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#52 農業のおおまかな利益率part2 ~日本政策金融公庫のデータより~

前回記事では、色々な生産者の平均値のデータであるので、本当に大枠でしかわかりませんでした。

今回は、より農業で利益をあげることを目指している経営体の利益率などを見ていきたいと思います。
活用するのは、日本政策金融公庫がまとめている、「令和3年農業経営動向分析」です。

公庫の融資先のデータであり、融資を受けるのは「規模拡大意向がある経営体」や「償還が見込まれる経営体」ですので、ビジネスとして農業を実現している(これからしていく)経営体に近いと思われます。
元データもぜひご覧ください。https://www.jfc.go.jp/n/findings/pdf/r04_zyouhousenryaku_3.pdf

所得800万円に必要な売上高や面積の目安は?

果樹、露地栽培、施設栽培の個人農家の売上高と所得は次の表です。

売上と農家所得(数値はサンプルの平均値)

所得率(所得/売上高)は果樹栽培で高くおよそ29%、野菜栽培では19%でした。

この数字をもとに、所得800万円に必要な売上高、面積は粗く算出すると次のようになりました。

所得800万円に必要な売上高と面積

果樹の場合面積が267a(2.7ha)とかなり大規模で1人でできる限界規模を余裕で超えています。(もはやこの規模ですと法人化も視野に入っている規模だと思います。)

ではもう少し詳しく、品目別ではどうでしょうか。

果樹(柑橘類、りんご、ぶどう)の所得率

柑橘類、りんご、ぶどうの売上高と所得

品目別にみると、所得率が比較的高いのはぶどうです。

また面積当たりの売上高はぶどうが圧倒的に高いです。
これはぶどうの単価が他の果樹に比べて高いことが影響していると思います。

一方で農家所得は柑橘類がりんご、ぶどうよりも高くなっており、これは柑橘類などで面積を広く取り組むことで売上が高いからです。

つまり、柑橘類は果樹栽培の中では広い面積が必要とされていることがわかります。

施設野菜(トマト、いちご)の所得率

トマト、いちごの売上高と所得率

2つを比べるといちごの所得率が高いです。
特にいちごは圧倒的に面積当たりの農家所得が高くなっています。

都市近郊でいちご栽培が徐々に増えてきているのは狭い面積でも比較的所得が確保できる品目だからです。

まとめ

これまでの結果を大まかにまとめると次のとおりです。

耕種別の面積、売上、所得率

この結果をどう活用するか

まず前提として、”所得率が高い=良い”、”面積当たりの所得が高い=良い”というわけではありません。

所得率が高いものほど売上高が低く、結局のところ所得は同程度に落ち着いています。

この表の活用方法としては

  1. 農業を志す際に、自分はどの戦略を取るかを考える

  2. 今の自身の農業経営を見返して、これらの数値とどういう点が異なっているのかを把握する

としていただければ幸いです。

もっと詳しいデータ(項目別の経費など)は文末のエクセルに載せていますのでご覧ください。

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