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エッセイ_脳喰い日和

 来週の月曜日に脳を食べる予定をいれていたのに、今日脳を食べてしまった。そもそも先々週に食べる予定だった脳が、品切れで無かったのが悪い。

 ことを順序だてて話すと、先々週、新大久保のネパール料理屋にヤギの脳の炒めがあるということで、友人と訪問したところ、脳は品切れで代わりに睾丸ならあるといういことで、泣く泣くヤギの睾丸を喰ったのだった。
 私は脳を食べに来たんだぞと思いながら、睾丸を喰うし、連れ合いは「金玉をしゃぶるのが好きな女はやっぱこういうの好きなんかね。違いがわかるんだろうかね。」と訳の分からないことを言っていた。それじゃあハラミや赤身好きの私は人間の臓物フェチになってしまう。

 ゲテモノ、珍味食材は、日や季節にによって仕入れの有り無しが激しいので、諦めがつきやすい。どうしても脳、という場合は電話で「今日脳ある?」と確認するのがベストだろう。

 今日は渋谷で開催している呪物展に行ったのだった。平日でも多少待ち時間があり、その間CBDビールを飲んでいた。順番が来て、呪物を見て回っている間、ところどころ妙な悪寒がしていた。なんというか、ところどころ薄ら寒いエリアがあったのだ。会場を出てから連れ合いにそのことを言うと、連れ合いも全くそうだったというので、ふたりで寒気の原因を全てCBD、もしくは空調のせいにした。

 帰り、腹が減ったので、連れ合いとどこに行こうか話した挙句、互いにゲテモノも行けるとわかったため、新宿の上海小吃に行った。そこにあっさりと豚の脳みそ煮を見つけて、当たり前のように注文し、人気メニューらしく 在庫が無いということもなく、あっさりありつくことができた。

 注文してから、来週の月曜に羊の脳カレーを食べに行く用事を思い出したが、もう遅い。先日食べ損ねたせいもあり、そこに脳があったら、脳を頼むしか選択肢は無い。見た目は完全に脳だが、癖のあるレバーのようで韮と甘いタレによく合い、美味である。他に唐辛子に塗れた蛙や揚げパンなどを喰い、果実酒を浴びるように飲んだ。 

 歌舞伎町の治安の悪い地域を駆け抜け、もう一件コンセプトバーを回ってから、帰宅することにした。怪談バーである。怪談を聞けるバーであり、怖いのだが、酔いが回っているせいなのか、私一人最前席で、いつまでもにやにやしてしまい、連れ合いが声を上げ飛びあがっている横でも、私はずっとにやにやしており、実に厭な奴であった。
 今、脳が酒と胃液に溶け全身に回っていくところだ。

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