ねこ〜ルーシィ〜

いろんなことがわからなくなっていた私は、猫は人間ですか、と真顔でたずねた。方丈様は目を丸くして、おかしなことを言いますねと笑ってから、猫は猫です。と言ってくれた。

「そうですか、そうですよね。」と私は言い、

「わりにかしこい猫だとは思いますがね」と方丈様は言った。


ルーシィは、じっと私の目を見て、全てを見透かすようなまなざしでじっと、しばらく見て、ぷいっとどこかへ行った。

白地に、黒い大きなぶち模様が一つか二つあった。

名前の由来はアメリカの映画のキャラクターからで、大きいからルーシィと名付けたとアメリカ人のおじいちゃんお坊さんは教えてくれた

お寺に来て間もない頃、まだいくばか所在無げに大広間の畳に一人居た私の横を、猫が通り過ぎようとして止まり、こちらを見た。また新しいやつが来たのか、と思った程度だったろうに、私はこのまなざしは、もしかしたら人間なのではないかとマジに思ったのだった。

まだあまり猫と接点のある人生ではなかったから。

この世界のことが全くわからなかったから、猫が、人間を内包していたり、前世に人間だった人がその記憶をもったまま猫に生まれ変わってるのかもしれないだとか、別の魂が時々猫に乗り移ったりしているのではないかとか、そういうことは、実はまかり通っていて、現代人だけがそれを知らないのではないかとか、

いろんなことが、とにかくわからなかったら、だから、方丈様に聞いたのだった。

なぜならたしか、方丈様が

「なんでもきいてください」

と力強くおっしゃったからだった。

それで、猫は人間ですか、ときいたら、拍子抜けされていたが、ちゃんと答えてくださった。

猫は猫です。

その通りだよなと今は思うけれど、いつかまた、わからなくなるかもしれないな、とも思うのだ。




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