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『あらわれた世界』№19

冥界人名録を読み終えたオシリスは、メジェドに命じて冥廷の空間にビームでゲートを描かせた。ゲートの淵がカッと輝くと、ペロリと空間が剝け、ゲートの向こうに砂の風景が現れた。

オシリスがまっすぐゲートへ向かうと、暗闇から現れた篁公がゲートの前に立ちはだかった。オシリスは、持っていた冥界人名録を篁公に渡すも、篁公は動かない。反射的に飛び上がったメジェドをオシリスがたしなめると、篁公はそれでも両手を広げて首を横に振った。

オシリスは、しかたなく篁公の耳元で何かを囁くと、その言葉に力を失った篁公は、ガックリと肩を落としてその場に座り込んだ。オシリスは篁公を労うように背中をポンポンと叩いて、メジェドと共にゲートに現れた砂の風景に溶けていった。

          ※

小野さんの通訳を経て、お偉いさんは腕を組みながら、仮に閻魔大王が妹のヤミーを見つけたとしても、ヤミーは長い年月をかけて失った閻魔大王を忘れているならば、再び会うことはお互いの為にならないと考察した。横で聞いていた猫さんもそう感じたが、閻魔大王は聞こえないのか目を閉じている。

小野さんはずっとなんだかモヤモヤしていた。閻魔大王の帰還も、オシリスの到来も、篁公の積年の思いも、冥廷の為に全ては揃っているのに、何かがずっとモヤモヤしている。シャドウはそんな小野さんに気づくと、人知れず影を濃くした。











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