた

「おい、イノシシ穫れたど」


この一言から、私の一般家庭の主婦としての世界が変わった。






はじまり

お義父さんの山に猪が出るらしい。
畑を荒らすし、罠を仕掛けたら捕らえたようだ

そんな話が何年か前からあり

猪、解体については何度か見させてもらったし

お肉も美味しく食べていた


そんな風に何年か猪猟と共に過ごし(はしょりすぎだろう)

ついに2023年

猪を捌かせてもらう機会があったので
『猪、捌いてみた』
を書いてみようと思い立ったのである


義父と猪と私

「おい、イノシシ穫れたど~」

この電話がかかってきたら、もう明日とあさっての予定は決まったようなものである

罠にかかった猪を仕留めにかかるようだ

この時点で、まだ私は猪の命をいただく瞬間を見た事がない。
槍で心臓を突く方法や、猟銃でバーンと撃つ方法や、なにか仕留める方法は多々あるのだろう
鼻をくくって動きを制限させるとか
まだ、見たことがないけど、ひとつの命が終わる瞬間をこの目で見て、経験するまではたぶんお肉を見ても「美味しそう」としか思わないのだろうと感じている

猪が絶命する瞬間を見たら、私はどう思うだろうか

かわいそう、と
美味しそう、の
境界線はどこにあるのだろう


次に、内臓を出して血抜きする行程も、まだ経験したことがない
猪によっては100kgを超えるものが居るとか。

内臓も分けてもらうけど、ひとつひとつが本当に巨大で
特に肝臓などは手のひらいっぱい広げても足りないくらいの大きさがある

もちろん片方の肝臓だけで、である

心臓も握りこぶし大より大きく、ものによっては
手のひらいっぱいサイズのものもあった

余談だけど、ハツ(心臓)は塩コショウで焼いて食べるのも美味しいし
茹でてポン酢で食べるのも美味しい。

マメ(腎臓)も食べられるし
金玉も食べられる
猪は捨てる臓器はないのだ(あとで書くよ)

そんな、内臓系は猪が穫れたその日に家に分けられる。

内臓を出したあと、血抜きをするみたいだ

義父に聞く話によると、うちの山の沢に浸けて血抜きをしたり
風呂釜に浸けて血抜きをしたりするらしい

そんなこんなで内臓を出して、1日血抜きをした後、ついに猪解体の儀が始まるのであった



皮剥ぎの儀

私が呼ばれたのは、猪が絶命してから内臓を取り出されたあと
血抜きをして、皮剥ぎ台に乗せられたあとの事である

2023年、1月18日のこと

今回の猪は雌、2日前に猟銃で撃たれて召されたとな
撃たれる寸前、殺されまいと一直線に突進してきたと聞いた

朝、山へ向かうとすでに皮剥ぎ台の上で仰向けにされた猪がいた


大きさは、内臓を抜いて58kg
お腹は割かれていて、空洞
この割れ目というか、皮はこの部分から剥いでいくのだろうなと思った

まずは義父が見本を見せてくれる

皮と肉の間を削いでいくような感じかと思ったら
ついていたのは皮、脂、肉、だった
なるほど、、、脂があったのか

脂がノッてるってこういうことか
当たり前の事に気がついて、ちょっと感心すらした

皮と脂の間に刃を入れてみると、ジョリっとかすかに音がする
刃がよく切れるから、一気にたくさん切れるんだけど
一気にいくと皮が切れてしまうか、
脂がたくさん切れてしまうかなので
ちょっとずつ慎重に。

超余談なんだけど、私はO型
細かい仕事は好きで集中力は高く継続できるタイプ
でも飽きたら大ざっぱ

そんなO型に、この細かい作業ができるのか?と不安になる


そこへ救世主登場である


救世主、現る

我が家の猪解体の儀に欠かせない人物が到着した

詳しくはよく知らないが、猪解体ができる人
猪の解体に詳しい人
猪を美味しく食べられる人
猪といえばこの人
そして
私とは飲み仲間\(^o^)/

この人物の登場で、猪の皮剥ぎの儀はとてつもない早さで進むことになる

さすがにめちゃくちゃ丁寧。
今まで私の剥いだ部分を見て?
脂がもったいないなさすぎる

師匠は、皮スレスレで剥いでいる
(以下師匠と呼ぶ)

私もいつかこんな風に剥ぎたいと思った

剥いでいて思ったけど、どうせ埋めるか燃やすかの皮に脂が残ったとて、、と考えてしまったいたが

師匠の「この脂が美味しいんよ」の一言で考え直す

確かにもったいないな。
食べて美味しい部分を残して削ぐのはもったいない

でも、皮剥ぎ一年生の私はまだまだ修行が足りないのであった
(まじめに剥いだの初日だからな)

そんなこんなで、皮剥ぎの何の代わり映えもしない作業は続き
少し飽きてきた頃
師匠の師匠が到着、これで猪解体の猛者たちが揃ったのである


皮剥ぎもだいぶ進んで、台の上で仰向けから横向き、ついに背のほうへと剥いできた
朝10時前から始めて、このあたりでお昼です
皮剥ぎには2、3時間かかるのだと知りました

皮剥ぎの途中で猪と目が合いました
怖かったです

次の行程はついに解体です。

解体ショー

皮をまるっときれいに剥がれた猪は、肉そのものという感じで、気持ち悪さや怖さやグロさ等は一切なく
本当に、肉。
私はわりと見るのも触るのも平気なので、肉の塊だと思えたけど
この時点でもまだ猪の形はしているし
気持ち悪いと思う人はいると思う

ただ私は、この次にどうなっていくのかがとても楽しみで仕方なかった

まずどこに包丁を入れるのか…?
どの部位から解体するのかがとても興味があって

写真こそ撮れないけど、捌きかたをしっかり頭に入れておこうと思った


師匠(勝手に弟子入りした)が後ろ脚に手をかけた

そこからどうやったのかわかんない
ぐるっと回すように、猪の後ろ脚が外れた

人間で言えば股関節と大腿骨が外れたっていうことだろう
その肉の塊は、鶏肉で言えばモスチキンとかケンタッキーのアレ、みたいな
手で持って食べる骨付き肉であればその感じっていう
まあとにかくでっかい肉だった

それを、食べやすい大きさに小分けする作業を任されたのである!!

まず骨を外さないといけない

えっと?
どこから?
はて?
WHY?

なかなか、スーパーで売っているお肉とは違うし
骨を外すっていう作業をすることもない

また余談になるが、私は割と何かと包丁捌きが良いほうだと思っている

だけど、この今目の前にある骨付き猪肉は
どう解体していいのかわからない

一回、師匠に聞く

まじで適当にやっていいよと言われた、まじWHY

覚醒

とりあえずお肉の端っこに包丁をあててみた
骨に沿って切り進めば外れるだろう

お肉の質的には、このへんで切り替わってるから
ここが筋で
ここからスネ肉

ここからもも肉ってことよね

あ、太ももの骨って二本あるんだ

ここが膝(グルコサミン♪)


そんな感じで、割とすんなり肉が骨から外れた

それを、肉質ごとに切り分けてみる

理想は、ブロック肉の形

これは、自分がお肉分けてもらった時に切りやすい、調理しやすい形にするため。
みんなももらったお肉、トリミングしたりするの大変かなって思って
もう、ここでできるトリミングや形ってのはやっておこうと思ったの(勝手にやってしまった)
実際、持って帰ってから楽だったしね

もも肉は大きいから、躊躇なしに真っ二つ!
筋や膜をトリミングして
いいね、スライスしやすい形です(自己満足)

そうこうしてたら、次は師匠から前脚が

前脚も、後ろ脚とそんなに変わらず解体していいと思った
今度は骨の上に真っ直ぐ刃をいれてみた

骨がすぐに表れて、その周りの筋を削いでいく形でやってみた
おぉ、こっちのほうが早い
骨が外れた後の肉の形状も、たぶんこっちのほうが綺麗

次からこれでいこう

師匠の師匠から褒められた。
師匠の師匠が私に後ろ脚を渡してくる

前脚を渡してくる

私は四つ脚を捌いている

なんだか嬉しかった
変な表現だけど、猪捌けるのってすごい気がして
そのお手伝いができてることが嬉しかった

覚醒、大確変

私が四つ脚捌いてた間に、師匠はあばら骨を外していた

待って、見てない…

残念ながらあばら骨のあたりは捌くのを見れていない

けど、たぶん先に骨を外すんだと思う
細かい作業だと思う

肋骨の間の肉をスレスレで削ぐように剥がして(予想)
この下の肉を背骨から外すのではないかな(予想)

なんにせよ、私が後ろ脚×2 前脚×2 を骨から外して
身をブロック肉の形状にする作業を進めるうちに

あばら骨のあたりをやっていたんだな

見たかった

忘れてたヒレ

興奮して書くのを忘れていたが、ヒレの存在を思い出した
まずいちばんにヒレを取るようです

場所は、猪を仰向けに、脚をがばっと広げた状態で
おなかのお尻側近く
人間で言うと、下腹部おへそ両脇、みたいな
そのくらいの所にヒレがありました

このヒレ、個体によって形状が違うのか?
前回(2022年11月)に解体を見た時はもっと取りやすい場所にあった

今回のヒレはゴゾゴゾでした
私の取り方が下手すぎたの

でもヒレ、おいしかったよ

肩ロース

前脚についてくる大きな肉は、肩ロース
ボタン鍋にするとおいしい部位です

もう、美味しさを伝える説明になってしまっていますが
捌いている時も、この部位はどうやって食べよう?
としか考えてなかったので
解体しながら、すでに冒頭の「かわいそう」と「美味しそう」の境界線を越えていました

いつからそうなったのか?

肩ロースは小分けにしないで、大きな塊のままで冷凍
スライサーでカットすると美味しくいただけます

肉と脂身の部分が半分半分くらい、とても脂ののった
おいしそうなお肉です

トリミングして出た余分なお肉の切れ端は
その場で焼いて食べるのが楽しみ

部位ごとに小分け




こちらが、部位ごとに小分けしたお肉です


こんな感じで、食べやすい形状にカット
もうここらへんまできたら、夕方は17時くらいです

最終的にすべて終わったのは18時でした

猪一頭を捌く、というのは大変な作業なんですね
今まではお肉だけ分けてもらっていて、全然知りませんでした。

もし、今後も義父が山で猪を穫るのなら
ひとりでも一頭捌けるようにならないといけないなと思ったし
なにより猪を捌くのはとても楽しかった
楽しかった、というと変な誤解を生むかもしれないが

命をいただく事っていうのは理解しているし
山に、猪に感謝します

捌くのは、楽しい。面白い。興味が湧く。興奮する。

誰かがやらねばならぬことなら、私は進んでやりたいと手を挙げてもいいと思い始めてる

もちろん、猪が食べたいから穫るのではなくてね
獣害になるなら穫るしかないのでね

余談、タンと金玉

金玉食べたんですよ、私

男性陣は食べなかったんですけどね


まず外側の薄皮を剥きます(薄皮2枚あるよ)

つるんっと出てくるよ
このまま輪切りにして焼いてもいいけど、やっぱり皮は剥いたほうが食感が良かったです

中から出てきたのはこんな感じで、挽き肉みたい

生でも食べられるみたいだけど、まあ焼く。
焼くと少し縮んで、食感は少しコリコリ?プチプチ?
と歯が入る感じ
味はあんまりしない
塩コショウ味が美味しいって感じ

あと、タン(舌)もだいぶ美味しい
半解凍にして、皮を削ぎ落とすのが一番楽でした

猪パーティー

角煮とか作ってみたよ
柔らかくはならなくて、縮んで、うまみが凝縮という感じ


たくさん食べました

今回も猪さんありがとう

一般家庭の主婦が、もしかしたら猪を全頭捌けるようになるかも、しれない話


猪、捌いてみた。でした

#やってみた

この記事が参加している募集

やってみた

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?