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2022年12月某日。雨。10℃。



北陸で生まれ育った。1年の半分以上、太陽が雲で覆われていて雨が降るの地域。「弁当忘れても傘忘れるな」と、耳にタコができるくらい言われる地域。そしてそのせいか自殺者も多い地域。

ただ、中学生から高校生にとっては、多少の雨や雪が降ったって関係ない。足早に帰るわけでも、カバンで頭を覆うわけでも、折りたたみ傘を取り出すわけでもなく、濡れながら下校する。全然降っていないのに(多少は降っているし、絶対傘をさした方がいいのだけど)、傘をさすなんてダサい。とりわけ少量の雨ならなおさらである。

なんなら傘を持っていること自体がダサい。午後から雨の予報の日に、傘を持って行って、しまいには雨が降らなかったら、ましてや晴れ間が差し込もうものなら、恥ずかしいったらありゃしない。用心深いことは、思春期男子にとっては男性性の大きな欠如だった。闘争本能をむき出しにして、雨にも雪にも戦ってなんぼだ、なんて息巻いていた。



さて北陸を出て5年以上がたった。今はもう、晴れていようが曇りだろうがお構いなしに、傘を携えてどこにでも出かけられる。それくらいには成長した。自意識は退化した、なんて認識すると哀しいから、僕が精神的に大人になったことにしておく。

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