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舞台「SLANG」

高橋悠也×東映シアタープロジェクトの「SLANG」を観劇。夢とも現実ともいえない空間でひろげられるサスペンス要素を含む舞台だった。ネタバレ含むため、ネタバレしたくない方は回れ右していただければ幸いです。

舞台のあらすじ

舞台には、近未来とも現代ともいえる不思議な世界で繰り広げられる「夢人」が登場する。「夢人」はいわゆるYoutuber的なポジションで、寝の中で動画配信をする人たちである。しかし、その「夢人」という設定は主人公バグによって生み出された妄想だ。現実では恋人の兄が夢を追い切れず死んでしまったことにより生み出され夢と現実を行き来する主人公。現実の世界では、主人公は殺人の罪で刑事事件で問われており、良心の呵責にさいなまれ自分が殺したと自白をする。

「胡蝶の夢」

この舞台を見ているときに思いだしたのは「胡蝶の夢」。「胡蝶の夢」は、中国の戦国時代の思想家である荘子の説話として有名なお話し。

〔荘子が、蝶となり百年を花上に遊んだと夢に見て目覚めたが、自分が夢で蝶となったのか、蝶が夢見て今自分になっているのかと疑ったという(「荘子斉物論」の故事による〕 )

この説話には、①「現実と夢の区別がつかなくなったたとえ」と ②「人生のはかないことのたとえ」 ともされている。①と②どちらの解釈にしろ、本舞台にあてはめることが出来るのではないかと思う。

主人公は病院からは「現実感喪失症候群」的(舞台では名称が違かったかも)な診断を受けており、現実と夢の区別がつかなくなっていると判断されれている。また、主人公の恋人の兄の人生のはかなさも際立っている。というのは、和田琢磨演じる主人公の恋人兄はジャーナリストを志していたものの、結局うまくいかない人生に嫌気を指して自殺をしてしまう。この結末を考えると、人生のはかなさを感じる

結末と感想

結局、結末を見ると私たちが思っていた「現実」と「夢」の世界はどちらの世界が本当だったのか考える余地を残して本が閉じて話は終わる。

現実と夢の世界について考えさせられ、物語はどちらの世界もうまく表現しているのはおもしろい。現実の世界ではサスペンス的な殺人事件が起きているのに、夢の世界ではファンタジーな要素がある(特に前半の夢の世界はファンタジー?異世界?だった)。

この二つの別の世界をつなげる脚本家はすごいなと思う。ただ、私のキャパシティではどちらかの世界観だけでもよかったかなあと思う。というのも、現実世界での弁護士の二人による弁論での白熱シーンをみると、もっとそちらの世界観での話の展開もみてみたかった様な気もする。「(法律の)行間を読む」という弁護士の熱いセリフは胸にくるものがあった。だからこそ、現実と夢をいききする物語の進め方は面白い反面、色々な意味が物語にあるからこそもっと丁寧にみたいという欲が駆り立てられた。

おわりに

よみうり大手町ホールで独特な世界観・表現の方法をする脚本家や演出家の凄腕には感服するし、役者たちの熱量には圧倒された。またいつか再演して欲しいなあと思う舞台でした。

#舞台SLANG #有澤樟太郎 #井上小百合



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