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ミュージアムの中の人が、なぜかいろいろあって「スポーツ(「との比較を行う上で」というテイで美術館・博物館も対象とした「文化観光」も無理やり含めた)ツーリズム」の非常勤講師をしている話 #06

自己紹介はあらためて行いますが、いろいろな業界を見聞きした経験をもとに、現在関わっているミュージアム業界(そんな言葉ないw)についての(あまり知られていない)ことを中心にご紹介できればと思い、noteをスタートすることにしました。誠に申し訳ありませんが、このシリーズはおおむねミュージアム色は薄いです。


今回は「【Watch系】スポーツツーリズム」について事例をもとに理解を深めていきますが、具体的には(NPBやJリーグなど国内プロスポーツ系)を中心に事例をご紹介していきます。


日本でスポーツツーリズムという言葉がなんとなーく知られるようになったのには2つのきっかけがあったとされています。1つは2002年のFIFAサッカーワールドカップ日韓大会。そしてもうひとつは1993年に誕生したJリーグでのサポーターによるガチなアウェイ観戦。Jリーグ加盟クラブが増え、J2が誕生した1990年代後半から一般的になってきたと考えられています(たぶん)。ちなみにJリーグ初期はフェイスペインティングをして、チアホーンを吹き、フラッグを振るという、どこかの代理店にそそのかされたかのような画一的な応援スタイルでしたが、Jリーグバブル崩壊後に見事に絶滅しましたね。よかったと思います。



では、なぜプロ野球(NPB)のビジターツアーが注目されず、Jリーグのアウェイツアーが注目されたのでしょうか? 勘のいい方ならすぐにわかると思います。1試合の重みが圧倒的に違う、というところですよね。クラブ数の違い、試合数の違い、節目となる試合の多さ、といった違いが大きなポイントだといえます。



クラブ数の違いや試合数の違いについては一目瞭然ですね。1998年を例にとると、プロ野球(NPB)はパ・セともに6球団ずつ。5チーム×27試合の年間135試合。一方でJリーグは18チーム、17チームとのホーム&アウェイ制でリーグ戦34試合、カップ戦4試合+トーナメント戦の38試合弱となります。チーム数が多く、試合数が少ない上に、昇格&降格というまさに天国と地獄なシチュエーション。1試合の重みはおのずと異なります。



さらには、Jリーグの場合、優勝争い、残留争い、入れ替え戦、カップ戦(トーナメント)など盛り上がる要素が多数ある構成になっています。こうしたことからJリーグのサポーターによるアウェイツアーが注目されていった、というのがざっくりした流れになります。



これはあくまで個人的な経験に基づく話ですが、ある年の11月1週目に札幌でアウェイ、2週間後には福岡でアウェイ、さらには12月2週目の天皇杯で仙台、3週目には磐田とわずか1か月半の期間で「どれだけ遠征行きまくっとんねん」という経験を持っています。いまから20年ほど前の話です。が、後悔はしていません。財布はずいぶん軽くなりましたが…。



実際のところJリーグ百年構想や、プロビンチア(イタリア語で「地方」や「経済的に劣る」というニュアンスの言葉)と呼ばれる大分や新潟を代表とする地方クラブの活躍に刺激された、各地の自治体では観光需要なども含めた地域経済の活性化を目的にクラブ設立&支援を行うケースも90年代後半~2000年初頭以降、増える傾向にありました。そういう意味でもJリーグの誕生がもたらした副産物のひとつがスポーツツーリズムといえるかもしれません。もともとJリーグは日本サッカーの強化、ワールドカップでの活躍を目的にプロ化されたわけですから。Jリーグのクラブ自体も増えましたが、フォロワーとしてのbjリーグ、そして現在のB.LEAGUEも、Jリーグ同様に国内でのスポーツツーリズムを牽引する存在のひとつ。観光という観点からみれば、屋内型スポーツであることや土日2日連続で試合が組まれるB.LEAGUEのほうが、滞在時間が延びる動機はより増えることになり、飲食や宿泊の増加など親和性は高いのかもしれません。



もっとも現在のプロ野球(NPB)は、交流戦やクライマックスシリーズなどを導入していますので1998年当時と比べてもビジターツアーを楽しみにしているという人の割合は増えているようです。特に広島東洋カープの本拠地、マツダスタジアムの誕生以降、新しいスタジアムでのサービスおよび、建築物としてのスタジアムに着目するファンもプロ野球をテーマにしたスポーツツーリズムが盛り上がるきっかけになっているといえます。そのわかりやすい事例としては北海道日本ハムファイターズが2023年から新しい本拠地としているエスコンフィールド北海道ですよね。確かにここは行ってみたい。しかもできることなら平日のカード3連戦を堪能したい(できることなら俺たちのオリックス・バファローズ戦で、俺たちの伏見寅威が活躍したうえで俺たちのオリックス・バファローズが勝つという展開で)。ああすみません、どうやら心の声が漏れてしまったようです。


オープン間もないということでアクセス面での問題がクローズアップされてはいますが、北広島市の戦略については見るべきポイントが多いため、あらためて別の観点からご紹介します。



いずれにしても新しいシーズンが始まる前のタイミングで、対戦カードや会場、試合時間の発表を待ちわびるサポーターやファンの光景は、スポーツツーリズムが日常に根付いたことの表れといっても過言ではないでしょう。ちなみに個人的アウェイ観戦の推しはJリーグでいうなら大分(関サバ・関アジ・鶏天+別府温泉+大分県美)、博多や鳥栖(スタジアム+中洲の屋台+福岡市美や福岡市博、九博)、新潟(酒!枝豆!魚!蕎麦!かきのもと!+越後妻有やフジロック)ですかねええ。おっと東北もいいですよねえ。。。長いこと行っていませんが。



ということで、今回は「【Watch系】スポーツツーリズムの事例」のうち、Jリーグ、NPBを中心にご紹介しました。次回は世界的スポーツイベントについてご紹介します。


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