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sushi 22 「なるべく時間をかけて」

どこかに向かう時は、なるべく時間をかけて行くようにしてる。
和歌山にいると大体の人は車で移動することが多く、徒歩3分のコンビニですら車を使ったりする。下手すると1日の歩数が2000歩以下だったりすることもあるとかないとか。確かに田舎の公共交通は1時間に1本しか電車が来ないことも普通なので、車を使いたくなる気持ちはわかるし、実際便利だから味をしめると抜け出せない。
でも、そういう不便な土地に住みながら、あえて電車やバスを中心に生活してみると「ちょっと面倒くさい」ことが楽しかったりする。

初めての街にライブしに行く時、行ったことのない博物館に向かう時。大阪に住んでる友達に会いに行く時や、仕事の打ち合わせに向かう時。車なら1時間で着く距離を、わざわざ電車に乗って2時間かけて向かうと、毎日通りがかる道でも違った風景が見えたりする。
民家の瓦の色がブルーだったり、遠くの山で柿の葉が色づき初めていたり、今時どこで買えるのかもわからないバカボンのパパが履いてそうなモモヒキが干されていたり。他にも、停車駅ごとの小さな花壇や、金属加工の工場地帯、和歌山県民ですらあんまり知らないマイナーローカルスーパーなんかもある。

旅行先では「この風景を忘れないでおこう」とか思ってパシャパシャと写真を撮るのに、自分たちが住む街並みほど噛み締めることを忘れてしまう気がする。
だから、車に乗らなくてもいい日を作って、わざと時間をかけて目的地へ向かい、本を読んだり風景を眺めたりしてぼーっとする。こういうのったりした時間を大切にできれば、錆びついてく風景を忘れないでいられるのかもしれない。

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