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交錯する“赤と黒”――『仮面ライダー龍騎』に見るバトルロワイヤル作品の形式。

こんにちは、渡柏きなこです。

今回は創作用の覚え書きで、『仮面ライダー龍騎』の作品構造を解き明かし、自分なりに“近い【型】のお話”を再生産するためのパターンを抜き出していければと思います。

創作における【型】の重要性や「それはパクリになるのでは?」という問題に関しては『SAVE THE CAT の法則』でお馴染み、ブレイク・スナイダー氏の著作『10のストーリー・タイプから学ぶ脚本術』をぜひお読みください! 多くの創作者様の手助けになると思います。

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さて先日、ツイッターで仲良くさせて頂いている方が『仮面ライダー龍騎』が好きだと仰っていたので、改めて同作をAmazon Prime Videoにて拝見しました。

平成ライダーの初期の作品ですから映像的な古さはありましたが、きちんと胸が熱くなる、わくわくできる作品でした。

それで途中、「この作品って結構似た構造の作品あるよなー」という思いがして、よく考えてみることにしました。あわよくば自分も、こんな作品を書いてみたい、と思ったのです。

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“似ている作品”の分析を始める前に、『仮面ライダー龍騎』についてざっくり説明しておきます。(ウィキペディアのページはこちら。Pixiv大百科はこちら

『仮面ライダー龍騎』は2002年から放送された、平成ライダー三番目の作品で、仮面ライダー版バトルロイヤルとでもいうべき作品です。ジャーナリストを目指す主人公・城戸真司は、ひょんなことから鏡の中の世界・ミラーワールドに存在しているモンスターが人間を襲っていることを知り、仮面ライダーに変身するために必要な『デッキ』を手に入れたことで、モンスターに襲われる人間を救うため、仮面ライダーとして戦うことを決めます。しかし、その背後では仮面ライダー同士による目的不明のバトルロイヤルが繰り広げられていたのでした……。

カードでモンスターと契約して仮面ライダーになる。ライダー同士のバトルが繰り広げられ、悪のライダーが存在する。その他、ライダーのデザインが西洋の騎士風の外観になっている点や、主人公が最終話前に死亡するなど、斬新なアイデアが多数盛り込まれた作品です。

平成ライダーの長期シリーズ化を決定付け、特撮全般においても龍騎以前・龍騎以後に別れるとすら言われるほど影響を与えた作品とも言われています。

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中でも、主人公・城戸の行動理由が『人助け』であるところや、当初はミラーワールドでの出来事について何も知らず、仮面ライダー同士の戦いについても乗り気でないところなど、大変共感しやすい作りになっていて、自然と彼に感情移入しながら見ることができる作品です。

大人になってから見ると子どもの頃はわからなかった発見や、思いもよらない心の動かされ方をすることがあり、完成度の高さに驚かされます。

さて、ではこの作品をあえてざっくり、一言で表すとすると【乗り気でないバトルロイヤルに参加させられた博愛主義者が、バトルロイヤルをルールごとぶっ壊す話】とでも言えるのではないかと思います。こうして一言にまとめてみた際、直感的に「似ているな」と思った作品は甲斐谷忍さんの『LIAR GAME』(ライアーゲーム)でした。

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『LIAR GAME』は2005年からヤングジャンプにて連載が始まった漫画作品です。2007年にはドラマ化され、その後は映画にもなっています。バカ正直でお人好しの女子大生・神崎直が、天才詐欺師・秋山深一と協力し、大金をかけた騙し合いであるライアーゲームを勝ち抜いていくというお話です。

この作品の神崎直というキャラクターは騙しあい欺きあいが常套手段であるライアーゲームに疑問を呈し、『みんなが正直であること』というゲームの趣旨と真逆の考えこそがライアーゲームの必勝法であるとして、それを実践します。

その博愛主義的な精神や、周囲から『バカ』であるとされながらも主人公が段々認められていく過程など、龍騎の城戸とライアーゲームの神崎は似ているところがあると言えるでしょう。また、横に頼れる “悪のバディ” がいるところなども似ているポイントと言えます。

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『仮面ライダー龍騎』における “悪のバディ” はもちろん、仮面ライダーナイトですね。 “悪のバディ” と便宜的に書きましたが、彼らは一見悪く見えるだけで、実際には主人公を手助けしてくれたり、目にかけてくれる場合が多いです。

主人公が参加することになるバトルロイヤル(龍騎のミラーワールドでのバトルや、ライアーゲームのライアーゲーム)にある程度精通していて、当座の戦い方を教えてくれる役割も持っています。

「話せばわかりあえる」「戦う必要なんてない」そんな甘っちょろいことを言い始める主人公に対して、「そんなに甘くない」「戦わなければ酷い目にあう」と “悪のバディ” は忠告します。しかし主人公はそれに聞く耳を持ちません。あくまで自分の筋を通そうとします。”悪のバディ” の協力で、何とかして戦いに勝つことができたその直後ですら、倒した相手を気遣い、優しく接します。

そのうちにふたりの間には信頼関係ができあがっていき、 ”悪のバディ” は、目の前のおバカなお人好しの主張にも一理あると思い始める。そして最終的にふたりは和解し、強い絆で結ばれることになる、と。美しいストーリーラインですね。

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お話の共通点は①バカとすら言われるほどお人好しな主人公、②平凡な世界の裏で繰り広げられている残酷な争い、③序盤の主人公を手助けし、段々と主人公に惹かれていくことになる “悪のバディ” の存在、以上の三点が大きいかと思います。

そう考えると他にも沢山、共通の構造を持つ作品が見つかります。『魔法少女まどか☆マギカ』、『Fate/stay night』、『金色のガッシュ!!』、変則的なものでは『灼眼のシャナ』も当てはまるでしょうか? そしてお人好しな主人公は最後、悪のバディと協力し、残酷な争いのシステムそのものを破壊してフィナーレを迎えます。まどかは円環の理となり、衛宮士郎はセイバーに聖杯を破壊させ、神崎直と秋山深一はライアーゲームを止め、仮面ライダー龍騎とナイトはミラーワールドの戦いを終焉に導く。

すると、これら①~③の特徴が守れていれば、この手の作品は再生産できる可能性があります。順番としてはどこからでも考えられそうですね。世界の裏で行われている残酷な争い。何らかの争いに参加していて、経験値のある "悪のバディ" 。 ”悪のバディ” がつい手を貸してしまいたくなるような、バカがつくほどお人好しな性格の主人公。

(先述した『10のストーリー・タイプから学ぶ脚本術』に即して考えるなら、これは8番目、【おバカさんの勝利】の型に当てはまるかと思います。 ”悪のバディ” はこの本の内容で言うところの ”インサイダー” に当たるかと思います。お手元にある方は是非確認してみてください)

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さて、ここまで話してきて恐縮なのですが、実は私この【型】の作品を未だ書いたことはありません。ある意味、これは机上の空論です。しかしやってみたい形式ですし、こういう舞台で活躍させてみたい主人公のアイデアも…なくはないです笑。がんばって試してみます笑。

それよりも、最後までお読みいただいた創作家志望の皆さん、本記事はご参考になりましたでしょうか? 裏世界で繰り広げられる争いのアイデアの活かし方がわからなかったり、お人好しの主人公が描きたいけどどうしていいかわからなかったり、そんな方々にこの記事がなんらかのヒントを提供できていたら幸いです。

また、今回はこういった作品の根幹部分の設定の話をしましたが、途中で出てくる参加者の扱いや、この【型】の作品の主人公が直面する問題のパターンなども、筆が乗りましたら今後書いていければと思います。最後までお読みいただきありがとうございました!


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