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#6 防音の問題点とその対策

 人に高説を垂れるほど、防音について精通したわけでもないのだが、人に教えられるようになって初めて知識は身に付いたと言えるのも間違いないわけで。
 そこで、今回は「遮音」に関する問題点とその対策方針について、今まで私が調べてきたことを、人に伝えるつもりで整理してみたいと思う。
 間違っている箇所があれば、ぜひ教えて頂きたい。顔を真っ赤にして訂正させて貰いますので。


1.防音室の基本方針

 いきなりではあるが、今回の記事の結論を最初に述べる。せっかちな貴方もこれにはニッコリだろうか?理由が知りたい貴方は、ぜひこの記事を最後まで読んで欲しい。

 ・適切な防音は「遮音」「吸音」「防振・制震」の組み合わせが重要
 ・使用する部材は重たいものほど望ましい
 ・使用する部材は複数の種類を組み合わせる
 ・同一部材を複数の構造で使う場合は厚さを変える
 ・隙間を作らない
 ・二重壁構造を採用する
 ・壁と壁の間は中空にしない
 ・各種構造間は縁切りを行う
 

さて、上記の方針がなぜ有効なのか、簡単に解説しようと思う。


2.音の種類

 音は空気伝播音固体伝播音の2つに分けられる。
 空気伝播音は読んで字のごとく、空気を伝わる音である。そのため、距離をとる、壁などの障害物があることで減衰する。そのため、隙間を作らないことが重要となる。
 固体伝播音は物質そのものを伝わる音であるため、隙間が無くても伝わる。よって、遮蔽の効果が得られにくい。
 空気伝播音を低減させるための対策が「遮音」
 固体伝播音を低減させるための対策が「防振・制震」となる。
 詳細は後述するが反響による音の増幅を抑えるための対策として「吸音」が必要となる。

3.防音室を作るうえで厄介な現象

①遮音性能の質量則
 単一部材の遮音性能は、入射音の周波数と材料の面密度の対数に比例する。面密度が大きい=重い物質ほど、遮音性が高まる。具体的には重さが2倍になるにつれ、5~6dB向上する。裏を返すと、同じ部材の厚さを2倍にしても得られる効果は5~6dB程度ということである。これの何が厄介かというと、5cmの壁厚を10cmにして得られる効果は5~6dBであるが、1mの壁厚を2mにしても得られる効果は同じく5~6dBとなる。
 特に住宅として常識的な範囲の壁厚では、単純に部材厚を厚くするだけで得られる効果に限界がある。そのため、同じ部材厚ならば少しでも重たい部材が望ましいのである。

②コインシデンス効果
 物体にはそれぞれ振動しやすい固有の周波数がある。その周波数と一致した音は材料が共鳴することで、遮音効果が低下する。つまり、単一の部材だけでは、特定の周波数の音において本来期待できる遮音効果を得られない。そこで、複数の種類の部材を併用することで、コインシデンス効果の影響を低減する必要がある。また、同一部材でも厚さが異なると、振動しやすい周波数が変わるため、コインシデンス効果の低減に効果がある。

 質量則以上の遮音効果を得るには、部材間に空気層をとった二重壁を構成するのである。しかし、二重壁構造をとると、また厄介な問題が発生する。

③共鳴透過現象
 二重壁や複層ガラスなど空気層をもつ二重壁構造では、板状材料(質量)に対して、空気層がばねとして働くことで、特定の周波数で共鳴が生じ、その周辺の周波数領域では音波が透過して遮音性能が大きく低下する。この現象を共鳴透過現象という。この共鳴透過現象を抑えるために、二重壁の間に吸音材を設置する必要がある。

④音橋
 二重構造壁の間の柱(間柱)を伝って、外側まで音が伝わる現象。これは固体伝播音によって生じる現象であるため、壁と壁の間は縁を切ることが望ましい。


 以上が今回の内容である。理屈ではわかっていても、実際に対策するのが中々難しいからみんな苦労するし、金がかかるのだろうが。

 次回は、室内の音響についてもまとめてみたいと思う。

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