茶封筒の中身

母は父とケンカをするときもよく
大きな声で喚いていました。

普段の母からは想像もつかないような
狐が憑いたのかと思うほど目をつりあげて。

肝心の茶封筒の中身は

“土地の権利書”

どこの土地なのかまでは教えてもらえませんでしたが叔父はちょっと厄介な人なので
まともな書類ではない事は確実でした。

母と父がケンカした後、叔父がやってきて
狭い府営団地の玄関先で大喧嘩です。

「あれは俺がちよこにやった(あげた)もんやから!」

叔父はなぜか私をすごく可愛がってくれていて
よく「家に泊まりにおいで」と言ってくれていました。
私はそんな優しい叔父が嫌いではなかったのですが
母が毛嫌いするので
私はどういう立ち位置にいればいいのか
幼い頃から悩んでいました。

母が毛嫌いする理由のひとつに
叔父は私を養女にしたいと何回か父と母に頭を下げに来たことがあります。
叔父のお嫁さんが子供を産めない体だったそうです。
(後々、このお嫁さんに関しても衝撃的な事実を聞かされます)

「猫の子やあるまいし、はいどうぞなんて渡せるわけないでしょう。この子はうちの子です!」
と、いつもピシャリと言っていた母です。

そんな母が

「ちよこ!土地なんていらんていいなさい!!」

と狐のような顔で言われた私は

「いらないです」

私はぽそりと言葉を発して
きっと悲しそうな顔をしているはずの
叔父さんの顔を見れずに玄関から見えない場所に逃げました。

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