「法人等による寄附の不当な勧誘の防止等に関する法律の一部の施行に伴う関係政令の整備に関する政令(案)」に対するパブコメ

1 1項(法第6条)「(1)勧告」について

(1)処分基準等案では、不当寄附勧誘防止法(以下単に「法」という。)6条1項(勧告)に関し、「『個人の権利の保護に著しい支障が生じている』については、例えば、①法人等による寄附の勧誘を受けている個人が自由な意思を抑圧されているという場合において、その抑圧の程度や期間の長さが著しいときや抑圧状態に置かれている個人が多数に及んでいるとき」としている。
しかし、表面的には「抑圧の程度や期間の長さが著しい」とはいえず自らの意思で活動しているようにみえる場合も、その意思形成過程で違法不当な伝道手法が用いられたような場合は「自由な意思を抑圧」と評価されるべきであり、「個人の権利の保護に著しい支障が生じている」にあたりうるというべきである。したがって、例として「抑圧状態の形成過程で違法不当な方法が用いられた場合」なども明記すべきである。
(2)処分基準案では、法6条1項(勧告)に関し、「『著しい支障が生じていると明らかに認められる場合』については、著しい支障が生じていることを客観的に認めることができる場合のことであり、例えば、法人等の勧誘行為につき、配慮義務違反を認定して不法行為責任を認めた判決が存在する場合が考えられる。」としている。
しかし、「明らかに」を「客観的に」と限定してしまえば、いくら被害者の声が集まっても客観的な裏付証拠がなければ要件を充たさないとされかねず、不当である。「明らかに」とは単に明白であるという意味と解すべきである。
また、「配慮義務違反を認定して不法行為責任を認めた判決」が必要だとすれば、提訴から判決までは数年かかることが通常であることから、勧告が出るのはさらにその後になってしまうのであり、被害防止にならない。例えば、全国の消費生活センター・法テラス・消費者庁など行政に多数の相談が寄せられている場合も、「個人の権利の保護に著しい支障が生じていると明らかに認められる」といえるから、その旨明記すべきである。
(3)処分基準案では、法6条1項(勧告)に関し、「なお、過去に著しい支障が生じていたが、既に勧誘の在り方が見直されて今後は改善が見込まれる場合には、この要件を満たさないと考えられる。」としているが、この点は削除すべきである。
なぜならば、このように解すると勧告を出すかどうか検討している間に、表面的なまたは一時的な見直し・改善により勧告を逃れられることになりかねないし、過去に著しい支障が生じていたような場合は、特段の事情がない限りは「同様の支障が生ずるおそれが著しい」といえるからである。
 

2 1項(法6条)「(3)報告徴収」について

処分基準案では、法6条3項(報告徴収)に関し、「1(1)に挙げた要件[注:勧告の要件]が全て満たされていると考えられる場合に行う。」としている。
しかし、法6条3項(報告徴収)は、「勧告をするために必要な限度において」行うものであり、勧告を出すかどうかを判断するための資料を集めるために行われるものであり、ある種調査といえるところ、調査とは「疑い」「おそれ」がある場合に行われるものであって、既に要件を充たしていることが明らかな場合に行われるものではない。例えば、宗教法人法では、報告及び質問は、解散事由の「疑い」があるときに行うものとされている(同法78条の2)。また、児童虐待防止法では、立入調査は児童虐待の「おそれ」がある場合に行うものとされているし(同法9条1項)、刑事訴訟法では、捜査(捜査機関による調査の性質を有する。)は犯罪があると「思料する」場合に行うものとされている(同法189条2項)。
不当寄附勧誘防止法においても勧告の要件と報告徴収の要件を同一とするのは不合理であり、「1(1)に挙げた要件が全て満たされているおそれがある場合に行う。」とすべきである。
 

3 2項(第7条)「(1)報告徴収」について

   処分基準案では、法7条1項(報告徴収)に関し、「禁止行為が不特定又は多数の個人に対して繰り返し組織的に行われており、社会的に影響が大きく、寄附の勧誘を受ける個人の保護を図る必要性が強い場合などに行うことが考えられる。」とされている。
しかし、不特定又は多数の個人に対して繰り返し禁止行為が行われている場合には、それだけで禁止行為が組織的に行われていることが推認される。そして、組織的に行われているかは外部から必ずしも明らかではないことから、「組織的に行われ」ていることが報告徴収の行使に必要であるとすれば、現実的に権限行使が極めて困難になる。
処分基準案2項(2)にあるとおり、報告徴収は禁止行為の悪質性、組織性、継続性等を明らかにするために行うものであることからすれば、禁止行為が組織的に行われていることが明らかにならないかぎり報告徴収の行使ができないと解すべきではない。
   したがって、処分基準案の上記表現から「組織的に」の文言は削除されるべきである。

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