A＝怪しい通販番組の販売士　B＝相手役のタレント
#コント  っぽい掛け合いです。
男性口調で書いていますが、アレンジ等はご自由にどうぞ。
#音声化OK  #声劇台本

A：さあ、視聴者のみなさまもご覧くださ～い
　　いかにも切れ味の悪そうなこの包丁！フゥ〜♪
B：ちょっ、僕んちの包丁なんですから！
　　恥ずかしいなぁ～
A：この包丁で、こちらの玉ねぎ！
　　切れると思います？
B：玉ねぎくらいだったら……
A：じゃあ刃を入れますよ……っはぁ、よいしょっ！くっ！
B：え！？ウソ、全然だめだ！！こんなに！？
A：んっふふ〜本当に切れない包丁ですね
B：うわ～こんな、我が家の切れない包丁が
　　全国放送されちゃって恥ずかしいっすよ〜
A：そんなときは！ジャジャン！！これ！！
B：おっ！？
A：どんなに刃こぼれしたひどい包丁でも
　　あっという間にスパスパ切れちゃう、切れ味最高の……
　　玉ねぎ！！！
B：ええええ～！？
A：ほら、ご覧ください！ほらほらほらほら！
　　さっきと同じ包丁なのにサックサクで切れ味バツグン！！
B：すごぉーい！！
A：あっという間に
　　綺麗なオニオンスライスができちゃいましたよ〜！！
B：おいしそ～！
A：マヨネーズ付けて、さぁどうぞ
B（棒読み）：シャッキシャキで美味しい～！
A：もうね、苦労して包丁を砥石で研いだり、
　　わざわざ包丁を買い替えたりする必要ないんです！！
　　だって、ほら！！玉ねぎがこんなによく切れちゃうから！！
B（棒読み）：このよく切れる玉ねぎがあれば、
　　他の食べ物いりませんね〜
A：ワタクシもね、通販業界に30年居まして
　　こんなによく切れる玉ねぎ見たことない！
B（棒読み）：でも～これだけ良い商品だと、
　　お値段も高いんじゃないですか？
A：そのとおーーりなんです！！本日は、なななんと！！
　　この玉ねぎ1個1万9,800円！！！
B：ちょっと1回とめてもらっていいですか
A：送料抜きで1万9せん……
B：リハーサル1回とめてくださーい！！とめてー！！
A：どうかしました？
B：ごめんなさい、やっぱり僕には無理です
A：え？何かありました？
B：いや、ちょっと……納得できない点が多くて
A：あら～確か通販番組のご出演初めてでしたっけ？
B：それは、はい……今回初めてなんですけど
A：じゃあ慣れですね
B：慣れですかね！？
A：やっぱりワタクシも最初は違和感感じてたんですよ
B：最初だけですか！？
A：最初だけですね。
　　喋りながら包丁で玉ねぎを切る人への違和感というのは
B：いやそんな違和感感じてないです、
　　そんなピンポイントの違和感は感じてないですけど
A：実はこないだ母にね、怒られたんですよ。
　　「喋りながら野菜を切る人間いないだろ！行儀が悪い！
　　包丁を1回横に置いてから喋りなさい！」って。
　　でもこういう仕事柄、仕方がないんでね……
　　包丁は置かず、母の忠告を脇に置いておくことにしたんですよ
B：……
A：……っはっはっはっはっはっは！！！
B：何すかそのアメリカンジョークみたいな話
A：まぁ、慣れですよ慣れ
B：慣れ……じゃない気がするんですよ
A：んふっ。何か不安ですかぁ？
B：そのニヤついてる顔が不安だな……
　　っていうか、いっぱい不安ありますよ
A：どこが不安です？
B：まずこの台本に書いてある「よく切れる玉ねぎがあれば、
　　もう他の食べ物いりませんよね」のところとか意味が全く
A：そういう説明台詞っぽいところは
　　自信持ってどーんと言い切っちゃえばいいんですよ！！
B：言えないですよ！！玉ねぎ以外の食べ物食べたいですし！！
A：恥ずかしがらない！！
B：恥ずかしいとかの問題じゃなく
B：あと何なんですか「お値段も高いんじゃないですか？」
　　「そのとおーーり！」って返し、確実にダメじゃないですか！！
A：あ、そこ不安ですよね〜
　　要するにこの値段で売れるかどうかってことでしょ？
B：そうですね
A：ワタクシも通販業界に30年いますけど、
　　どんな商品も最初は売れるかどうかドキドキなんです……
B：売れるかどうか、っていうより
　　売れないでしょ？玉ねぎ1個1万9800円って
A：あ～～！！売れるかなぁ～～！！ドキドキする！！
　　でもこのドキドキがあるからこそ
　　ワタクシはこの仕事をここまで続けてこられました、何しろ
　　ワタクシはこの道一筋30年の伝説の販売士です☆から☆
B：……人の気持ちをあんまり分かってくれない人だなこの人
A：ワタクシも不安ですけど、この玉ねぎは絶っ対ヒットします
　　30分の放送で、なんなら1,000個売ってみせます
B：1,000個……はさすがに
A：弱気にならないで。
　　だってこの玉ねぎを切ってみてください！フゥ〜♪
B：リハーサル止めても
　　ずっとこのテンションでいられるんだ、この人
A：ほーらスパスパ切れちゃう！！ほらほらほら
B：わかります切れます、正直びっくりするくらい切れてます
　　このひどい包丁でこんなに切れちゃうなんて
A：切れちゃう切れちゃう♪ミラクルたまねぎ〜♪
B：やめましょう、
　　オニオンスライスがまた1皿出来ちゃいますから
A：スッパ・スッパ・スッパ・スッパ気持ちいいなぁ〜♪
B：そして話を聞かないな！！話を聞かないなこの人
A：試しに三角定規とかでも切ってみようかな
B：さすがに切れないでしょ！！
A：あ、そうそう。ちなみにね
　　通販業界に長くいるコツって何だか知ってます？
B：……は？
A：常識で凝り固まった頭を、信じないことです
B：……はぁ。まぁ、なんか、ビジネスパーソンの話とかで
　　たまに聞きますねそういうの
A：ワタクシたちの会社の場合はさらにこう言います。
　　常識の頭に、「ひ」をつけろ！
B：常識の頭に「ひ」……非常識になりません？
A：常識の頭に、「ひ」をつけろ！
B：いや、かっこつけて言ってますけど
　　非常識って、ダメな意味になってません？
A：常識なんてもうノンノンノン
B：ノンノンノン……？
A：ワタクシたちの会社も別に非常識ではありませんから
　　常識的な通販番組だったら普通、
　　切れ味の良い「包丁」を売るだろうな、と
　　そのくらいは分かるんですよ
B：……分かってるんだ！？
A：分かってます
B：分かっててあえてやらないんだ！？
A：ワタクシどもは常識にひをつけて燃やしますから
B：燃やしちゃいますか？
A：ええ。切れ味の良い包丁を仕入れて売るよりも
　　こうした野菜を法外な高値でどんどん売るほうが……
　　もうかる。
B：詐欺師の意見！！
A：詐欺じゃないですよ、
　　実際に切れやすい玉ねぎ売るんですから
B：お客さん騙されないでしょこんなの！
　　ちょっと何かの手使って軟らかくしただけの玉ねぎでしょこれ！
A：あのね……通販素人のあなたにあーだこーだ言われたくないんだ
B：いや、それはそうですけど
A：通販番組を見てるお客さんたちって、
　　商品のどこを見てると思います？
B：え？……商品の良さとか、便利さとか
A：ど　こ　も　見てないんです
B：いやいやいやいやいや
A：ワタクシたちの話を鵜呑みにすることしかしてないんです
B：言い切った！！
A：いいですか？
　　普通たまねぎを1個2万弱で買うのは、馬鹿です
　　でもワタクシが「これは買いだ」といえば
　　見ている人は買うんです
B：……怖くなってきたよ、大丈夫かなこの通販番組
A：いいや怖くないですよ。だって逆に考えてください？
B：逆に……？
A：この玉ねぎを買ったら馬鹿だけど……
　　もし売る側にまわったら……？
B：売ったら？え？
A：ノンノンノン、難しいこと聞いてないです
　　買ったら損。でも売る側に回ったら〜？
B：儲かる？
A：そのとおーーーーり
B：怖い怖い怖い怖い！！
A：ダイジョブダイジョブ～、簡単な逆転の発想～
B：いや普通にただの詐欺師の本音！！
A：常識の頭に、ひをつけろ！！
B：だから非常識！マジで非常識！
　　マジでお客さん損しかしないじゃないですか！！
A：え？もしかしてー、出演拒否とか考えてます？
B：そりゃ考えますよ！！
　　だってこんなの、やっちゃいけない通販ですし
A：ちょっとね、あなた、ワタクシにそこまで言います？
　　そこまで言うんですか？
　　こっちが黙ってるからって調子に乗っちゃって
B：いや全然黙ってないでしょ？
　　「そのとおーり！」とか言いながらずっと玉ねぎ切ってるし
A：でも気持ちはわかりますよ。ワタクシも鬼じゃない、
　　お客様に損だけをさせたい、ってわけじゃないんです
B：……当たり前のことですけどね？
A：というわけで、はい。ワタクシ今思い付きました。
　　今回のこちらの切れやすい玉ねぎに、おまけとして、
　　まったく切れない三角定規5個をセットにします！！
B：いらないいらなーーーい！！

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★　表紙画像は「いらすとや」様の画像を加工させていただいたものです。