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資料から読み解く、自治体における適正人口とは?

先日、流山市の近藤市議とAIAの木下斉さんとのXでのやり取りがあり、その中で私がすぐに思い出せなかった資料について今回は考えてみようと思います。

◯資料から読み解く


その資料というのが、国土交通省が作成した「都市圏参考資料」と「地域生活圏に係るデータ等」です。その中で「市町村人口規模別の施設の立地確率」というものがあります。

国交省のHPより

画像が小さいのでぜひ国交省のHPからデータをご覧いただければと思います。

https://www.mlit.go.jp/policy/shingikai/content/001389684.pdf

この資料は人口によって町にどのような施設ができる確率を調査されたもので、立地確率として10~20万人規模の自治体が良いのではと示されています(赤点線囲い)。
また、同じ資料の中に、住民一人当たりの行政コストを示したものがあります。

地域生活圏に係るデータ等 より

1つの事業に対して対象となる人数が多ければ多いほど効率がいいです。それは民間でも同じですよね。それが規模の小さな自治体では同じ事業で同じくらい予算がかかるのに、対象人数が少ないことで非常に高コスト体質になってしまいます。しかし、福祉事業などなくすことができないものがあり、過疎自治体などの予算が圧迫され、予算が硬直化していると言われるゆえんとなっています。
逆に多くなればなるほど良いかと言われればそういうわけでもなく、やはり適正規模があることが示されています。もっとも効率がいいというのが30~50万人規模ではありますが、他の要素も加味してくると10~30万人規模が良いとも読み取れます。

私の住む能勢町は、人口が小さいだけでなく町域が広いことから、なんなか業務効率化に難しいところかと思います。しかし、地方交付税があるとはいえ、効率化を免除されるわけではありません。デジタル化できるところはデジタル化して、人をあてなければならない事業に人員を集中するなどの取り組みが必要です。もちろんそれには住民の皆様にもご理解とご協力をしていただくことが必要不可欠です。

◯大阪の北摂地域の状況と照らし合わせる

それでは上記の資料と大阪の北摂地域(7市3町)を照らし合わせてみたいと思います。
まずは各自治体の人口規模を見てみましょう。

各自治体HPから抽出

先ほどの国交省の資料と照らし合わせて、10~30万人を青枠、30~50万人をピンク枠で囲っています。
こうやって実際の数値を見てみますと、北摂地域は割と人口規模としては適正な自治体が多く見て取れます。この他にも面積とか、人口密度を調べていくことで、自分がどの地域で暮らしたいとか、どの地域で商売をしようか、などを考える重要な要素を見いだせるのではないでしょうか。

ちなみに能勢町は数値では9070人ではありますが、実態は9000を割り込んでいると思われます。また、この減少傾向は変わらないので、特に施策を考えなかれば半分以下に落ち込んでも不思議ではありません。

◯人口の奪い合いでは豊かにはならない

人口の増加には2つの要素があります。自然増(減)と社会増(減)です。
自治体基準では
「自然増は出生数>死亡数」で、「自然減は出生数<死亡数」となり、
「社会増は転入超過」であり、「社会減は転出超過」の状態となります。

日本の社会制度は「人口増加」と「生産年齢人口>高齢者」の前提で成り立っています。それが、少子高齢化により前提が崩れていっている状態であり、制度改革が必要とわかっていますが、肝心の政治家は高齢者の投票行動が怖くて改革を先送りにしています。早晩破綻していくことでしょう。

それはさておき、各自治体で自然増を達成することはできるのでしょうか?
国がまとめた「少子化社会対策白書」を私なりに解釈しますと、
・婚姻家庭での出生率に大きな変化はない
・晩婚化、未婚化が進んでいる
・晩婚化、未婚化の原因は所得の停滞

とあります。価値観の変化も影響はあるのですが、やはりデフレ不況のもと所得が上がらないことが常態化したことが出生率の低下の主原因となっています。
所得が上がらなかった原因としては、以下の2点を指摘したいと思います。
就職氷河期を当時の現役世代がつくり、自分たちの身分は保証しながら、新社会人の門戸を閉ざしたこと
・増加する社会保険料(主に高齢者医療、介護)を若年者層に押し付けたこと

一方の社会増(減)についてですが、これは各自治体の財政力よるに差が出てきます。先程の資料と人口規模から読み取れますように、行政コストが抑えられる自治体では、たとえば「子供子育てへの予算」は手厚くする事ができるでしょう(自治体によってはインフラ予算を削って大変なことになりつつあるところもありますが)。

一方少子高齢化が極まった地域では、福祉に多額の予算が割かれ、子供子育てへの予算を回すことができないというところもあります。
そうなってくると、子育て世代はより充実した自治体へ転出するのはあたりまえの行動となります。

出生率が伸びず総人口が減っている中、人口が増えている自治体は他の自治体からの転入が多いのです。それは結局人口の奪い合いであり、そのために多額の予算を投下するのは果たして適切なのでしょうか?
自分たちの自治体の立地や面積から、適正な人口規模を算出し、分を超えないところでの豊かなまちづくりが求められていると私は考えています。

◯まとめ

いかがでしたでしょうか?

過去には、地方で教育予算をかけても東京に持っていかれる、と言われたことがありますが、若者たちの興味や行動をとめることはできません。地方でできることは、若者たちが戻ってきたいなと思える魅力的なまちづくりを地道に取り組むことではないでしょうか。

資料に対しての文章としては少し遠慮したところはありますので、今後noteやVoicyでも繰り返し触れていきたいと思いますので、引き続きよろしくお願いいたします。


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