かの

お寺での日々をかいています。 数年前に一年間お寺に居たときのことを、思い出してかいてい…

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お寺での日々をかいています。 数年前に一年間お寺に居たときのことを、思い出してかいています。

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※舞いあがった

こちらの投稿は2023年7月ころから半年ほどかけてあげていたもので アプリを使ってコンビニでコピーし、小冊子にして身近な人にも読んでもらったりした 父方の叔母、母方の叔母、同じ団地に住む野菜をくださるご年配の御夫婦… お寺のことを書きたいという気持ちも落ち着いて、なんだか過去が重たく感じてか、一旦投稿を削除してしまったのだけれど 先日、ご年配の御夫婦のおじいさんが、「随筆の続きは書かれていないのですか」とたずねて下さった… 随筆… ず、ずいひつだなんて… 続きを

    • よそもの

      山門前の岩壁の草引きをしていると お寺の前に住むおばあさんが、こちらを見ていることに気が付いた お寺ではおしゃべりはしないし、挨拶すらしないこともある 私はまだ分別が付かなくて、迷ったけれど、 おばあさんは檀家さんでもあるのだから、ここは挨拶しなければと 「こんにちは」 と言ってニコッと笑った 真顔で私を見ていたおばあさんは 「また気持ち悪いのが来たな」 と言って去っていった 唖然とした ガーンと頭の中で鳴っていたと思う 困惑とかなしみが渦巻いた 自

      • マムシ

        ある日、山門前にある岩壁の草引きを頼まれた 岩と岩の間の隙間から草が生い茂っている そこに手を突っ込んで草を引いていると、方丈様が見に来られた 「マムシがでるので気を付けてくださいね」 もっと早く言って下さいよ 素手で挑んでいた

        • お寺と恋愛

          お寺ではもちろん恋愛は禁止だ… けれど過去には修行者同士で結婚した男女がいたらしい 老師様は気を利かせて御祝いをなさったそうなのだが、 その二人の結末は良いものではなかったそうで… そんな話を方丈様から聞いた 女性の方は自死なさったとかしなかったとか… とおっしゃるではないか… 身震いした そんな気はないし、 それどころではないくらい、当時はくるしかったので これ以上のくるしみは味わいたくなかった しかし 恋というのはしようとしてするものでも まして

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        ※舞いあがった

          噂話

          モデルの黒人の女の子がやってきて数日経った頃 食事の準備をしに台所に集まったお坊さんや修行者さんが噂話をしていた 話しているのは主にOさんで、 「あの子モデルだよね〜!どっかで見たことあると思ったんだよ〜!ユニクロのモデルじゃない?!」 などと、はしゃいでいる 悩みに苛まれてやって来た彼女がこれを聞いてしまったら、良い気はしないのでは それに、おしゃべりすら良くないとされているお寺で、噂話をするなんて と思った私は 「そんなこと言わなくていいんですよ!」 と

          モデルとちゃんちゃんこ

          あるとき黒人の女の子がやって来た スラリとした全身黒い服ながら垢抜けた出で立ち 聞くと、ご職業はモデルとのこと どうやらお仕事に行きづまって悩みの最中であるらしい 一度は断った方丈様に無理を言って、接心(七日間坐禅に徹する修行)をしにやって来たのだとか 寒い時期だったので、わたしがお寺から借りていた ちゃんちゃんこ風作務衣を彼女に渡したのだが あまりのダサさからだろう 彼女は着るのをはじめ躊躇っていた しかし寒さに背に腹は代えられないと着用した彼女 モスグリ

          モデルとちゃんちゃんこ

          お風呂

          お寺での修行中は、お風呂は五日に一回とされていた 時間は三十分と決まっていて、入る前と後にお経を唱えなければならなかった ゆっくり浸かっている暇はない けれど寒い日が続いて冷えた身体を、出来るだけあたためたい… わたしはテキパキと頭と身体を洗い、できるだけ湯船に浸かる時間をつくろうとイメージトレーニングをした そしていざ、お風呂に入り湯船の蓋を開けると、どうしたことか お湯の汚いこと! 見たことのない油分が浮いている… こんなことは初めてだったので 絶句した

          [ここから新投稿] 発酵

          禅寺では食事も修行の内とされていて、三つ重なったうつわを巾着で包んであるのを広げ、食べ終わったら、たくあんと白湯でうつわをきれいにし、(その白湯は飲み干して)再び巾着で包む それを繰り返していると、巾着からどことなく発酵臭がしてくる 空いた時間にしっかり洗い、巾着もあたらしいものと取り替えるのであるが 細かいことを気にしない方の巾着は茶色く染まっていることも… そして、うつわのようにいかないのが絡子(らくす)だ 絡子は、お袈裟を略式化したもので、食事やお勤めの際は首

          [ここから新投稿] 発酵

          勧誘

          断食道場から夕方お邪魔をしてた頃、帰ろうとしていたところを方丈様に引き止められた 少しお話しでもしていかれませんか、と客間に案内され、まさか、勧誘されるのではないかとおそるおそる入ると、さっそく 「さぁ、お菓子をあげましょうね。向こうでは食べられないのでしょう」 と言って客間のお菓子を差し出された 私はやっぱりお菓子で勧誘されるのだ〜!とおびえて、逃げるようにその日は帰ったのを覚えている。 もしかすると、方丈様はわかっていて、おもしろがっておられたような気もする。

          ずっとここに

          Oさんとお茶飲み場で雑談していたら、これからどうするの、という話になって、 「どうしましょうかね〜」と実際どうしようもない私は答えた そうしたら 「ずっとここに居たらいいじゃん」 と、軽〜く言うではないか 私は吹くように笑ってしまった ストレートで、細かいことは、何も考えていないっぷりに、 Oさんだな〜と思って そして、うれしかった

          ずっとここに

          トムについて

          トムは白人男性で、年は60代前後だろうか。細身なのだが、下腹がとても出ていて、少し心配だった。 初めて会ったのは、私が用事で地元へ帰って、数日ぶりにお寺へ戻ってきた時だった。 参道を一人もくもくと掃くトムが見えた。誰だろう?と思いながら挨拶すると、八重歯をのぞかせてニッと笑い返してくれた。 その顔に、なぜか私はギョッとして、この人は大丈夫な人か、そうでない人か、と瞬時に警戒した。 トムの顔がはじめはこわく感じた。 けれども、一緒に過ごすうちに、トムが、おだやかで、や

          トムについて

          ねこのてぬぐい

          作務の後のお茶飲み場の時間 古くからお寺で修行されている女性のRさんが、長い付き合いであるアメリカ人おじいさんお坊さんの頭に巻かれている布を見て 「あれ、◯◯さんねこのてぬぐいだ〜かわいー」と言ったので 私はすかさず 「もう一種類あるんですよ!」 と口をはさんだ 「えっそうなの〜」と話は続き 「そうなんです!この間の一時帰国から帰ってきてから一種類ふえたんですよ!」 と私はこの話題ができることにちょっぴりはしゃいでしまい、私だけが入手していたで

          ねこのてぬぐい

          座るための場所

          お寺を訪れるきっかけをくれたのは、その前に滞在していた断食道場だった。 坐禅体験をしに行くというので参加をした。 その時初めて出会った方丈様に、自由に坐禅をしに来てくださいと言っていただいて、断食道場から自転車で時々通うようになった。 ある日、ひとり入った禅堂の、ピンと張ったうつくしい空気に感化され、 ここなら心が解き放たれるのではないかと、さらさらした板の間の上を腕を大きく広げてバレリーナのようにくるくる舞った。 シーンとした空気を背にすぐに帰ったが、 禅堂

          座るための場所

          歯に衣

          方丈様とのやりとりで、こんなことがあった 向かい合ってお話をさせていただく際に、私が何かを称して "歯に衣(ころも)着せぬ物言い" ということばをつかったのだ 方丈様の前できちんと話さなければと、つかったことのない言い回しをした しかし次の日、方丈様は 「昨日おっしゃっていた "歯に衣(ころも)着せぬ物言い"とは "歯に衣(きぬ)着せぬ物言い" のまちがいではないですか?」と そして、昨日の時点で、「ん?と思ったけれど、自信がないのでそ

          やってきた少女と草

          やってきた少女は、数年ぶりに、二十歳そこそこになって、やって来た。 日帰りだったが、何か思うことがあってのことのようだ。 しかし、方丈様は先約があり、彼女の話を聞くことが出来なかった。 仕方なく、庭の雑草を引いておいてくださいと頼まれた彼女は、説明不足だったために、抜いてはならぬ大事な草を、間違ってありったけ抜いて帰っていってしまった。 大切に生やしていた草が忽然となくなり、つるんとした岩がむき出しになった。あたりにはまだ土が散らばっていた。 方丈様は怒る

          やってきた少女と草

          素材

          いつもお経の時間には、目の前に、お坊さんの裸足の脚首があった 修行者は斜め下に目線をやるように言われていたから そうして待っていると、視界にふにゃふにゃコテコテした足取りが入ってくる。アメリカ人おじいさんお坊さんだ まっすぐくびれのない白い脚首 フーフースースーいってる大きめな息づかい ババッと着替えてた来たのだろうな、というような着こなしが 御袈裟の裾からも感じられる 素材はどうも化繊にみえる。透け方、なびき方、すこしかたい 方丈様の御袈裟の